イギリス君主として最長在位記録を持つ、現女王エリザベス2世
現イギリスの君主、エリザベス女王を誰もが映像で見たことがあるかと思います。 波乱の少女時代を送り、世界大戦を乗り越え、歴代イギリス君主の中で最長在位期間そして在位中の世界中の君主の中でも、最も長い君主でもあります。
存命ながら多くの有名なコインがあり、エリザベス女王が送ってきた人生をご紹介していきたいと思います。
大戦の中で育ったエリザベス2世
第二次世界大戦が始まる13年年前の1926年4月21日に、後のジョージ6世の第一子・長女としてエリザベス2世は生誕いたしました。 第一次世界大戦が終わり、世界の中心はイギリスからアメリカが国際的な存在感も増した時期でもあります。
10歳のときには(1936年)、ヒトラーによるラインラントの再武装を行うなど、ヨーロッパは次の大戦争にむかってゆっくりと進む時期に少女時代を過ごしたのです。家族からは“リリベット”の愛称でとても可愛がられ育てられました。
その後、第二次世界大戦が始まると、カナダへ疎開することも提案されましたが、最後まで王や王妃と供にイギリスで人々を鼓舞しました。 当時のイギリス王は映画『英国王のスピーチ』でも有名な父ジョージ6世で、映画でも描かれていましたが、国家運営はチャーチルに任せながらも、王族として国民の士気を高め、イギリスに最終的勝利をもたらすために尽力していました。
若き、まだ十代半ばのエリザベスもそれを補佐し、時には単独での公務もこなしました。エリザベス2世として女王となるのは父が亡くなった1952年ですが、それ以前から第一位後継者として代役を務めていました。
昔身につけたスキルで驚かせたというか怯えさせたエリザベス2世
第二次大戦中、エリザベス2世は王族の女性としては変わった経歴を身につけました。それまでは肩書きとしてだけ与えられるのが普通だった軍属を、実際に経験したのです。確かに近衛連隊の名誉連隊長、という名ばかりの隊長職なども持ちましたが、それだけでなく他の学生達と共に軍に入って訓練を受け、軍用トラックの運転手として従軍しました。そこで身につけたドライビングテクニックが、数十年後にちょっとした恐怖をもたらします。
1998年。72歳のエリザベス女王は、同年代のサウジアラビアのアブドラ皇太子を城に招きました。そして、敷地を案内しますといって皇太子を乗せた車を、女王自らが運転したのです。サウジアラビアでは女性の運転が禁止されています。ましてや、女王が運転するとは思いもよりません。その上エリザベス女王はスピード狂だったようで、おしゃべりしながらかっ飛ばしたとか。アブドラ皇太子は気が気でなく、「まえ、前見て運転してよ!」という感じだったようです。
我々と同じ時代を生きるイギリス女王
現在92歳というエリザベス女王の生きた時代というのは、歴史的な尺度で見れば、我々の同時代ということになります。 冷戦、9.11、有人宇宙船、人口が70億人を超え、インターネットやスマートフォンの進化などなど、多くの歴史の変遷を共にしています。 またEUへの参加や離脱の決定など、現代において話題になった我々にとって馴染みのある出来事も共有しているのです。
ちなみに、競馬とも縁の深い人だったりします。王権を行使してイギリス競馬を保護し発展させました。馬主としても有名で、1954年と1957年には年度獲得賞金で一位を取りました。イギリス王は競馬を好み、馬主となった人も多いのですが、在位中に二回も一位を取ったのはエリザベス2世だけとされています。親近感が湧くというか、遠い世界の人ではありながら、さらに遠い世界の歴史上の人物よりは身近に感じる気がしますね。
何種類もある、エリザベス2世のコインたち
歴代でも最長の在位期間を誇るエリザベス2世の肖像は、数え切れないほどたくさんのコインに刻まれています。金貨はもちろん、銀貨に銅貨、ニッケル貨なども作られています。
即位した1950年代からはじめ、つい最近に至るまで、様々なコインに描かれ続けています。2017年には、ピストルッチ作で有名な『セントジョージの竜退治(聖ゲオルギウスの竜退治)』のオリジナルデザインが復刻され、その表側もエリザベス女王の肖像となっています。戴冠記念や成婚記念などもいくつものバージョンがあります。しかも、エリザベス2世はイギリスの女王であるだけでなく、カナダやオーストラリア、ニュージーランドなどイギリス連邦諸国の女王も務めているため、発行年や発行国も様々です。エリザベス女王のコインだけでカタログが作れそうですね。
史上類を見ない戦争を超えて
現代人ということで親しみ深い女王であるエリザベス2世ですが、その在位期間は非常に長く、しかも平穏な人生でもありませんでした。史上類を見ない大きな戦争をくぐり抜け、やっと訪れた戦争を避けようとする時代を女王として後見してきた人物です。その背景を知ると、テレビに映る姿を見るときにも、今までとは違った視点で見られるのではないでしょうか。