在位年数68年!ハプスブルク家の最後の輝きフランツ・ヨーゼフ1世と紋章100コロナ金貨
▲1903年頃、70代のフランツヨーゼフ1世
ハプスブルク家。
その名は、世界史に興味がない人でも1度は耳にしたことがあるかもしれません。
13世紀から20世紀にかけて、ヨーロッパの歴史に大きな影響を与えた名門中の名門、それがハプスブルク家です。
ハプスブルク家は1918年まで皇帝位にありましたが、1916年まで68年間の在位を誇り、不死鳥とも呼ばれたのがフランツヨーゼフ1世です。
公私ともに激動の人生を生きた皇帝フランツヨーゼフ1世。
その晩年に発行された100コロナ金貨について、詳しく解説いたします。
フランツヨーゼフ1世 紋章100コロナ金貨
基本データ
コイン名 | オーストリア フランツヨーゼフ1世 100コロナ金貨 紋章 |
---|---|
通称 | フランツヨーゼフ1世 紋章100コロナ金貨 |
発行年 | 1909年〜1915年 |
国 | オーストリア |
額面 | 100コロナ |
種類 | 金貨 |
素材 | 金 |
発行枚数 | 24,924枚|ただし1915年銘はリストライク(発行枚数は不明・プルーフも存在する) |
品位 | Au 900|K21.6 |
直径 | 37.0 mm |
重さ | 33.87 g |
統治者 | フランツヨーゼフ1世 |
デザイナー | シュテファン・シュワルツ(Stefan Schwartz) |
KM | #2819 |
表面のデザイン | 右側を向いたフランツヨーゼフ1世の肖像とレジェンド |
表面の刻印 | FRANC·IOS·I·D·G·IMP·AVSTR·REX BOH·GAL·ILL·ETC·ET AP·REX HUNG·ST.SCHWARTZ(神の恩寵を受けたフランツヨーゼフ1世、オーストリア皇帝、ボヘミア、ガリツィア、イリュリア、ハンガリーの王) |
裏面のデザイン | ハプルブルグ家の紋章と額面、年号 |
裏面の刻印 | C CORONÆ MDCCCCXV 100 COR. 1915(100コロナ この場合の年号は1915年) |
エッジのタイプ | レタリング |
エッジの刻印 | VIRIBVS VNITIS(結束力とともに) |
フランツヨーゼフ 紋章100コロナ金貨とは?
数世紀もの間、ヨーロッパの主役として君臨したハプスブルク家。
フランツヨーゼフ1世の紋章100コロナ金貨は、それにふさわしい洗練された美しさを持っています。
その詳細を見ていきましょう。
晩年の品格を伝えるフランツヨーゼフ1世の肖像
フランツヨーゼフ1世の紋章100コロナ金貨で印象的なのが、コインの表面に刻まれた皇帝の横顔です。
コイン発行当時、フランツヨーゼフ1世は80歳になろうとしていました。
86歳で崩御した崩御した皇帝の、まさに最晩年の姿です。100コロナ金貨は1908年にフランツヨーゼフ1世皇帝即位60周年を記念して、発行が決まったといわれています。
皇帝として60年という貫禄と、欧州一の名門に相応しい鼻梁の高さが美しい、皇帝の横顔です。
ハプスブルク家の象徴「双頭の鷲」
双頭の鷲は、ヨーロッパにおいては2つの権力を1つの体に有していることの表象として、王家や貴族の紋章によく使われます。
しかし「双頭の鷲」といえばハプスブルク家が思い浮かぶ人は多く、まさに同家のシンボルともいっても過言ではありません。本来は神聖ローマ帝国の紋章であった双頭の鷲は、いつからかハプスブルク家の紋章ともなったのです。
フランツヨーゼフ1世は、オーストリア帝国の皇帝であると同時に、ハンガリーの国王でもありました。
双頭の鷲の紋章に相応しい権威を有していた皇帝なのです。
100コロナコインに刻まれた文字
