インディアンとバッファローの悲しい物語

インディアンのスー族の伝説である。

白いバッファローの女

 「大昔のこと、ある夏にスー族の部族が集まってキャンプを張ったが
収穫が全くなく、人々は飢えていた。
 ある日、獲物を探しに二人の男が派遣される。
 二人が高い丘の上に登って辺りを見回していると、
見たことも無いような美しい女が浮かびながらこちらに近づいてくるのを見た。

 女は<白いバッファローの女>であった。
 彼女は二人のうち無礼にも彼女に触れようとしたひとりを稲妻で撃ち殺し、
もうひとりにキャンプに自分を迎え入れる準備をするように言った。

 「いいものをもってきました。あなたの部族にとって聖なるものです。
 バッファローの国からあなたたちの部族へと運んできた伝言です。」

使いのインディアンは急いでキャンプに戻り、
聖なる人を迎え入れる準備を皆で整えた。
4日後、女が現れたので、首長が敬意を払って彼女を迎え入れた。

<白いバッファローの女>は聖なるパイプを授け、
正しい祈り、正しい言葉、正しい作法を人々に伝授し、
また、正しい祭祀の方法も教えた。

 「このパイプの火皿をみなさい。
 これはバッファローを象徴しているが、同時にインディアンの血と肉をも表している。
 バッファローは宇宙と4つの方角を表している。
 なぜなら、バッファローは、4つの創造の時代を表す、4本足で立っているからだ」

女たちには火の起こし方を教え、料理の方法も授けた。

 「あなたたちは母なる大地の者なのだ。
 あなたたちのしていることは、戦士たちと同様に偉大なことである」

子どもたちにはこれから進むべき未来の話をした。

<白いバッファローの女>はパイプを敬うように言い、
世代がひと巡りしたらまた会いに来ると告げて去っていった。
帰る途中、彼女は立ち止まって4回転がった。

転がるたびに黒、茶、赤、白のバッファローに変化し、
やがて地平線の向こうへ消えた。
聖なる女が消えた次の瞬間、バッファローの大群が出現した。

この日から、バッファローは人々に必要な全て、
すなわち食料としての肉、衣服などのための皮、
道具に使う骨を与えてくれるようになった。」

バッファロー

バッファロー

神話におけるインディアンのスー族のバッファローとの出会いである。
ここからわかるように、北米大陸の先住民インディアンとバッファローは
切っても切れない関係にあった。

バッファローは聖なる存在であると同時に獲物であり、
精神世界と物質世界の両方でインディアンを満たしたのである。
特にスー族は農耕の文化を持たず、衣食住全てをバッファローに依存していたのだ。

インディアンとバッファローの別離

様子が変わったのが、白人による「アメリカ大陸発見」からである。
白人は次第に勢力を増してインディアンの住み処を奪い、
またバッファローの肉と皮を商業目的で乱獲するようになる。

バッファローの頭蓋の山、肥料用

バッファローの頭蓋の山、肥料用

インディアンが白人に抵抗を始めると、
更にバッファローを駆除してインディアンの食料を奪うという方針をとった。
インディアンも飢えには逆らえず、
白人の行政機構のもとで農耕に従事せざるを得なくなる。

こうして、インディアンとバッファローの関係は破壊されたのだ。

カイオワ族の説話はこう語る。

「カイオワ族が持っていたものはすべて、バッファローからつくられた。
バッファローは、カイオワ族の生活そのものだった。
ほとんどの者にとって、バッファローはカイオワの宗教の一部だった。

だから、白人が鉄道を敷こうとしたときとか
農場をつくって家畜を育てようとしたときに、
バッファローはずっとカイオワ族の人々を守った。
線路や菜園も荒らした。

カイオワ族がバッファローを大切に思ったのと同じくらい、
バッファローもこの人々を大切にした。

バッファローは白人たちと戦い、撃退し、追い詰めた。
しかし、白人はバッファローをひたすら殺すだけのハンターを雇った。
ハンターはバッファロー達を虐殺した。

生き残ったバッファローは自分たちの時代が終わったことを悟り、
今後について話し合った。

ある日、カイオワ族の女が早朝目を覚ますと、
川の向こうに精霊の夢のように最後のバッファローの群れが現れた。
彼らがスコット山に向かって進むと、山の面が開いた。

山の内側はみずみずしい緑の世界で、白人が汚す前の姿を見せていた。
この美しい世界の中へバッファローは去り、
再びその姿を見た者はひとりもいない。」

バッファローはインディアンの精神世界からも去ってしまったのである。

コインについて

アメリカ 2012年 インディアン バッファロー 50ドル金貨 プルーフ

アメリカ 2012年 インディアン バッファロー 50ドル金貨 プルーフ

今回ご紹介するコインはアメリカ合衆国が2012年に発行した
50ドル金貨である。

コインの片面はインディアンの横顔である。
右上にはLIBERTYすなわち自由とある。

インディアンという呼称は
近年ネイティブ=アメリカンという呼称に置き換えられることも多いが、
当のインディアン達がそれを認めていない場合もあり、
扱いには注意が必要である。

もう片面はバッファローである。
上にはUNITED・STATES・OF・AMERICA、
すなわちアメリカ合衆国とあり、左下には、(我々は神を信じる)とある。

ちなみにIn God We Trustはアメリカ合衆国の公式なモットーであり、
多くの硬貨にこの言葉が打刻されている。

バッファローは正式にはアメリカバイソンというウシの仲間である。
インディアンの大切な食料であり、
白人入植前には約60,000,000頭が生息していたと推計されている。
しかし、乱獲や駆除によりその数を減らし、一時は1000頭を切ってしまった。

現在ではなんとか保護によって数が増え、
国立公園などで数万頭が暮らしているとされる。

インディアンとバッファローは
「新大陸」時代以前の北アメリカ大陸の主人公だった。

この金貨を眺めながらその事実に敬意を表したい。

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