アンティークコインの価格を決める3つの要素とは?【コインの基礎知識】

 

アンティークコインの購入・売却を複数回行うと「なぜ、同じコインなのに高いコインと安いコインがあるんだろう」という疑問が思い浮かぶことがあるでしょう。

アンティークコインは、発行された年代やコインのデザインなどが全て同じコインであっても、数十万から数百万円の価格差がつくことがあります。なぜでしょうか。

アンティークコインには、コインの価格を決める上で重要視される3つの要素があります。これらの違いが、同じアンティークコインであっても価格が異なる原因となっています。

この記事では、アンティークコインの価格を決める3つの要素についてわかりやすく解説します。より価値の高いアンティークコインを手に入れるためにも、最後まで読んで自分のものにしてください。

 

 

1.コインの「人気度」

アンティークコインの価格を決める1つ目の要素は、コインの「人気度」です。多くの人が欲しがる商品の価格が上がりやすいことと同様に、人気が高いアンティークコインの価格は高くなる傾向にあります。

 

人気の高いアンティークコインとは、すなわち「デザイン」と「ストーリー」が魅力的なもの。例えば、世界で最も美しく人気の高いコインの1つに「ヴィクトリア女王5ポンド金貨(通称:ウナライオン)」があります。

 

ウナライオンの人気の秘密は、その「デザイン性の高さ」。イギリス王立造幣局「ロイヤル・ミント」で彫刻師をつとめた名人ウィリアム・ワイオンによって製作されました。ちなみにウィリアムワイオンは、1795年にバーミンガムで彫刻師である父・レオナルド・チャールズ・ワイオンの元に生まれました。若い頃から数々の賞を受賞しつづけ、1851年に亡くなるまでに彫刻の才能を遺憾無く発揮し続けた天才です。

ウナライオンの他にも、ヤングヘッドやモハール金貨、ゴシッククラウン銀貨など、現代でも多くのコレクターから圧倒的な人気を集めるコインを作っています。

 

再度ウナライオンの例に戻りますが、この金貨は大英帝国(イギリス)が世界の支配者として栄華を極めた時代に作られました。また、コイン表面に描かれている「ウナ(少女)」は若きヴィクトリア女王を、そしてウナの側を歩くライオンはイギリスを表しているといわれています。このような「ストーリー性」も人々を魅了する理由の1つです。 

 

ウナライオンのように、魅力的なデザインとストーリーをもつアンティークコインは、必然的に人気が高くなり、その価格も高くなる傾向にあります。 

 

要素2.希少性の高さ

アンティークコインの価格を決める2つ目の要素は、「希少性」です。需要に対して、供給量が少ない状態を「希少性が高い」といいますが、ほとんどの場合、希少性の高いアンティークコインの価格は上がります。

 

アンティークコインは、数百年以上前に作られたものも多く、世界大戦や大規模な自然災害で紛失し、残存枚数が極端に少ないものもあります。また、ある程度、枚数があったとしても、コレクターが手放さず、なかなか市場に流通しないこともよくあります。

そもそもの発行枚数が少なくて、かつ残存枚数も少なく、市場に流通しづらい人気のアンティークコインは、価格が上昇しやすい傾向にあります。

 

前述したウナライオンの発行枚数は、たったの400枚。2020年7月に日本で行われたオークションでは、3,200万円の価格(*1)がつきました(ちなみに、このコインの保存状態は、中の下といったところで、それほど良い状態ではありませんでした。それでも3,200万円です。。)

ただし、残存枚数が少ない、流通量が少ないからと言って、闇雲にアンティークコインを買えばいいということではありません。なぜなら、品数自体が少なくても、需要がなければ、それはただのガラクタです。当然ですが、欲しいと思う人がいなければ、価格は上がらないのです。

 

まとめると、需要が高ければ高いほど、そして供給が低ければ低いほど希少性が上がり、コインの価格も上昇するのです。

 

*1) https://www.ncanet.co.jp/exhibit/55526

 

要素3.コインの状態(グレードの高さ)

アンティークコインの価格を決める要素の3つ目は、「コインの状態」です。たとえ、人気があって希少性の高いコインでも、傷がついていたり、表面が錆び付いていたりと、保存状態が悪いものは、価格が大幅に下がることもあります。

 

コインの状態を見分けるには、「グレード」と呼ばれる基準を知っておく必要があります。アンティークコインには、コインのグレードを「鑑定」する機関が存在しており、有名なところでいうと「PCGS」「NGC」といったアメリカの鑑定会社があります。

