とうとう、日本銀行券じゃない銀行券を持つ時代が来た?

我々が日本国内で使用している円紙幣は、
日本銀行券というものであるということはご存じの方が多いだろう。
もし、初耳ということであれば、
紙幣の表面にある金額の上を見てみよう。
「日本銀行券」と印字されている。

この名称に疑問を持たれたことはないだろうか。
なぜ、「銀行券」という名前なのか、
「日本銀行券」があるなら「三井住友銀行券」や「三菱東京UFJ銀行券」、
「みずほ銀行券」などがなぜないのか。

「日本銀行券」という名前なのは、日本銀行法に基づいて、
日本銀行が発券した紙幣が日本の法定通貨とすることが定められているからである。

つまり、日本の通貨が「日本銀行券」という名前なのではなく、
日本銀行券が日本の通貨に指定されているということなのだ。

日本銀行の発券した紙幣のみが日本の法定通貨として扱われているのは、
日本銀行が「政府の銀行」として金融を統括する「中央銀行」であるからである。

しかし、実はかつては一般の銀行が紙幣を発行し、
それが通貨として認められていた時代もあったのである。
欧州、アメリカ合衆国、日本でいわゆる「中央銀行」が設立されるまでは、
それが普通であった。

例えば、日本ではみずほ銀行の前身である第一国立銀行などが
紙幣の発行を認められていたのだ。

そのような「中央銀行」が存在せず、
銀行が各々に紙幣を発行する金融制度を「自由銀行制度」という。

第一国立銀行券

第一国立銀行券

通貨発行を人民の手に!

そもそも、通貨の発行権というものは
中世においては基本的に君主が独占する権限であった。
江戸時代日本でも通貨を発行していたのは徳川幕府のみである。

それが欧州において崩れてきたのが18世紀イギリスあたりからである。
イギリスでは「国王は君臨すれども統治せず」という
立憲君主制が確立された時期だ。

欧州全体でもフランス革命が起こるなど、
国民の人権が重視されるようになり、
君主の勢力が衰えていった時代でもある。

そうした状態の中で、
「経済は自由放任にしておけば勝手に調整機能が働いてうまくいく」という
その時代の経済学で流行した考え方を背景に、
通貨発行を自由に行なう銀行が次々に設立されたのだ。

最初に自由銀行が設立されたのはイギリスのスコットランドである。
1746年までに3つの銀行が設立され、それぞれに銀行券を発行していた。

スコットランドの自由銀行券

スコットランドの自由銀行券

この状況は19世紀まで続き、
盛んに発行された銀行券は商工業者に資金として活用され、
大英帝国の経済発展を支えたのである。

ただ、これらの銀行券には
政府が「この通貨を使用しなければならない」という強制力を働かせていなかったため
、一度人々から見放されれば立ち行かなくなる危険性もあった。

変わり種が19世紀から20世紀初頭にかけてのスウェーデンの銀行制度だ。
この国ではなんと自由銀行と政府による銀行、
つまり中央銀行が併存していたのである。

自由銀行が盛んに通貨を発行して商工業の発展に寄与すると共に、
その銀行のバックアップの役割を中央銀行が果たしていたようだ。
なかなかに安定したシステムであった。

日本では明治維新によって徳川幕府による通貨発行がなくなってのち、
暫くの間自由銀行による通貨発行が行なわれた。
しかし、国策により明治15年に日本銀行が誕生し、
日本銀行券のみが通貨であるとされたのである。

我々のよく知る中央銀行制度の普及

先に日本においての中央銀行創設に触れてしまったが、
世界に先駆けて中央銀行制度を導入したのはやはりイギリスであった。

当時の紙幣は、発行銀行に持っていけば額面と同じ金や銀と交換できるという
システムを採用しており、それが紙幣の信用の根拠であった。

ところがこれを悪用し、ある銀行の紙幣をライバル銀行が大量に蒐集し、
一気に相手銀行に持ち込んで金や銀との交換を要求するという手口が横行した。

銀行は常に全発行紙幣と同量の金や銀を保管しているわけではなかったので、
こうしたやりかたでライバル銀行を破綻させることができたのだ。

また、自由に銀行に紙幣を発行させておくと
インフレーション(供給過多による通貨の価値下落)の原因になるという
学説が力を増してきた。

こうしたことを背景に、
1844年、イングランド銀行を中央銀行にすることを決定し、
唯一の通貨発行機関としたである。
中央銀行によって金融をコントロールする時代の始まりであった。

イングランド銀行スケッチ

イングランド銀行スケッチ

アメリカ合衆国では遅ればせながら
1913年に中央銀行である連邦準備制度が設立された。
よくニュースでも耳にするFRBである。

アメリカ合衆国は自由の国であり、
こうした中央による管理には反対の声が多く、
中央銀行制度導入が遅れた理由でもあった。

そこで、大統領周辺や大企業は
上院議員が大半休暇中のクリスマスシーズンであるという隙をついて
FRBを成立させてしまった。まさに荒技である。

こうして各国が中央銀行を持つようになり、
金融をコントロールしていくようになったのである。
しかし、現代の金融はあまりにも複雑化しており、
中央銀行制度でやっていけるのかという問題提起も実はされている。

その中には自由銀行制度復活の声もある。
もしかしたら、近い将来、
我々は日本銀行券以外の銀行券を持って買い物をしているかもしれない。

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