デジタル写真がアンティークコイン収集に与える影響
木版印刷でつくられたアンティークコインカタログ。デジタル版のアンティークコインカタログまでの歴史を追っていきます!
アメリカで最初にアンティークコインのオークションカタログが登場したのは1850年代頃
これらの初期のアンティークコインカタログでは硬貨のイラストが木版で刷られていました。木版印刷でのアンティークコインカタログの歴史は古く19世紀。書籍から新聞に至るあらゆる情報媒体のイラストは長きにわたり木版で印刷されており、その期間は数世紀にも及んでいます。
だが、木版で印刷されたイラストでは不十分であったことは明らかです。硬貨の種類はなんとなく判っても、実際の姿とは言えません。ただし、この何年かで実際にカタログに使われた版木に偶然出くわしたことがあるのですが、この版木そのものも収集に値する逸品です。
オークションカタログもコレクションの価値あり
実物写真を使用したオークションカタログは1868年のアメリカで初めて発行されました。E・コーガン が、マッケンジー・コレクション の販売のために作成しました。初期のオークションカタログもまた収集価値は高く
その後の数十年の間に、極めて貴重なコレクションのオークションが数多く行われているためです。
チャップマン兄弟や、T・エルダー、B・マックス・メールなど、多くのコインディーラーによる当時の取引は、重要硬貨の出自を調べる際にかなり有用で知られています。 数年前に、1884年から利用されていたドイツのカタログが4,700ドル(約50万円)で売却されています。高値で取引された主な理由は、1804年銘のシルバー・ダラー(1ドル銀貨)の写真が初めて載ったということ(実際は、写真にするには反射が強すぎると判断され、硬貨を石膏でかたどったものの写真が使われています)。
初期のカタログには、きちんと分類・管理された黎明期の貨幣コレクションが驚くほど大量に掲載されているため、極めて興味深いものが多いです。
これらカタログの写真の質は様々。貨幣本やカタログの販売サイトKolbe and Fanning(コルビー・アンド・ファニングが最近出したオークションカタログは、1911年に行われたT・エルダーのオークションのもので、ウィリアム・ウッディン のコレクションの見本が掲載されています。表記には「極めて珍しく、多才で知られるエドガー・アダムズ(20世紀初頭のアメリカで活躍した貨幣学者・写真家)が丁寧に仕上げた見事なガラス乾板 付き。」とあります。
このカタログの売却価格は2,937ドル(約33万円)。ガラス乾板をカタログに採用したという点では、チャップマン兄弟もよく知られています。 1868年から1970年代頃まで、ほとんどのオークションカタログのイラストは白黒が一般的で、その質は会社ごとに大きく異なります。
著名なコインフォトグラファーであるトム・マルバニーは1995年にPCGS社の写真を撮って手掛けており、経営陣にデジタル写真への移行について相談されていました。
デジタルカメラの低価格化と高品質化によりフィルカメラは衰退
しかし当時のデジタルカメラの価格は1メガピクセルで35,000ドル(当時約300万円)。デジタルへの移行を数年先延ばしにし、2000年にトムが購入したカメラは2,000ドル(当時約20万円)ほどで、2メガピクセル対応のものでした。
現在では、20メガピクセルのカメラのほとんどが500ドル(約57,000円)もしないで購入することができます。 何年にもわたり、トムも含む写真家の多くはデジタル写真の使用に反対してきました。画質に問題があったためです。だが、デジタルカメラの画素数が上がるにつれ、従来のフィルムカメラは貨幣業界では取り残されていくこととなります。
今では、貨幣ビジネスにおいてデジタル写真は重要なツールである。オークションサイトeBayでの硬貨出品、ウェブサイト運営、あるいはカタログ作成などを行っている人なら、高画質のデジタル画像に頼らざるを得ません。
優れた画像の撮影、そしてそれをソフトウェアで操作できるスキルを持つことが重要となっているのだ。世界では日々、ディーラーや個人の販売者によって何千というアンティークコインの画像がオンラインに上げられている。
それらの画像は、ガラケーのカメラで撮影された粗悪なものから、フォトスタジオで撮影された素晴らしい仕上がりのものまで様々だ。 市場で人気がある硬貨で十分に質の良い画像をともなったものが見られるのは、硬貨会社が行っているオンライン販売サイトだろう。いくつかの会社では、誇りをもって、極めて高品質の画像をウェブビジネスのために使用している。
最高品質の取引につながる、写真素材になるために
硬貨の取引の際に、写真がいかに重要な役割を果たすかについて配慮していると述べているともいう。 最高の取引につながるよう、重要硬貨の写真を外部発注で撮影するという会社も数社あります。
そのうちの1社は、最近では、完璧を求めて複数の写真家に依頼していると聞く。硬貨の写真をアップグレードしようと試みているようです。 アンティークコインの取引の際に、硬貨の写真の質が良いことが役立つのは明らかだ。当初は、技術の進歩に伴い、硬貨写真の技巧がどれほど進歩するかは予測不可能でありました。
だが、あるオークションハウスから動画がメールで送られてきたのだが、その動画では硬貨が回転し、その美しさを称えるいい声のナレーションが入っていることも。
こんなことがあると、3D画像や、何かしらの新たに優れた技術革新も、すぐそこまで来ている気がしてきますね。 アンティークコイン収集の趣味の世界には幸運にもデジタル写真という素晴らしいツールが登場しました。そのおかげで、アメリカだけでなく世界中の人々が、スピーディーかつ効率的に貨幣の世界を探訪することができるようになりました。
また、デジタル写真は貨幣学を学ぶにも極めて有用です。この20年ほどでアンティークコイン収集の趣味が大きく発展した理由の一つに、デジタル写真の発達があると考えられます。
スマートフォンカメラの最近の進歩は目覚ましく、ディーラーの生産性にも大きな影響を与えています。貨幣取引フロアでアンティークコインのベストショットを撮影し、瞬時にその画像をクライアントに送ることが可能だからです。
こういったツールは貨幣業界のソーシャルメディアサイトでもかなり効果的に利用されています。コストがかからず、質も良く、簡単に操作できることで、貨幣のプロたちにとっても公平な環境が整っといえます。新たな技術のおかげで、現在、世界中で多くのアンティークコインビジネスが行われるようになったのです。
だが、様々なツールが利用可能だとしても、デジタル写真の撮影や編集は芸術の域にある。デジタル写真の技巧を学びたいと思う人は、ANA のサマーセミナーというものがあります。
毎年夏に、コロラドスプリングスでトム・マルバニーを始めとする指導者が教室を開いています。一週間にわたる教室では、デジタル写真と編集の基礎を学ぶことが可能です。質の高い硬貨の写真を撮りたいが技術がいまいちだというコレクターやディーラーは、NGCの画像サービスの利用を検討してみると良いでしょう。NGCのフォトプルーフ やフォトビジョンの画像は業界随一の品質と言われています。