これらの機関がコインの状態を鑑定し、70段階のグレードで評価をつけます。そして「スラブ」と呼ばれるプラスチックでできた保護カバーにコインを封じるのです。スラブには、鑑定されたコインのグレードが数値で表されています。つまり、スラブに入っているコインは、鑑定機関のお墨付きのアンティークコインとなります。

 

コインには、大きく分けて2種類あります。

  1. MS型(ミントステイト)投資型
    流通を目的としておらず、特殊技術で模様を浮き立たせた記念硬貨。
  2. PR型(プルーフ)
    流通用に製造されたが、実際には使用されなかったコイン。

どちらの種類のコインも同じ基準でグレードがつけられます。たとえば、MS型なら「MS70」、PR型なら「PR70」と表記されます。グレーディングに関する知識はコイン投資の基礎なので、今後コイン投資をしていきたいとお考えの方は覚えておくと良いでしょう。 

 

グレードの数字が持つ意味はコインによって変わる

グレードの数字が持つ意味は、コインの種類によって変わります。なぜなら、コインそれぞれ製造された年や残存枚数などが違うからです。

 

コインのグレードの最高は「MS70」か「PR70」です。これは「傷1つ入っていない完全未使用品」のみにつくグレードです。

2017、2018、2019年など、最近作られたコイン(「モダンコイン」と呼びます)なら、最高ランクの70評価がつけられるのは、ごく普通のこと。しかし、アンティークコインならば、70という評価はほぼありえません。なぜなら、100年以上も前につくられたコインが傷1つなく残るなんてことはありえないからです。実際、100年前のアンティークコインの最高グレードはMS68、PR68が多いです。

このように、グレードの数字が持つ意味はコインによって変わります。

 

よく「モダンコインはMS70のコインがあるのに、このコインはMS65ですけど大丈夫でしょうか…?」という質問を受けます。しかし、一概に「MS65のコインはダメだ」ということは言えないのです。なぜなら、コインができた年代や流通枚数によってグレードの意味や価値が変わるからです。グレードの数字だけで判断するのは避けましょう。 

 

例:ヴィクトリア女王の金貨「ジュビリーヘッド」でグレードを学ぶ

1887年に作られたヴィクトリア女王5ポンド金貨「ジュビリーヘッド」の例を挙げましょう。仮に「MS65」の「ジュビリーヘッド」があったとします。もし、MS評価がコインによって変わることを知らない人がいたら「MS65?それよりもMS70のものが欲しいです」と言うことでしょう。

 

しかし、実はこの「ジュビリーヘッド」の最高グレードは「MS66」。残存枚数も少なく、たった3枚しかありません。そして次に評価の高い「MS65」は、8枚です。

1887年の5ポンド金貨「ジュビリーヘッド」において、「MS65」というグレードは「トップ11に入っている貴重なアンティークコイン」ということを意味しているのです。

 

もちろん、このコインは5万4000枚作られており、その全てが鑑定を受けたわけではありません。しかし、持ち主がわざわざお金を出して鑑定をしてもらおうとするくらい状態のいいものの中で、トップ11に入っているのは稀有な価値があるということです。

 

グレードの数字が持つ「意味」を調べるには?

グレードの数字の意味はコインによって変わります。グレードの数字がもつ意味を調べるのには、コインの鑑定会社であるPCGSのサイトを使うことをおすすめします。

このサイトでは、スラブについているコインのナンバーを打ち込んで検索するだけでコインの情報が表示されます。そのコインが各グレード何枚あるのかという情報も出るため、とても参考になるサイトです。以下のリンクから検索できます。

PCGS:https://www.pcgsasia.com/cert?l=ja 

グレードの数字だけでコインの良し悪しを判断するのは避けましょう。各グレードの枚数やその他の情報も入手してから総合的に判断することをおすすめします。

 

まとめ

今回は、アンティークコインの価格を決めるポイントを3つお伝えしました。その3つとは「人気」「希少性」「状態」です。3つのポイントは互いに作用しています。「状態」がいいコインは「人気」が高まりますし、「人気」が高いコインは「希少性」が上がります。このように3つのポイントが複雑に絡み合い、コインの価格が決められるのです。

 

 

この記事は、アンティークコインギャラリアのYouTube「【コイン基礎知識】アンティークコインの価格を決める「3つの要素」とは!?グレードの数字の意味の捉え方を把握しよう。」をベースに作成しています。