中央アメリカ 8エスクード金貨の時代背景| 太陽と5連山に込められた意味とは?

中央に光り輝く太陽、そして、力強く連なる5つの山。

植民地時代の終焉を迎えた頃、中央アメリカ地域に誕生した中央アメリカ連邦共和国。その国で発行された通貨、中央アメリカ・エスクード。光り輝く太陽と連なる山々に込められる、揺るぎない意志の強さを感じることができます。

しかし、長きに渡るスペインからの植民地支配を脱却して誕生したこの国は、わずか16年の歳月で崩壊を迎えます。

本記事では、中央アメリカ 8エスクード金貨を軸にして、コインにまつわる歴史をご紹介します。

幻の中央アメリカ連邦共和国の怒涛なる運命の中、誕生したこの金貨には、一体どんな歴史が秘められているのでしょう?

 

1811年、エルサルバドル首都サンサルバドルで行われた第一次独立運動の祝賀会

1811年、エルサルバドル首都サンサルバドルで行われた第一次独立運動の祝賀会

中央アメリカで発行された8エスクード金貨は、スペイン領植民地だったグアテマラ・エルサルバドル・ホンジュラス・ニカラグア・コスタリカの、5カ国による中央アメリカ連邦共和国が誕生し、発行された通貨です。

わずか16年という短いこの連邦共和国に流通した貨幣は発行部数も少なく、金色に輝く美しい太陽の刻印に惹かれるコレクターが羨望をあつめるコインとしても知られています。

では、発行国である中央アメリカ連邦共和国について、そしてコインにまつわる歴史背景を軸に、金貨の魅力について紐解いていきましょう。

中央アメリカ 8エスクード 太陽と連山

中央アメリカ 8エスクード 太陽と連山 表裏

基本データ

コイン名 中央アメリカ連邦共和国 太陽と連山 8エスクード金貨
通称 中央アメリカ 8エスクード 太陽と連山
発行年 1828年・1833年・1837年
中央アメリカ連邦共和国
額面 8エスクード
種類 金貨
素材
発行枚数 1828年 5,302枚|1833年 4,459枚|1837年 2,028枚
品位 Au 875
直径 35.0 mm
重さ 27.0 g
統治者 -
デザイナー -
KM # 17
表面のデザイン 太陽と5つの火山、レジェンド
表面の刻印 REPUBLICA DEL CENTRO DE AMERICA 年号(Central America Republic:中央アメリカ)
裏面のデザイン 大きな樫の木、ミントマーク、レジェンド
裏面の刻印 LIBRE CRESCA FECUNDO•8• E•CR•F• 21 Q(Free grows fertile 8 Escudos Costa Rica F 21 Karats:自由は肥沃を育む、8エスクード、コスタリカ、21カラット)
エッジのタイプ リーデッドエッジ
エッジの刻印 -

 

中央アメリカ 8エスクード金貨 太陽と連山とは?

中央アメリカ・8エスクード金貨は、他の中央アメリカ・エスクードの金貨の中でも一番大きく、中央に輝く太陽と雄々しく聳え立つ5つの山の刻印に魅了されてしまうコインです。

こちらでは、中央アメリカ・8エスクード金貨についてご紹介します。

中央アメリカ 8エスクード金貨のデザイン

中央アメリカ・8エスクード金貨は、今は亡き中央アメリカ連邦共和国により発行された金貨です。発行数5,302枚という希少さからもコレクターの間で注目を集めているコインです。

表面は「5つの加盟国を象徴する5つの連なる山々」。そして中央上部には「光り輝く太陽」。周りにはスペイン語で「中央アメリカ連邦共和国」の文字が刻印されています。

裏面の中央には「大きな樫の木」が刻印されています。ミントマーク「CR」が入っていますが、これはコスタリカ・サンホセにて製造した証です。

中央アメリカ・エスクード金貨は35mmと大型の金貨なので、しっかりとその造形美を堪能できます。

5つの連なる山と太陽が表すもの

中央アメリカ 8エスクード金貨の表面にデザインされているのは、支配者の肖像ではなく、5つの連なる山と太陽です。

この5つの雄々しく連なる山々は、中央アメリカ連邦共和国を構成していた、グアテマラ・エルサルバドル・ホンジュラス・ニカラグア・コスタリカの5つの国を象徴し、中央に燦々と輝く太陽が降り注ぎます。スペインの長きに渡る植民地支配を脱却した自由主義を掲げた新生国の誕生とともに発行されました。

その当時の人々の内に聳え立つ意志の力を象徴するかのような、力強い山々に照らされるのはきらめく太陽の光。リベラルな世界を夢見る、新しい国への希望を強く感じるデザインです。

「エスクード」とは?

ポルトガル・エスクードやスペイン・エスクードなど、本国でも使用されていた通貨単位ですが、植民地内で流通するために発行された「エスクード」があります。

「エスクード」とは、植民地時代に南米や太平洋にある諸島の植民地などで使用されていた通貨単位です。植民地帝国が発展していた時代に登場したエスクードは、ポルトガル領インドやブラジル、スペイン領イスパノアメリカなどの植民地でも使用されました。

特に中央アメリカ・エスクードは、その限られた期間と少ない枚数のため、常に魅力的な収集分野となっています。

 

中央アメリカ 8エスクード金貨 太陽と連山が作られた当時の時代背景

中央アメリカ・エスクードは、どのような時代背景の中で誕生したのでしょうか?

