アンティークコイン投資と税金!売却益にかかる税金や相続税について解説
時を経て、なお輝きを増すアンティークコイン。投資としても美術品としても一見の価値があるものですが、アンティークコインの購入や売却益、相続にかかる税金についてはご存知でしょうか。
日本の税制では、価格がつく所有物に関しては金額や保持する目的などよって適用する税制が様々あります。
一見面倒な税務・会計処理ですが基本を知っていれば案外簡単です、財産としてのアンティークコインを保有するうえで押さえるべきポイントを5つ取りあげてみました。
アンティークコイン投資とは
アンティークコイン投資は年々国内でも愛好者が増えています。
その理由としては、
- 資産性・換金性が高い
- 芸術品・美術品としての美しさ
- 本人確認など不要で手軽に購入できる
- 長期保有または人気によっては高騰し高値で取引できる
このような理由により世界中に多くのコレクターが存在しています。アンティークコイン投資は鑑賞を楽しみながら、長期保有で値上がりを待つというのが基本スタンスです。
アンティークコイン投資の売買や購入にあたっては、信頼できるディーラーと相談しながら好きな時に気に入ったコインを購入し、必要に応じて売却し利益を得るものです。
近年、国内でのコインオークションも活況を呈しており、老舗では日本コインオークション、手軽なところではヤフーオークションにもアンティークコインが出品されコレクターを楽しませています。
アンティークコイン購入時にかかる税金
まず、アンティークコイン購入時には「消費税」しか発生しません。本人確認などはなく手軽に購入できる、それがアンティークコイン投資の魅力の一つでもあります。
また、コレクター同士でのアンティークコインの譲渡に関しては「課税対象外」になっています。
アンティークコイン売却にかかる税金
アンティークコインを売却するにあたってはどのような税金が発生するのかをご説明いたします。
売却に関しては所有年数が重要になります。「購入してから5年経過しているかどうか」この年数で課税金額が大きく変わりますので、ご注意が必要です。
一例として、100万円のアンティークコインを購入し倍に値上がりし200万円で5年以内に売却したとします。
200万円 - 100万円(購入時金額) = 100万円(売却益)
100万円 - 50万円(特別控除) = 50万円
この50万円とその他給与所得等を合算した金額に対し、翌年の所得税が課税されることになります。
同じ条件で5年より長く保有した場合、
200万円 - 100万円(購入時金額) = 100万円(売却益)
100万円 - 50万円(特別控除) = 50万円
50万円 ÷ 2 = 25万円
5年以上の保有財産に関しては短期売買の半分の25万円での課税となります。
もしアンティークコイン購入金額の領収書紛失などで購入金額が証明できない場合は、売却金額の5%しか控除することができませんのでご注意が必要です。
200万円 - 10万円 = 190万円(売却益)
190万円 - 50万円(特別控除) = 140万円(長期保有なら70万円)
売却時の税金は、購入時の価格の明確化と長期保有この二つの条件があれば大きく控除対象になりますが、短期売買や購入時の金額が不明瞭だと控除金額もごくわずかになります。
いずれにしても売却時の課税価格にその他の給与所得や不動産所得などをすべて加算した合計に対して翌年の所得税や住民税が確定します。
急に資金が必要になり慌てて売却するときなど、翌年の課税金額を計算の上で対処されることをお勧めします。
アンティークコインは相続税の対象になるか?