100コロナコインに刻まれた文字には、どんな意味があるのでしょうか。
フランツヨーゼフ1世の肖像を囲む文字には、このような意味があります。
FRANC·IOS·I·D·G·IMP·AVSTR·REX BOH·GAL·ILL·ETC·ET AP·REX HUNG·
(神の恩寵を受けたフランツヨーゼフ1世、オーストリア皇帝、ボヘミア、ガリツィア、イリュリア、ハンガリーの王)
とあり、さらにコインをデザインしたシュテファン・シュワルツの名が刻まれているのです。
裏面、双頭の鷲の面には
C CORONÆ MDCCCCXV
(100コロナ 1915年)
とあります。
さらにコインのエッジ部分には
VIRIBVS VNITIS
(結束力とともに)
というラテン語が見えます。これは、フランツヨーゼフ1世自身のモットーでした。
金の純度でも人気が高いコイン
フランツヨーゼフ1世の紋章100コロナ金貨は、純度の高さと重さが高く評価され、コインコレクターたちの間でも人気があるもののひとつです。
もちろん、ハプスブルク家の伝説的な皇帝フランツヨーゼフ1世の人気もあり、歴史的価値も価格に反映されているのです。
フランツヨーゼフ 100コロナ金貨が作られた当時の時代背景
▲1905年頃、馬上のフランツヨーゼフ1世
フランツヨーゼフ1世の紋章100コロナ金貨が発行されたのは、20世紀初頭のことでした。
その時代背景に迫ってみましょう。
人々の期待を受けて18歳で即位したフランツヨーゼフ1世
19世紀中ごろのオーストリアは、他のヨーロッパ各国と同様に、自由や独立を求める気運が高まっていました。帝国内の各地で小規模の暴動や反乱が発生するようになり、無能な皇帝フェルディナンドは退位を決意します。そして新しい時代の皇帝として歓呼のなか登場したのが、フランツヨーゼフ1世でした。
フランツヨーゼフ1世は1848年、18歳の若さで皇帝となります。
いかにも覇気がなかった前王である叔父のフェルディナンド皇帝とは異なり、フランツヨーゼフ1世は容姿端麗で頭脳明晰、人々の期待を一身に背負っての皇帝即位でした。
独立運動の気運の中で
フランツヨーゼフ1世は賢明な君主でしたが、当時のヨーロッパを覆っていた気運は広大なオーストリア帝国の維持を困難にしました。
フランツヨーゼフ1世が即位した1848年だけでも、フランスでは2月革命、ドイツでは3月革命が勃発しているのです。
こうした影響を受けて、ハプスブルク帝国各地でも民族運動が頻発するようになります。
フランツヨーゼフ1世の優秀な家臣たちによって、こうした動きもある程度は鎮圧ができたものの、世の流れには逆らえない時代に突入していきました。
結局フランツヨーゼフの時代に、オーストリア帝国は北イタリアのハプスブルク領、ドイツの旧領を失ってしまいます。
もともとハプスブルク家が統治する国家は多民族により構成されていたため、フランツヨーゼフの統治も、より困難であったという事情もあったのです。
とくに誇り高いハンガリー人たちは自治を求めて反政府運動を展開、1867年に皇帝は彼らの独立を半ば承認します。その結果誕生したのが、オーストリア・ハンガリーの二重帝国でした。
ハンガリーにおいても国の頂点はフランツヨーゼフ1世という点は変わりなかったのですが、ハンガリーにも首都がおかれ独自の政治が認められるなど、フランツヨーゼフ1世はさまざまな譲歩を余儀なくされたのです。
”内憂外患”の時代を生きたフランツヨーゼフ1世
帝国内外で問題が勃発していたのと並行して、フランツヨーゼフ1世は家庭内でも苦悩とは無縁ではいられませんでした。
恋愛結婚した皇后エリザベートは絶世の美女でしたが、宮廷生活に馴染めず、各地を放浪するという生活をつづけた後に暗殺されてしまいます。
