フランスのエンジェル金貨とは?通称「ラッキーエンジェル」ベル・エポックの精神を感じるアンティークコイン

天使やエンジェルに関連するアイテムの人気ぶりは、普遍といってよいかもしれません。

本記事でご紹介するフランスの100フラン金貨には、「エンジェル金貨」という別名があります。

コインのコレクターだけではなく、エンジェルグッズを愛好するかたがたにとっても魅力的なコインのひとつ。ベル・エポック(「美しき時代」の意)と呼ばれた時代の洗練を、十分に感じることができます。

エンジェル金貨が発行された当時のフランスの歴史も含め、エンジェル金貨の魅力についてご紹介いたします。

 

フランスエンジェル金貨

フランスエンジェル金貨100フラン

基本データ

コイン名 フランス 100フラン金貨
通称 フランス エンジェル金貨
発行年 1878年-1906年
フランス(第三共和制)
額面 100フラン
種類 金貨
素材
発行枚数 30,067枚
品位 Auu900
直径 35 mm
重さ 32.25g
統治者 アルベール・ルブラン
デザイナー Augustin Dupré
KM # 832
表面のデザイン 憲法を書き込む守護天使(エンジェル)
表面の刻印 RÉPUBLIQUE FRANÇAISE CONSTI-TUTION A. B. Dupré
裏面のデザイン フランス革命の指針「自由、平等、博愛」と年号、Aはパリミントを意味する
裏面の刻印 LIBERTÉ ÉGALITÉ FRATERNITÉ100FRANCS (年号) A
エッジのタイプ レタリング
エッジの刻印 **** DIEU * PROTEGE * LA * FRANCE

 

フランスのエンジェル金貨ってどんな金貨?

絢爛たる芸術や宮廷文化で知られるフランス。そのフランスで発行された100フラン金貨は、アートの国のコインにふさわしい美しさを有しています。エンジェル金貨の特徴と魅力に迫ってみましょう。

ラッキーアイテムとして人気!

エンジェル金貨は、1878年から1906年にかけて発行されたコインです。

当時のフランスはベル・エポック(Belle Époque)と呼ばれる文化が花開き、きらびやかな時代を謳歌していました。

100フラン金貨の主役ともいえる天使の優雅さは、造形美では定評のあったコイン彫刻家オーギュスタン・デュプレによるデザイン。「ラッキーエンジェル」や「守護天使」と呼ばれることもある、美しい天使が主役です。

この天使にはどんな意味があるのでしょうか。コインに刻まれた天使はペンと紙を手にして、新しい憲法を書き記しています。

後述するように、当時のフランスはさまざまな政体を経てようやく安定期を迎えようとしていました。天使が書き記す憲法によって、国が平和に治まることを希求したのかもしれません。

またある伝説では、コインをデザインしたオーギュスタン・デュプレが、恐怖政治時代にこの金貨をポケットに入れていたことでギロチンにかけられずに済んだともいわれているそうです。

金色に輝く美しい天使、確かに持つ人を守ってくれそうな神秘も秘めています。

天使の左右に描かれたものは?

中央の天使の左右には、なにがデザインされているのでしょうか。向かって右は、雄鶏です。この雄鶏は「ガリアの雄鶏」と呼ばれるフランスのシンボル。

古代ローマ時代、現在のフランスはガリアと呼ばれていました。その時代から、雄鶏はガリア地方(現フランス)の象徴であったのです。

向かって左にあるのは、ファスケスと呼ばれる権力の象徴です。何本もの木材と斧を束ねたもので、日本人の私たちにはあまりピンときません。しかし西洋では、ファスケスは古代ローマ時代から公的権力の証であり、ファシズムの語源にもなりました。

憲法とフランス国家、そして権力。3つの要素が、この美しいエンジェル金貨に凝縮しているのです。

金貨に記された文字の意味は

コインを裏返すとそこには、シンプルに花輪に囲まれた100の文字が彫られています。

「LIBERTE EGALITE FRATERNITE.」の文字は、「自由、平等、友愛」の意味を持つ標語です。これは、フランス革命時のスローガンでもありました。

またエッジ部分には「DIEU PROTG LA FRANCE」と彫られています。これは「神はフランスを守護する」の意。近代国家として立とうとするフランスの心意気が、その文字から感じとれます。

