人間の際限ない欲望を現実とするためにうまれた組織とは?

株式会社とは、ASCII.jpデジタル用語辞典によれば、
「株式を発行して投資家から資金を調達し、
その代金で事業活動を行なう会社」である。

また、
「株式会社制度の下では
事業を遂行する人(経営者)と株主は異なり、
経営者と出資者が別人でも構わない」と定義される。

出資者の責任が出資分だけにとどまる有限責任である
ということも特徴だろう。

もうひとつ定義を付け加えるとするならば、
半永続的な会社の存続であろう。

ひとつのプロジェクトが終わり次第解散では、
現在身近にある株式会社とは異なる存在となる。

上記のような定義を満たした「株式会社」は
いつ頃どこで誕生したのだろうか。

その答えは、ところは欧州、ときは中世、
大航海時代華やかなりし頃だ。

早速その当時に飛んでみるとしよう。

新時代の商業組織

欧州中世後期は経済活動が活発になり、
欧州内外を問わず交易が盛んになった時代だ。

交易圏は拡大し、扱うモノの量が増大したために、
個人で扱うにはヒトもカネも足りなくなり、
商業組織の再構築が必要になってきた。

新たに普及した商業組織として
まず挙げられるのが「コンメンダ」、
或いは「コムメンダ」と呼ばれる企業だ。

参加者は何らかの資本をもって企業に加わる。

しかし、全員が実際の運搬や取引を行なうのではなく、
参加者の一部が行なう。

実際の業務を行なう参加者は
その労働分だけ出資割合を少なくてよいとされ、
利益は出資者全員に公平に分配された。

コンメンダ方式には出資者以外の商人に
業務を完全委託するやりかたもあった。

この場合、利益の一部を報酬として請負商人に渡し、
残りを出資者で分配した。

この企業の特徴は当座的ということである。

つまり、ひとつの商取引が終了したら
そこで解散というわけだ。

また、個人商人の集合であったため、
資本の量にどうしても限度があった。

 

次に挙げるべきは「ソキエタス」と呼ばれる企業だろう。

現代でいう合名会社が近い。

家族経営を基本とし、
全ての参加者が資本を提供すると同時に
実際の商取引も行なうというものだ。

この方式だと複数名のヒトを駆使し、
多方面で同時に商取引を行なうことが可能となる。

それによって多くの利益を挙げることができた。

また、最大の特徴は半永続的な組織であるということだ。

フィレンツェのメディチ家、
アウクスブルクのフッガー家などが
ソキエタスで成功した代表格とされる。

メディチ家一族肖像画

メディチ家一族肖像画

しかし、もっと大きな取引をしたい。

なれば、ということで
コンメンダとソキエタスを合体させてしまう
という手段が登場する。

コンメンダにおける出資者が
ソキエタスということになる。

これによって
莫大な資本を集めることが可能になったが、
あまりにも莫大になりすぎて、
出資者が失敗した際の全ての負債を引き受ける必要のある、
いわゆる無限責任を負うのがきつくなってきた。

そこで、方式はコンメンダ+ソキエタスで、
出資者は自分の出資分だけ責任を負いましょう、
という有限責任を基本とする
ジョイント・ストック・カンパニーなるものが登場した。

ただ、これもコンメンダと同じく当座的であり、
半永続的ではなかった。

1600年に成立したイギリス東インド会社の当初の形態はこれである。

世界初の株式会社、誕生

さて、いよいよ株式会社に近づいてきた。

ここで、当時の欧州における新興国、
オランダにご登場願おう。

16世紀後半はご存じの通り、
スペインとポルトガルが欧州において
海外進出という面で先行していた。

特に、ポルトガルが進出していた
アジアの産品は大変魅力的であった。

香辛料、香料、陶磁器、漆器、絹織物等々、
東南アジアや中国、インド、日本からもたらされる産品は
莫大な利益をもたらす重要な商品だったのだ。

これらの商取引への参入は国家的希望でもあった。

1595年に出航したコルネリス・ド・ハウトマン率いる
オランダ艦隊は翌年、
東南アジアに到達することに成功した。

オランダとしては初の東方航路開拓である。

この結果、東方貿易への参入を目的に
オランダ国内にいくつもの企業が乱立する。

結果としてそれは過剰な競争をもたらしたため、
これらの企業を統合する必要性が生まれた。

ここに1602年、オランダ国家主導のもと、
オランダ東インド会社(通称:V.O.C)が誕生した。

資本金650万グルテン。

イギリス東インド会社の10倍以上、
現代価格にして二千億円という巨大企業であった。

アムステルダムにある旧オランダ東インド会社商館

アムステルダムにある旧オランダ東インド会社商館

このオランダ東インド会社の特徴をいくつか挙げてみよう。

・経営者、出資者がともに有限責任制である。

・出資者は間接ではなく、直接会社に出資することになり、
経営団が会社組織の中に吸収された。

・株式の譲渡が自由になった。

・半永続的な企業であり、資本の再投資が可能になった。

現代日本で我々がみる株式会社の特徴を
ほぼ満たしているといえるのではなかろうか。

勿論まだ未完成な部分はあるが、
世界初の株式会社と定義して充分な企業であると言えよう。

この企業においては取締役は必ずしも大株主ではなく、
身分のようなものと考えられていたようだ。

この様な点でも、我々に馴染み深い組織といえる。

このオランダ東インド会社にならい、
各国で次々と「株式会社」が誕生していく。

V.O.Cは現代の会社社会を形成する嚆矢となったのである。

オランダ東インド会社の船

オランダ東インド会社の船

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