結論から申し上げますとアンティークコインは相続税の対象になります。相続税の考え方として2つのポイントがあります。
- 財産的価値のあるものはすべて相続税計算対象になる
- 相続税ではアンティークコインの購入金額は関係なく、相続が発生した時期での時価を計算する
この2点が重要なポイントになります。
最初の財産的価値と言えるのは先にお伝えしました、時を経ても価値が下がらない歴史的、希少価値のあるものや現在時価概ね30万円以上のものを対象とします。
2つ目のポイントの相続が発生した時点での時価については、アンティークコイン認定の業者や鑑定人に現時点での時価算定を依頼します。
相続税の基礎控除額は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」これが算定式となりこの控除額を超えた分に関して課税されます。
下記の表をご覧ください。
<相続税基礎控除>
法定相続人 |
基礎控除額 |
1人 |
3,600万円 |
2人 |
4,200万円 |
3人 |
4,800万円 |
4人 |
5,400万円 |
<相続税率表>
法定相続人の相続額 |
税率 |
控除額 |
1,000万円以下 |
10% |
0円 |
1,000万円~3,000万円以下 |
15% |
50万円 |
3,000万円~5,000万円以下 |
20% |
200万円 |
5,000万円~1億円以下 |
30% |
700万円 |
例えば、「相続人が配偶者と子供2人の場合で3人、遺産相続が8,000万円」とします。
この場合は、
8,000万円 - 4,800万円(基礎控除額) = 3,200万円
3,200万円 × 20% (税率) = 640万円
640万円 - 200万円(控除額) = 440万円
これが相続税となります、かなりの金額になるのでアンティークコインをそのまま相続するかあるいは相続税で処理せず事前に生前贈与するという方法なども検討の余地があります。
アンティークコインの生前贈与
ご存知の方も多いとは思いますが、贈与には生前贈与という方法があります。1年間で110万円以内の贈与であれば、基礎控除内ということで課税されません。
お子さんやお孫さんへ110万円以内の手頃なアンティークコインを1枚ずつと贈与することができるのです。 この場合での重要なポイントは「どのコインを〇年〇月〇日に〇〇に贈与した」と書面にて事実を記載することです。
不動産と異なり、アンティークコインには所有者を登記すべき法務局のようなものはありません。 記載されるのであれば「贈与契約書」あるいは「公正証書」に記載してあれば完璧です。もちろん贈与の前には税理士や司法書士などにご相談されることをお勧めします。
所有される財産によっては、多少贈与税を申告してももう少し高額なコインでの生前贈与がベストであると判断されるときもあるからです。
<アンティークコイン相続のポイント>
- 2年~3年に1度アンティークコインの時価を確認し相続税課税金額を確認する
- 相続税の支払いが難しい場合は事前に売却を検討する(相続時では時価のみ算定されるが、売却時には購入金額と長期保有で控除が可能のため)
- 基礎控除内で年間110万円以内のアンティークコインを少しずつ贈与する
アンティークコインを展示美術品として扱う場合の会計処理
会社のオーナー様が、アンティークコインコレクションを会社の応接室やロビーに展示し、不特定多数の方に鑑賞していただくこともあるでしょう。
この場合のアンティークコインは美術品として会計処理される場合もあります。どんな処理が必要であるのかを下記にまとめました。
アンティークコイン購入金額 |
減価償却可否 |
購入金額が100万円以上 |
非減価償却資産 |
購入金額が30万円以上 100万円以下 |
減価償却資産 金属製のため15年の減価償却期間 |
※30万円以下のものは少額特例で一括経費あるいは3年均等償却が可能
平成27年1月1日以降美術品に関する会計処理改正 国税庁より引用
国税庁が美術品として扱うには「歴史的価値・希少価値・美術品としての価値がある」と認定されたものです。
購入金額100万円以上のアンティークコインならこの美術品という定義に合致すると考えです。認定は税務署ではなく、税務署からディーラーや鑑定人へ依頼し鑑定結果からの判断となります。
上記の区分からすれば購入金額100万円以下なら減価償却可能ですが、100万円以上なら土地などと同様の扱いで非減価償却資産となり、売却するまではずっと資産として残り続けることになります。
しかし、これはあくまで不特定多数の方に鑑賞していただくことが目的の展示美術品に対しての課税処理です。
アンティークコインを個人で購入し自分だけで楽しまれるだけなら、このような会計処理は不要になりますのでご安心ください。
まとめ
アンティークコインに関する売却・購入・相続に関する内容をお伝えしてまいりました。
最後に重要なポイントをまとめます。
- アンティークコイン購入時は消費税のみ
- 売却時には購入時の金額確認と5年という保有年数で控除額が異なる
- 相続税ではアンティークコインの購入金額は関係なく、相続が発生時での時価を計算する
- 相続税対策として2年~3年に1度アンティークコインの時価を確認し相続税課税金額を確認する
- 相続税の支払いが難しい場合は事前に売却を検討する
- 基礎控除内で年間110万円以内のアンティークコインを生前贈与で節税
残されたご家族にとって、あまりに高額なアンティークコインを相続して納税できないような事態になることは避けたいものです。
アンティークコインを次世代に安心して受け継いでもらうためには、売却・購入時には信頼できるディーラーにご相談ください。