▲イッソスの戦いにおけるアレキサンダーを描いたモザイク画（紀元前100年頃、ナポリ国立考古学博物館所蔵） 

古代において、ヨーロッパのみならずアジアにまで影響を与えた英雄、それがアレキサンダー大王の名で知られるアレキサンダー3世（またの名をアレクサンドロス）です。マケドニアの王として生まれペルシアを征服し、アジアにまで到達したアレキサンダー3世。30代の若さで亡くなった彼のカリスマ性や天才ぶりは、後世にも大きな影響を与えました。

本日ご紹介するコインは、アレキサンダーのスターテル金貨と呼ばれるものです。世界史に大きな足跡を残したアレキサンダー大王の時代を体感できるこの金貨には、どんな魅力があるのでしょうか。詳しく解説いたします。

 

アレキサンダー スターテル金貨

基本データ

コイン名	マケドニア王国　アレキサンダー3世（大王）　スターテル金貨
通称	アレキサンダー大王　スターテル金貨
発行年	紀元前336年〜323年
国	マケドニア王国
額面	スターテル（1スターテル金貨＝20ドラクマ）
種類	金貨
素材	金
発行枚数	-
品位	-
直径	-
重さ	8.58 g（古代コインの製造クオリティ上、多少前後することがあります）
統治者	アレキサンダー3世（大王）
デザイナー	-
KM	-
表面のデザイン	ヘビが巻き付いたデザインのコリント式兜を被った右向きのアテネ
表面の刻印	-
裏面のデザイン	右手にリース、左手にスタイラス（文字を刻むための棒）を持っている左向きに立った女神ニケ
裏面の刻印	ΑΛΕΞΑΝΔΡΟΥ（ギリシア語でアレキサンダー）
エッジのタイプ	-
エッジの刻印	-

 

アレキサンダー スターテル金貨とは？

アレキサンダーのスターテル金貨とは、どのような特徴を持っているのでしょうか。紀元前世界のヨーロッパで発行された金貨、その特徴と魅力を解説いたします。

表に彫られた知恵と戦いの女神

アレキサンダーのスターテル金貨に彫られているのは、2人の女神です。

表面には、蛇が巻き付いたデザインのコリント式兜をかぶった女神アテネの姿が見えます。アテネはギリシア神話において軍事、戦争、知恵、技芸をつかさどる女神とされていて、古代ギリシアでは大変重要な位置づけにありました。たいていは兜をかぶって描かれる女神アテネは、中性的な魅力があります。美男であったというアレキサンダー3世の面影を彷彿とさせる女神の姿です。

裏に彫られた勝利の女神

裏面には、翼を持つ女神ニケの姿があります。ニケは「勝利」を表象する女神で、アテネに臣従していたとか、アテネの属性のひとつであったともいわれています。スポーツメーカーの「ナイキ（NIKE）」は「ニケ」の英語読みであり、シンボルマークも彼女の翼をモチーフにしています。勝利を表す月桂冠、豊穣を表す蛇も見えます。

アレキサンダーのコインとされる理由は？

両面にギリシア神話の女神が描かれているスターテル金貨、なぜアレキサンダー大王のコインといわれているのでしょうか。

それはニケの翼の部分に彫られたギリシア語に由来します。

AΛEΞANΔPOY

これは「アレキサンダー王」という意味です。

戦争と勝利の女神の加護をに感謝する、若き王の姿が目に見えるようです。

当時から珍重されたアレキサンダーのコイン

このコイン、実はアレキサンダーの死後に発行されています。アレキサンダー自身が遠征で移動することが多かったため、スターテルコインがどこで発行されたのかについては諸説があるようです。

一説によると、アレキサンダーに関連するコインのなかでも同スターテル金貨はそのデザインや価値において、当時から圧倒的な人気と信頼を勝ち得ていたといわれています。

その輝きは、数世紀を経ても変わらず、私たちを魅了してくれます。

 

アレキサンダー スターテル金貨が作られた当時の時代背景

▲ヘリオス神として作られたアレキサンダーの胸像（紀元前2世紀ごろの作品、ローマ・カピトリーノ美術館所蔵）

 

