マイナス金利時代に注目される、「イスラム金融」ってなに?

イスラム、という単語を聞くと
ネガティブな印象を受ける人も多いのではなかろうか。

テロリズムの影響もあるだろうし、
文化的に差異が大きく、理解が遠いこともその背景にあるだろう。

しかしながら、大航海時代以前、
世界の貿易をリードしていたのはイスラム商人である。

イスラム商人の交易圏

イスラム商人の交易圏

中国の明王朝で、かつて鄭和という人物が
国家事業として7度にわたって西へ向けて大航海を行なったが、
鄭和もまたイスラム教徒であった。

イスラム教徒であるために
当時世界に張りめぐらされていたイスラムネットワークが使えるという点が、
鄭和がこの大事業の指揮官に抜擢された
一因であると考えるのは不自然ではない。

マラッカにある鄭和像

マラッカにある鄭和像

このように、世界的な商業活動、
金融活動を行なっていたイスラム教徒であるが、
その活動は実は現在でも健在である。

その在り方は我々が馴染んでいる形態とは少し異なるが、
その違い故に現在注目を浴びつつあるのだ。

もしかしたら、
近いうちに身近なものになるかもしれないイスラム金融。

これからその予習をしてみよう。

イスラム金融の特徴

タイのイスラム銀行

タイのイスラム銀行

イスラム金融はその名の通り、
イスラムの掟にしたがっている金融活動である。

イスラムの掟をシャリーアといい、
聖典クルアーンと開祖ムハンマドの言行録たる
スンナを基にして成立している法だ。

イスラム教の聖典クルアーン

イスラム教の聖典クルアーン

シャリーアは金融活動について以下の4つの規定をしている。

すなわち、
・金銭の使用に関して利子をとることを禁ずる
・イスラム教徒が特定の商品(豚肉・酒類・武具など)を扱うことを禁ずる
・契約中の不確実性を排除する
・投機行為を禁ずる、
である。

また、貨幣を実物資産・商品と見なさないという原則がある。

すなわち、貨幣そのものに価値はなく、
実物をやりとりする商業活動や生産活動に使用されて
初めて価値があるということだ。

この原則の下では、
現代の債権市場での取引や先物取引、信用取引といった、
カネ自体を商品とし、カネを動かすだけで
利益を得るという金融活動は否定されることになる。

この原則はシャリーアにおける
規定の利子を禁ずるという事項にも通じる。

すなわち、カネの貸し借りだけで
利益が発生する貸金業はイスラム金融ではあり得ないのだ。

貨幣そのものを資産として見なさないという原則を反映して、
イスラム国家では言わば貯蓄税ともいうべきものが
課されているところがある。

これは、資産を貯蓄させず、
実質経済に振り向け、有効活用を目指すという方針から
生まれたと言われている。

現在の日本のマイナス金利政策に通じるものがあるのではなかろうか。

さて、では、
イスラム金融においてはどのように利益を得るのであろうか。

それは、実体のある商取引や事業への投資の配当である。

カネ自体を商品として取引するわけではないから
このやり方であればシャリーアに反さないのだ。

イスラムにも銀行があり、
こういったやり方で資金を運用している。

預金者から集めた資金を事業に投資し、
そこで得た配当金を預金者に還元するというわけだ。

これは利子ではないというところに注意しよう。

イスラム銀行は無利子で操業しているのだ。
つまり、いくら高額の預金をしようとも
一定の利子がついて資産が増えるわけではない。

そのかわり、
一定期間一定額を預けた預金者には何らかのサービスを提供する。

それは保険であったり、
ある程度高価な生活必需品や家電であったりと多種多様である。

こうしたやりかたで、預金者は預金するメリットを持つわけである。

超低金利時代である現代日本においては
預貯金を行なっても利子は無いに等しい。

であれば、無利子であっても何かしらの見返りが得られる
イスラム銀行のほうが魅力的ではないだろうか。

ここまでの話から
イスラム銀行が利用できるイスラム教徒が羨ましい、
という人もいるのではないだろうか。

だが、実はイスラム銀行は
イスラム教徒でなくても利用できる。
つまり、日本人も利用可能ということだ。

こうした地に足のついた運営方針に加えて
バックにある中東のオイルマネーもあるイスラム金融が、
全世界に門戸を解放しているということであれば、
注目を集めるのも当然と言えよう。

伝統を維持してきたイスラム金融

ここまで紹介した
イスラム金融の無利子システムに対しては
世界の「正統」な金融から外れているという感想もあるだろう。

しかしながら、利子というものは昔から肯定されてきたわけではない。

日本や中国では
古代から利子という文化が自然に根付いていたが、
現代の金融システムを構築した西洋では違っていたようだ。

無論、利子を介在した商取引は行なわれていたものの、
かのアリストテレスは利子の存在に否定的な文を残している。

また、利子を禁じていたヘブライ人の影響を受け継いだ
キリスト教でも本来利子をとること禁じていた。

しかしながら、
商取引が発達していくにつれて利子が当たり前になってくる。

利子をとることを禁じている旧約聖書

利子をとることを禁じている旧約聖書

そこで、
スコラ派というキリスト教を研究する学問の一派が
利子について否定的な言説を出したり、
教会が利子の徴収を禁じる法を制定したりするなど、
かなり危機感をもって利子という文化を排除しようとしていたようだ。

だが、そうした努力にも関わらず、結果は現代のとおりである。

そう考えてみると、イスラム金融とは、
本来の自分たちが理想とするべき金融や商取引の在り方を
現代まで貫いているにすぎないと言えよう。

西洋が変質してしまったのとは対称的である。

金融のひとつの原点とも言うべき
イスラム金融に今後とも注目していくことが、
グローバル社会に生きる我々にとっては必要なことであろう。

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