唯一の跡継ぎであったルドルフ皇太子も自殺、メキシコの皇帝となった皇弟マクシミリアンは銃殺され、跡継ぎと定めた甥のフェルディナンド大公がサラエヴォで暗殺。
とくに甥のフェルディナンド大公暗殺は第1次世界大戦の引き金となった大事件(サラエヴォ事件)であり、ハプスブルク家も否応なくその波にのまれていく運命にありました。
事実上、ハプスブルク帝国の最後の皇帝として
フランツヨーゼフ1世の治世は、実に68年に及びました。
1916年に死去した後、わずか2年後の1918年にハプスブルク帝国は途絶えてしまいます。そのため、フランツヨーゼフ1世は事実上、ハプスブルク家における最後の皇帝と呼ばれているのです。
コインに残されているように、老いてもなお品格をたたえたその姿は、ハプスブルク家の最後の栄光として今も人々の心に深く刻まれています。
フランツヨーゼフ 1世のコインの種類・その他のコイン
70年近く帝国に君臨したフランツヨーゼフ1世。
彼の時代に発行されたコインは、今回ご紹介した100コロナ金貨だけではありません。
フランツヨーゼフ1世の人気を反映して、市場でも高く取引されるコインのいくつかを紹介します。
フランツヨーゼフ1世4ダカット金貨
18歳で即位したフランツヨーゼフ1世の治世において、最初に発行されたのが4ダカット金貨です。
20代の皇帝は豊かな頭髪と若々しい横顔を見せていて、当時の帝国内の期待を一身に担う気概さえ感じます。
欧州内でゴールドが不足していた事情を受けて、少し重量が軽いという特徴を持つコインです。
フランツヨーゼフ1世100コロナ金貨(雲上の女神)
今回ご紹介した100コロナ金貨とは別に、「雲上の女神」という名で知られるコインも人気です。
1908年、フランツヨーゼフ1世皇帝即位60周年を記念して発行されたコインには、美貌の皇后エリザベートをモデルにしたといわれる女神が刻まれています。
その珍しいデザインと皇妃エリザベートの人気により、フランツヨーゼフ1世のコインの中では高値がつくことが多いコインでもあります。
フランツヨーゼフ 紋章100コロナ金貨の価格推移
1915年はリストライクのため、ハイグレードのものでもオークションでは$1,800前後のお手頃な金額での落札です。それ以前の年号やプルーフライク、またはプルーフになると落札価格も跳ね上がります。1900年代初頭の大型金貨は世界的にみてもあまり目立ったものがなく、紋章100コロナ金貨も手に入れやすい価格のため人気です。それでは年号とグレードによる価格推移をみてみましょう。
PL60 CAMEO 1911年
2022年5月5日に$10,200で落札。
PL評価がついているものは珍しい。
PL61 1909年
2023年1月17日に$11,400で落札。
PL64 Ultra Cameo
2022年1月10日に$21,600で落札。
MS66 1915年 Restrike
2023年2月23日に$1,920で落札。
リストライクであればMS66というハイグレードでもお手頃な金額で手に入れることができます。
伝説の皇帝の晩年を伝える100コロナ金貨!
68年という長い在期間を誇ったフランツヨーゼフ1世。
彼の晩年の姿が刻まれた紋章100コロナ金貨は、純度の高さや歴史的価値など、あらゆる面から、高い評価を受けています。
18歳で即位した皇帝が権力者として、あるいは家長として歩んだ苦悩が、80歳の皇帝の肖像画に貫禄として見ることができます。
近代史に興味がない方にも人気のハプスブルク家のフランツヨーゼフ1世、その100コロナ金貨をお手元に置きたいという方は是非、ギャラリアにご相談ください。
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