映画や小説にもなっているアレキサンダー大王。彼はどのような時代に生きた王だったのでしょうか。スターテル金貨が作られた当時の時代背景に迫ります。

 アレキサンダーが生まれたマケドニアとは

アレキサンダー3世は、紀元前356年にマケドニアの王子として生まれました。

マケドニアと聞いてもピンとこないかもしれません。ギリシア北方に位置する古代の王国です。現在も北マケドニア共和国として残っています。

当時はギリシア人の国家同士が同盟を組んでおり、マケドニア王国もそのひとつでした。

アレキサンダーは有能な王であったフィリッポス2世と、情熱的な女性として知られた王妃オリンピアスとのあいだに生まれます。幼少期から、武術だけではなくアリストテレスなどの哲学者の薫陶を受け、優れた若者へと育ちました。

フィリッポス2世とアレキサンダー3世という優れた王が続いたことにより、マケドニアもギリシアの強国としてその名を馳せるようになるのです。

 父の死から若き王へ、そしてペルシア遠征

父の急死により、アレキサンダーは20歳の若さでマケドニアの王となります。

国内外の敵を巧みに抑え込んだアレキサンダーは、22歳の年、ギリシア民族にとっては200年ものあいだ敵であったペルシア征伐に出発します。

天才的な軍人であったアレキサンダーは初戦を制覇した後、小アジアのイッソスでペルシア王と対決、4万の兵で10万のペルシア軍を撃破したと伝えられています。

のちに行われたガウガメーラの戦いでは、一説には25万のペルシア軍を4万の兵で打ち破り、アレキサンダーの名を不動のものにします。

アレキサンダーはその後、インダス川にいたる大遠征を続けましたが、33歳の若さでバビロニアで死去。

死因は熱病と伝えられています。

伝説となったアレキサンダー大王

アレキサンダーは人間離れしたその偉業から、のちに「大王（Magnus）」と称えられるようになります。

東西文化を融合させ、ヘレニズム文化の基礎を作ったことで、ヨーロッパにおける文化や思想に大きな影響を与えました。

また、古代ローマをはじめ中世、近世にいたるまでアレキサンダー大王をテーマにした著作は多く、キリスト教世界や騎士道精神のなかでも伝説となって残ります。

33歳という短い人生を終えたあとも、アレキサンダー大王は抜群の存在感を放ち続けたのです。

 

アレキサンダースターテル金貨の価格推移

人気のアレキサンダー大王のスターテル金貨の価格推移をご紹介します。状態によって価格帯も様々なので、ご予算にあったものをお選びいただけるコインです。「生前発行（Lifetime issue）」と「死後発行（Posthumous issue）」などの分類もあります。

古代コインの製造上、重量が一定ではなく、裏表の位置もバラバラです。デザインも微妙に違うそのバリエーションも、悠久の時を感じる味わいとして、是非手のひらの上で感じてください。

AU Strike 5/5 Surface 4/5

Lifetime or early posthumous issue（生前発行または死後すぐの発行）

2023年1月17日に$7,500で落札。

Choice AU 4/5 Surface 3/5

セレウコス1世の時代の発行。

2023年1月17日に$9,300ドルで落札。

MS Strike 4/5 Surface 3/5

Posthumous issue（死後発行）

2023年1月17日に$12,000で落札。

その他のアレキサンダー大王のアンティークコイン

ディスターテル（２stater）金貨

当時の戦時中の兵士の20日分の賃金に値する高額貨幣です。スターテル金貨の約2倍の大きさです。

基本的に流通貨幣として発行されたため、このようにほとんど傷のない状態のものは高額で取引されています。

Choice XF Strike 5/5 Surface 5/5

Strike（打刻）もSurface（摩耗の度合い）も両方「5」の完璧な評価です。

Lifetime issue（生前発行）

2023年1月9日に$55,200で落札。

 

古代の傑物アレキサンダーのカリスマティックな魅力をお手元に

古代におけるアレキサンダーの偉業、後世への強い影響力を知ることは、西洋社会においてはほぼ常識となっています。美術館の多くには、アレキサンダーをテーマにした作品が数多く残されているためです。

カリスマ的な人気を誇るアレキサンダー大王のスターテル金貨は、古代のコインのなかでも特に人気の高いもののひとつ。戦いと勝利の女神に愛されたアレキサンダー大王の偉大さを、実感できるアイテムです。

コインコレクターのみならず、西洋古代史を愛する方にもおすすめのアレキサンダーのスターテル金貨、ご興味を持たれたらぜひアンティークコインギャラリアにご一報ください。

 

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