中欧の複雑な歴史を語るチェコスロバキア10ダカット金貨!チェコの誇りとして彫られた若き英雄とは

聖ヴァーツラフ像

プラハに残る聖ヴァーツラフ像

チェコスロバキアは、1918年に独立を宣言し1993年に終焉を迎えました。
その歴史からわかるように、ヨーロッパの中央に位置するチェコスロバキアは複雑な歴史を持っています。

独立を宣言したチェコスロバキアが発行した10ダカット金貨。そこには民族としての誇りや独立の喜びが込められているようです。
チェコスロバキアの10ダカット金貨について、時代背景とともに特徴を解説します。 

チェコスロバキア 馬上の騎士 10ダカット金貨

チェコスロバキア 10ダカット金貨 表裏

基本データ

コイン名 チェコスロバキア 馬上の騎士 10ダカット金貨
通称 チェコスロバキア 10ダカット金貨
発行年 1929年〜1938年、1951年
チェコスロバキア
額面 10ダカット
種類 金貨
素材
発行枚数 8,869枚
品位 Gold (.986)
直径 42.0mm
重さ 34.909 g
統治者 トマーシュ・マサリク(1920年〜1935年)、エドヴァルド・ベネシュ(1935年〜1938年、1945年〜1948年)
デザイナー -
カタログ番号 KM# 14, Fr# 4
表面のデザイン 胸にスロバキアの盾を持つチェコのライオン、右側にリンデンの小枝
表面の刻印 REPUBLIKA ČESKOSLOVENSKÁ 10 1933
裏面のデザイン 旗と剣を持った馬上の聖ヴェンセスラウス
裏面の刻印 NEDEJ·ZAHYNOUTI·NÁM·I·BUDOUCÍM +929 B-O·Š
エッジのタイプ ミルド
エッジの刻印

 

チェコスロバキア 10ダカット金貨とは?

ボヘミアやチェコのシンボルとされるライオン

▲ボヘミアやチェコのシンボルとされるライオンは現在も町のモニュメントに残されています。

 コイン市場で高い人気を誇るチェコスロバキアの10ダカット金貨。
いったいその人気の要因はどこにあるのでしょうか。

コインに彫られた若き英雄ヴァーツラフ1世

チェコスロバキアの10ダカット金貨の主役は、表面に彫られているヴァーツラフ1世です。

ヴァーツラフ1世は10世紀に生きたボヘミアの大公でした。
彼が10ダカット金貨のモデルに選ばれたのは、当時のチェコは西寄りの政策をとることが伝統になり、カトリック教会へと近づくことになったためです。

またボヘミア地方において、最初にコインを発行した権力者ともいわれているのがヴァーツラフ1世です。
彼はこの激しい政争の時代に、実の弟によって暗殺されました。
30代という若さで亡くなったヴァーツラフ1世は、死後にボヘミア初の聖人、「聖ヴァーツラフ」となりました。

ちなみに、神聖ローマ帝国皇帝もボヘミア王として体感する場合には「聖ヴァーツラフの王冠」を頭に頂いたといわれています。

現在もチェコの守護聖人として絶大な人気を誇るヴァーツラフ1世、10ダカット金貨には彼の美しい姿がデザインされました。
理想の騎士としての憧憬も集めるヴァーツラフ1世は、馬上で剣を手にして勇ましい姿を見せています。

ヴァーツラフ1世を囲む文字を見てみましょう。

NEDEJ·ZAHYNOUTI·NÁM·I·BUDOUCÍM

これはチェコ語で「我々と未来の人々を守りたまえ」という意になります。

裏面にはチェコの象徴のライオン

チェコの国章は13世紀からの歴史があるといわれています。
10ダカット金貨の裏面に描かれたライオンは、伝統的にボヘミアのシンボルとされています。
ライオンとともに描かれているのが、
チェコの盾と呼ばれているものです。
また右側にデザインされている樹木は、チェコの国花である菩提樹です。

ライオンと菩提樹を囲むように彫られている文字は

REPUBLIKA ČESKOSLOVENSKÁ(チェコ共和国)

です。

通常のコインよりビッグサイズが特徴

通常、コインとして発行されているものは直径がは30mm前後が多く、どんなに大きくても直径が40mmを超えるタイプは珍しいというのが実情です。
一方、チェコスロバキア10ダカット金貨は、直径が42mmもあります。

チェコが誇る守護聖人と象徴のライオンが、大ぶりのコインの中で燦然と輝いているさまが、このコインの人気の要因のひとつといえるでしょう。

 

チェコスロバキア 10ダカット金貨が作られた当時の時代背景

チェコの首都プラハの街並み

▲チェコの首都プラハ。ヨーロッパの近代史に残る美しい町です。

現在は存在しない国、チェコスロバキア。
中央ヨーロッパには複雑な歴史があります。
美しい10ダカット金貨が発行された時代のチェコスロバキアについて、簡単に説明します。

民族性が異なるチェコとスロバキア

チェコスロバキアは、ヨーロッパの中央に位置した連邦共和国でした。
西半分を占めるチェコ共和国はボヘミアとモラビア、そして東に位置するスロバキア共和国から構成されていた国です。
多民族国家であったチェコスロバキアですが、チェコ人が64%、スロバキア人が31%を占める他民族国家でした。

