キャッシュレス社会はまだ定着していない。USで増える現金需要
2017年の貨幣流通量は、100ドル(約1万円)紙幣が1ドル(約100円)紙幣を抜いて第1位でした。 100ドル紙幣を中心に現金需要は増大し、キャッシュレス決済が導入されても米ドルの流通量は増え続けている。
青線 Total合計の貨幣流通高 赤線 100ドル紙幣の流通高
出典:Federal Reserve Board of Governors(連邦準備制度理事会)
リッチモンド連邦準備銀行によると、100ドル紙幣の需要はキャッシュレス社会の進展に反して増え続けています。
こちらの画像資料はリッチモンド連邦準備銀行より提供。 100ドル紙幣の流通量が1ドル紙幣を超えました。
紙幣種類別の製造枚数 1ドル紙幣、2ドル紙幣、5ドル紙幣、10ドル紙幣、20ドル紙幣、50ドル紙幣、100ドル紙幣
出典:Federal Reserve Board of Governors(連邦準備制度理事会)
リッチモンド連邦準備銀行が公表した折れ線グラフによると、100ドル紙幣の流通枚数が増え続けています。画像1では通貨全体と100ドル紙幣に対する需要の高さを比べ、画像2では紙幣種類別の流通枚数を対比しています。こちらの画像資料はリッチモンド連邦準備銀行より提供。
Bureau of Engraving and Printing(米国財務省印刷局)のレポートを読んでいる方なら、100ドル札紙幣の需要の高さはもうご存知だと思います。
しかし、そうではない方のために、リッチモンド連邦準備銀行からの説明をご紹介しましょう。 リッチモンド連邦準備銀行が発行する経済誌「エコン・フォーカス」の今年の第2四半期号で、ティム・サブリックが「現金主義は今でも主流か?」というタイトルの記事を執筆しました。
現在、さまざまなキャッシュレス決済方法が利用可能にもかかわらず、現金の人気が高まっているのはなぜかという疑問にそこで言及しています。 現金需要の増大は高額紙幣が中心だとサブリックは言います。
2016年の調査によると、アメリカ人の手元にある現金の平均額は219ドル(2万1900円)でした。しかし、米ドルの流通量を計算すると、一人当たり4800ドル(48万円)を所持している計算になります。
そうしたことからも、現金は売買に利用されるだけではなく、価値の蓄積・保存としても使われていることになります。 さらに驚かされるのは、100ドル紙幣への需要はどの紙幣よりも高く、1995年以降は毎年8%ほどの伸び率を記録しているという事実です。これは他の紙幣の2倍になります。
そして2017年には、100ドル紙幣の流通量が1ドル紙幣を追い越しました。 リッチモンド連邦準備銀行は、多くのドル紙幣が海外に流れていることを認めています。
Federal Reserve Board of Governors(連邦準備制度理事会)の理事であるルース・ジュソンは、「米ドルに対する海外からの需要はある意味特殊なものです。他の通貨も自国以外で取引されていますが、国外で取引される通貨の量は米ドルが最大です。つまり、流通している米ドルの70%が海外で保有され、その60%が100ドル紙幣で占められているのです」と述べています。