こちらでは、中央アメリカ・エスクード金貨にまつわる歴史背景を紹介します。

中央アメリカ独立宣言調印の絵

中央アメリカ独立宣言調印の様子(グアテマラ、1821年)

 中央アメリカ連邦共和国とは?

「中央アメリカ連邦共和国」とは、19世紀初頭の1823年〜1839年に植民地地帯の南米諸国に起きたスペイン領からの独立運動によって形成され、アメリカ合衆国をモデルにして建国された国家です。

この国は現在のグアテマラ・エルサルバドル・ホンジュラス・ニカラグア・コスタリカから構成されました。

この連邦は植民地支配から脱却し、中央アメリカ全体を統治することを意図しており、中央アメリカの文化的、政治的、経済的な統合を目指します。

しかし、中央アメリカの地域的な実情や歴史的背景、思想の相違、地理的な障壁などにより、中央アメリカ連邦共和国は16年という短命に終わりました。

1838年にはすでに連邦は崩壊し、中央アメリカはそれぞれの独立国家として発展していくことになったのです。

国としての形は失ったものの、現在でも連盟国としての絆が強く、1960年には他の域内統合の動きに先駆けて、中米統合機構が発足するなど統合への動きがあります。

スペイン独立戦争に始まるイスパノアメリカ植民地地帯の独立運動

中央アメリカ共和国が立国する歴史の起点となったのは、スペイン独立戦争に遡ります。

1808年、フランス帝国のナポレオン・ボナパルトがスペインに進行し、当時のスペイン王フェルナンド7世を退け、代わりに自分の兄であるジョゼフ・ボナパルトをスペイン王ホセ1世にしました。もちろんこれに猛反対する民衆が暴動化し、そのままスペイン独立戦争が勃発します。

このスペイン独立戦争が、中央アメリカ共和国の誕生の発端になりました。

長きに渡るスペインの占領植民地、特にイスパノアメリカのインディアス植民地(15世紀末から19世紀初頭にかけて、スペインによって植民地化された中南米地域を指します)であるメキシコ・ペルー・エクアドルでは、本国スペインでのナポレオンの暴挙への不満に連鎖され、新しい偽の王に対する忠誠心を否定し、各地で自治運動が繰り広げられました。これをきっかけにして、ラテンアメリカの国々では次々と植民地からの独立運動が起きていきます。

ナポレオンの失脚後、再びスペイン国王に戻ったフェルナンド7世は、1812年の自由主義的なスペイン憲法の採用を拒否。それに反対するラファエル・デル・リエゴ・イ・ヌニェスが率いるリエゴ革命に直面しました。国王は捕らえられ拘束されましたが、遠征するフランス軍とのトロカデロの戦いによって、スペインの自由主義軍が打ち負かされると、再びフェルナンドの絶対的な支配を回復します。

時を同じくして、メキシコ独立革命を鎮圧した王党派や保守派が、反自由主義憲法を唱え独立運動が進みます。この運動を指揮していたのは、スペイン領植民地で生まれた両親をスペイン人とするクリオージョ達。1821年にはクリオージョである、アグスティン・デ・イトゥルビデを首班としてメキシコは独立を達成します。

これを受けて、中央アメリカ地帯でも保守派のクリオージョ達によって独立運動が起き、グアテマラ総督のガビノ・ガインサが独立を宣言。こうして独立した中央アメリカをメキシコが併合します。その後、イトゥルビデはメキシコ皇帝アグスティン1世として即位し、メキシコ帝国が成立しました。しかし、イトゥルビデは翌年の1823年に失脚。中央アメリカのチアパスを除く、旧グアテマラ総督領だった地域は、改めて独立を宣言します。

こうして、1824年1月にグアテマラ・エルサルバドル・ホンジュラス・ニカラグア・コスタリカの5州からなる中央アメリカ連邦共和国が誕生したのです。

中央アメリカ連邦共和国の誕生から終焉

中央アメリカ連邦共和国大統領フランシスコ・モラサンの肖像

中央アメリカ連邦共和国大統領フランシスコ・モラサン

1823年、メキシコから独立した中央アメリカ連邦共和国では、アメリカ合衆国のような連邦制を主張する自由主義派中央集権制を主張する保守主義派が対立しました。

しかし、自由主義派の勝利により、1824年に中央アメリカ連邦共和国が成立します。

初大統領に選出され就任したのは、エルサルバドルの自由主義者マヌエル・ホセ・アルセ。しかし、このことにより保守主義派が多かったグアテマラと、自由主義派の多いエルサルバドル、ホンジュラスとの対立が強まり、内戦が勃発します。