チェコスロバキアというひとつの共和国になったとはいえ、この2つの民族は歴史的にも大きな相違があったとされています。

いずれも西スラブ族に属していたチェコ人とスロバキア人ですが、前者は歴史的に神聖ローマ帝国寄りであり、後者はハンガリー寄りの政策をとってきました。

1918年に独立を宣言したチェコスロバキア

第1次大戦前のチェコとスロバキアは、独立するという目標を掲げていたわけではありませんでした。
1867年に成立したオーストリア・ハンガリーの二重帝国の連邦化を目指していたチェコとスロバキアですが、1918年に帝国が解体。同年10月にチェコスロバキアは、独立を宣言して連邦共和国となったのです。

こうした気概の中で発行されたのが、ヴァーツラフ1世とライオンが刻まれた大型の10ダカットコインでした。
国家としての証であったコイン発行は、そのデザインによって国民を鼓舞する狙いもあったことでしょう。

チェコスロバキアの終焉

1918年に独立国家となったチェコスロバキア連邦共和国ですが、その歴史は決して単純なものではありませんでした。2019年には農地改革、2020年には憲法も発布し、近代的な独立国家としての歩みを開始します。第2次世界大戦中にはナチス・ドイツによって占領され、大戦後に新政府が樹立されます。

1948年以降は社会主義制を布いていましたが、1968年には「プラハの春」と呼ばれる自由化政策が実施され、世界中の注目を浴びました。
この動きは結局、ソ連や東欧諸国の介入で鎮圧されますが、チェコスロバキアではその後も、体制批判の動きが鎮まることはありませんでした。

1989年の終わりに起こった東欧革命をきっかけに、チェコスロバキア内でもチェコ人とスロバキア人の対立が激化。1992年にチェコスロバキアは終焉を迎えました。

1993年1月、チェコ共和国とスロバキア共和国が国家として独立し、現在に至ります。
その後、2019年には農地改革、2020年には憲法も発布し、近代的な独立国家としての歩みを開始します。

 

チェコスロバキア 10ダカット金貨の コインの種類・その他のコイン

75年弱、激動のヨーロッパで共和国国家を築いたチェコスロバキア。
既に存在しない国だけに、この時代に発行されたコインはとくに歴史的価値が高いとされています。

10ダカット金貨のほかには、どのようなコインがあるのでしょうか。
チェコスロバキア発行の人気のコインを紹介します。

10ダカットと同じデザインの5ダカット金貨

チェコスロバキア 5ダカット金貨 表裏

聖ヴァーツラフとチェコのライオンが刻まれた10ダカット金貨とまったく同じデザインのコインが、同時期に発行された5ダカット金貨です。

主な違いはサイズと重さ。
直径42mm、34.909 gの10ダカット金貨に対し、5ダカット金貨は直径が34mm、17.455 g。クラシカルなサイズで、親しみやすいコインです。

聖ヴァーツラフのポーズが異なる1ダカット金貨

チェコスロバキア 1ダカット金貨

10ダカットと5ダカット金貨には、騎乗している聖ヴァーツラフが描かれています。

一方、10ダカットと5ダカット金貨よりも早く発行されていた1ダカット金貨の聖ヴァーツラフは、ポーズが異なります。
1ダカット金貨の聖ヴァーツラフは正面を向き、上半身だけを見せています。軍旗を手にして剣を腰に差した姿は、騎乗姿と比べると平面的ですが力強さがあります。
新しい共和国として立ったばかりのチェコスロバキアに相応しいパワーを感じます。

 

チェコスロバキア 10ダカット金貨の価格推移

1929年〜1938年、1951年に発行されていますが、それぞれ発行枚数が違います。初年号は1,564枚ですが、1937年は34枚と少ないため希少性が高い年号です。

オークションにもあまり出品されないため、ご予算が合えば入札チャレンジしてみませんか?

MS63 1935年

MS63 1935年

2022年1月10日に$40,800で落札。

発行枚数は600枚。

MS64+ 1931年

MS64+ 1931年

2023年1月9日に$31,200で落札

発行枚数1239枚。

MS65 1932年

MS65 1932年

2023年1月9日に$34,800で落札。

発行枚数1035枚。

MS66 1935年

MS66 1935年

2023年5月3日に$48,000で落札。

発行枚数600枚。

 

20世紀に興亡したチェコスロバキアの名コイン!

世界大戦やナチス・ドイツの激動の歴史を超えて生き残り、東欧革命の中で姿を消した共和国チェコスロバキア。

誇り高きスラブ民族のスピリットが凝縮された10ダカット金貨は、精緻なデザインやその大きさでコレクターたちに人気があるコインのひとつです。
当時の人々が満を持して10ダカット金貨に刻んだ英雄は、現在もチェコの守護聖人として絶大な人気があります。

複雑で奥の深いヨーロッパの歴史を思いつつ、ぜひこの美しいコインをお手に取ってみてください。

 

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