動物コインについて解説!コインの種類やデザインも紹介
世界各国では、コインのモチーフとして動物を彫刻した金貨や銀貨がいくつか発行されています。彫り込まれた動物は単なる生き物としての動物というよりは、その背後に深い意味を持った象徴物としてデザインされたもので、中には、架空の動物がデザインされている場合もあります。それぞれの動物コインの背景を知ると、その動物コインへの興味や愛着がさらに強くなることでしょう。本記事では、人気のある動物コイン5選の種類やデザインを紹介します。
モーティマーのホワイトライオン(動物:ライオン)
モーティマーのホワイトライオンは、2020年に英国で発行された金貨、銀貨です。金貨は500ポンド5オンスで、直径10㎝、重さは1005㎏とかなり大きなものです。銀貨には直径が38.61mmの2オンスコインもあります。
金貨銀貨共に、表面にはライオンが、そして裏面にはエリザベス2世の横顔が彫られています。ライオンは勇気と強さのシンボルであり、英国の象徴になってきました。また、女王の守り神として崇められてきました。
モーティマーとは、15世紀にイングランドの王であったリチャード3世とエドワード4世の祖母であるアン・ド・モーティマーの家系の名前であり、その名誉を讃えてつけたものです。
モーティマーのホワイトライオンは、イングランドを守る10頭の獣の彫刻「クイーンズビースト」の一つになっています。クイーンズビーストは、1953年、エリザベス2世が即位した時に、その記念として作られた彫刻で、それぞれの獣をモチーフにしたコインが2016年からシリーズとして発行されてきました。モーティマーのホワイトライオン金貨・銀貨はシリーズ8番目のコインになります。
スコットランドのユニコーン(動物:ユニコーン)
スコットランドのユニコーン金貨・銀貨は、前述の英国の「クイーンズビースト」シリーズの一つで、2017年に発行されました。ユニコーンは元々スコットランドの象徴でしたが、1603年にスコットランドのジェームズ6世が、エリザベス1世の後を継いで、ジェームズ1世としてイングランドの王に即位。その際にイングランドの紋章の中に、イングランドの象徴であるライオンと並べてスコットランドのユニコーンを取り入れました。この時から、スコットランドのユニコーンはクイーンズビーストの一つとして取り扱われるようになったのです。
スコットランドのユニコーン金貨は1/4オンス。直径22㎜、重さ7.8gでクイーンズビーストシリーズでは最小のコインです。発行枚数は1500枚。
一方スコットランドのユニコーン銀貨の方は、1オンス。直径38.61mm、重さ31.21gです。こちらは6250枚のコインが発行されています。
プランタジネット朝のファルコン(動物:ファルコン)
プランタジネット朝のファルコンも英国発行の「クイーンズビースト」シリーズの1つです。表面に彫刻されたファルコンは大きな翼を広げ、同様にファルコンの絵が描かれた盾の上に立っています。大小2羽のファルコンが上下に並んだユニークなデザインだといえます。
プランタジネット朝とは中世イングランドの王朝ことで、ファルコンの紋章はエドワード3世が取り入れ、孫のリチャード2世に受け継がれ、エリザベス1世の時に皇室を守る獣、つまりクイーンズビーストの一つとして定められました。
プランタジネット朝のファルコンのコインには1オンスと1/4オンスの金貨と2オンスの銀貨があります。1オンスの金貨は直径32.69mm、重さ31.2g。発行枚数は445枚で、その内400枚がケースに入っています。
ドイツ領ニューギニア2マルク(動物:極楽鳥)
ドイツ領ニューギニア2マルクは1894年に発行された銀貨です。表面にニューギニアを代表する極楽鳥の絵が彫られ、裏面には額面と発行年数、そして「NEW-GUINEA COMPAGNIE」の文字が刻まれています。
ニューギニアは過去にさまざまな国の植民地になってきましたが、1884~1914年までは、国土の北東部がドイツの統治下に置かれました。ドイツ本国から遠く離れたニューギニアを統治するためにドイツ政府は「ニューギニア会社(NEW-GUINEA COMPANIE)」を設立し管轄をゆだねました。ニューギニア会社は領地の開発を進めるために、ジャバ、中国、日本などから労働者を雇い入れていました。そして報酬を支払っていたのですが、支払いに使う貨幣の種類がばらばらだったため、それを統一するために考え出したのがこのドイツ領ニューギニアのコインでした。
ドイツ領ニューギニアコインの製造許可が下りるまでには数年かかり、しかも、品質はドイツ本国並みの基準を織り込むことを条件とした一方で、モチーフにはドイツ本国の紋章であるファルコンの絵を用いることは許されませんでした。そのため、ニューギニアの象徴である極楽鳥をモチーフにしたというわけです。
コインの製造はベルリンで行われ、発行後、それまでに使われていた一部のドイツ貨幣とその他の貨幣の使用が禁止され、このドイツ領ニューギニアコインのみが使われました。
ドイツ領ニューギニアコインには銀貨の他、金貨と銅貨があります。ドイツ領ニューギニア2マルクは直径28㎜、重さ11.1g、発行数は15,000枚。このうち1596枚はすでに溶解されています。
ドイツニュルンベルク「ラムダカット」(動物:羊)
ドイツニュルンベルク「ラムダカット」は羊をモチーフにして造幣された金貨です。ダカットとはコインの名前で元々は1140年にイタリアのシシリアで発行され、後にヨーロッパ各地に広まりました。特に1700年と1703年に現在のドイツである神聖ローマ帝国のニュルンベルクで発行されたラムだカットは人気を博すようになりました。
ヨーロッパでは羊はキリストを意味し、平和の象徴でもあります。ラムダカットコインでは羊が平和を意味する「パクス」と書かれた旗を持ち地球の上に乗っている姿が彫刻されています。さらに裏面には、こちらも平和の象徴である鳩の絵が描かれています。
このように平和をテーマにした金貨が人気を呼んだその背景には「三十年戦争」があります。ヨーロッパの人々は30年もの長い間続いた戦争に疲弊し、心から平和を求めるようになっていたことが想像できます。
1700年発行のラムだカットには円形と正方形の2種類があります。この2種類それぞれに対し、5~1ダカットの金貨があり、そこからさらに1/2, 1/4と小さくなり最小1/32までのダカットが発行されました。発行年数は数字として表現されていないのですが、円周に刻まれた文字の中から大き目の文字を取り出しそれをローマ数字として合わせていくとわかるようになっています。心憎いデザインです。
動物コインまとめ
動物をモチーフにしたコインの中から5種類のコインを紹介しました。このうち最初の3つは英国の「クイーンズビースト」シリーズのコイン、そして後の2つはドイツ領ニューギニアで発行された2マルク銀貨と神聖ローマ帝国で発行されたラムダカット金貨です。どのコインでも動物が大きな意味を持っていたことが良く分かります。動物好きにはもちろんのこと、歴史に関心のある方には魅力あるコインなのではないでしょうか。