内戦は1829年に自由主義派の勝利で終結し、1830年にホンジュラス出身の自由主義者フランシスコ・モラサンが大統領に就任します。

モラサンは、汚職や癒着の元凶であったグアテマラ大司教の追放や、教会財産の没収など自由主義的な政策を行い、1834年に首都も保守主義派の牙城だったグアテマラ市から自由主義派の牙城だったサンサルバドル市に遷都します。

しかし、1837年にグアテマラでコレラが大流行。すると保守主義者は、コレラの流行は自由主義者による陰謀だという噂を流します。これを信じた原住民のインディオや混血の子孫メスティーソたちを動員し、グアテマラ出身の保守派が自由主義政府に対して反乱を起こしました。

この内戦によって連邦の崩壊が始まり、ホンジュラスが連邦から分離。1839年2月にモラサンが大統領を辞任すると、後継大統領は選出されず、残った構成国5つのうち4つが1840年までに独立。1841年2月に最後のエルサルバドルも独立を宣言しました。

こうして実質1838年に崩壊し、中央アメリカ連邦共和国はわずか16年で終焉を迎えます。

 

その他の中央アメリカのコイン

16年という短い連邦共和国で流通していた貨幣は、どれも発行枚数が少なく希少価値があるコインとされています。

こちらでは、中央アメリカのコインを3点ご紹介します。

中央アメリカ 8リアル銀貨

中央アメリカ 8リアル銀貨

品位:Sv903
直径:27.07 mm
重量:39.0 g

 中央アメリカ8エスクード金貨に刻印されている太陽が中央上部なのに対し、こちらは左下から上る朝日が描かれ、直径39mmです。

裏面は金貨と同じく樫の木が刻印され、コスタリカ・サンホセにて製造したことを表すミントマーク「CR」が入っています。

中央アメリカ 4エスクード金貨

中央アメリカ 4エスクード金貨

品位:Au903
直径:13.5 mm
重量:29.0 g

中央アメリカ8エスクード金貨と、同じデザインの4エスクード金貨。こちらも中央に上る太陽の表情に魅了されてしまいます。直径29 mmなので、8エスクード金貨より少し小さめ

裏面は「樫の木」にスペイン語の「中央アメリカ連邦共和国」の文字。そして、コスタリカ・サンホセにて製造したことを表すミントマーク「CR」が入っています。

こちらも入手困難なコインとして注目があります。

中央アメリカ 1エスクード金貨

中央アメリカ 1エスクード金貨

品位:Au875
直径:18.0 mm
重量:3.37 g

中央アメリカ1エクスード金貨は直径18.00 mmと、8エスクード金貨の約ハーフサイズのコインです。

デザインは8エクスードコインと同様、コレクターから人気を集める「5連山と中央に輝く太陽」、裏面は「樫の木」ですので、やはり人気を集めます。

中央部分に太陽が輝くコイン、そしてわずか16年の国が発行した希少さがあり、こちらもやはりコレクターを引きつけてやみません。

中央アメリカ 1/2エスクード金貨

中央アメリカ 1/2エスクード金貨

品位:Au875
直径:14.0 mm
重量:1.68 g

中央アメリカ 8エスクード 太陽と連山の価格推移

オークションでは頻繁に見かけない貴重な金貨です。その中でも状態の良いものはなかなか出品がなく、オークションで出品を見かけたら是非ともご入札をおすすめします。

XF45

XF45
2023年1月9日$21,600で落札。

AU58

AU58

2021年10月28日に$28,800で落札。

MS61

MS61

2020年1月13日に$33,600で落札。

MS61+

MS61+

2021年10月28日$32,400で落札。

MS65

MS65

2014年1月6日に$176,250で落札。

ファルークコレクションにも見られるタイプで、8エスクード金貨の中でも20枚ほどしか確認されていない試鋳貨タイプとのこと。

アイザック・ルドマン・コレクション・オブ・グアテマラコインより。

 

新世界へと大きな一歩を踏み出した時代に誕生した中央アメリカ・エスクード金貨

いかがでしたか?今回は、中央アメリカ・8エスクード金貨について、まつわる歴史背景をご紹介しました。

長きに渡る植民地支配から自由への脱却の末、誕生した中央アメリカ連邦共和国

人類の歴史の中、新世界へと大きな一歩を踏み出した時代に誕生したこの金貨。中央に輝く太陽の輝きに、深い意味を読み取ることができます。

さまざまな陰謀や野望により、わずか16年という儚い連合国でしたが、現在でも5カ国の絆は雄々しい山々のように強く、経済・治安の分野において再結束が進行しています。

このコインに託された当時の人々の新しい時代への希望と決意に、思いを馳せてしまうのです。

 

中央アメリカ 8エスクード 太陽と連山にご興味はありませんか?

  • 現在、中央アメリカ 8エスクード 太陽と連山お探しの方
  • 中央アメリカ 8エスクード 太陽と連山を保有していて売却を検討している方
  • 何かアンティークコインを購入してみたいけれど、どれを買えばいいのかわからない方

今すぐLINEでギャラリアの専任スタッフにご連絡ください。無料でアンティークコインやマーケットの情報、購入・売却方法など、ご相談を承ります。