 

フランスのエンジェル金貨が作られた当時の時代背景

エンジェル金貨が発行された時代に建てられたグラン・パレ

エンジェル金貨が発行された時代に建てられたグラン・パレ。1900年にパリで開催された万博に合わせて作られました。

フランスの歴史といえば、かの有名なフランス革命があり、マリー・アントワネットナポレオンといった人物の名を思い出します。

フランスの歴史は非常に複雑で、美しいエンジェル金貨誕生の背景がなかなか見えてきません。エンジェル金貨が生まれた当時のフランスの事情を、わかりやすく説明いたします。

エンジェル金貨が生まれた時代、第三共和政までのフランス

現代のフランスは、第五共和制を敷く共和国です。第三共和政は、1870年から1940年までのフランスの政体でした。そこにいたるまでのフランスの歴史を、簡単に説明してみます。

  1. ローマ帝国の支配下にあった古代
  2. フランク王国、およびフランス王国となった中世
  3. フランス革命後の第一共和政(マリー・アントワネットの時代)1792年~
  4. ナポレオンによる第一帝政 1804年~
  5. ナポレオン失脚、復活した王政 1814年~
  6. 二月革命により王政から第二共和政へ 1848年~
  7. ナポレオン一世の甥、ナポレオン三世による第二帝政 1852年~
  8. ナポレオン三世が失脚、第三共和制へ 1870年~

ご覧いただければ一目瞭然ですが、フランス革命以後のフランスは政体が目まぐるしく変わりました。日本でもよく知られているマリー・アントワネットは、革命時代を生きた悲劇のヒロインのひとりです。

フランス革命以後のフランスは、ナポレオンの台頭や他の欧州の列強との争いもあり、未曽有の混乱期に突入します。エンジェル金貨が生まれた第三共和政にいたってようやく、安定の兆しが見えてくるのです。

その第三共和政は1940年にナチス・ドイツの圧力に耐えられず崩壊、エンジェル金貨にデザインされた共和国憲法も破棄されることになるのです。

第三共和政の特徴とは?

よほど世界史に興味がないかぎり、フランスの第三共和政について詳しく知る方は少ないかもしれません。

第三共和政の最大の特徴は、フランスにおける議会制民主主義の確立に一役買った点にあります。

それまで政体がなかなか安定しなかったフランスは、第三共和政以後は共和国としての道を模索し、欧州の強国となっていくのです。

およそ70年に及んだ第三共和政は、左右両翼による運動が活発で、内閣が100回以上交代するという変動もありました。

しかしフランス国内の初等教育制度の確立や産業の発達など、見るべき点も多いといわれています。第三共和政によって、下層階級の青年たちも社会のなかで昇進していく風潮も生まれました。

政権の交代が激しかった第三共和政ですが、世界大戦前夜におけるフランスに、数十年の平和をもたらしたといえるでしょう。

大輪の花を咲かせたベル・エポック

第三共和政については知らなくても、ベル・エポックという言葉を耳にしたことがある方は多いかもしれません。

フランスが第三共和政であった時代、つまり19世紀末から20世紀の初頭、文化の分野にはベル・エポック(フランス語で「よき時代」)が到来します。

演劇やシャンソン、美術などが栄え、私たちがイメージする華やかなフランス像は、この時代に確立されたといっても過言ではありません。

パリ社交界も大いににぎわい、ベル・エポックは第三共和政の最盛期を具現化したのです。

 

フランスのエンジェル金貨の現在の価格相場

混乱の時代からようやく脱却しようとしていたフランス。その第三共和政の時代に発行された100フランエンジェル金貨は、どのくらいの価値があるのでしょうか。エンジェル金貨の相場についてご説明いたします。

発行数が少ないエンジェル金貨

第三共和政は70年ほど続きましたが、100フランエンジェル金貨が発行されたのは1878年から1906年の30年ほどです。

発行枚数が不明な年もありますので、正確な枚数はわかりませんが、1年で数百枚〜数万枚の発行です。希少性が高いコインで、購入は決して簡単ではないというのが実情です。

ずばり、そのお値段はどのくらいになるのでしょうか。

 

100フランエンジェル金貨の価格推移

PR62 Essei

PR62 Essei

2021年3月25日に$168,000で落札。

MS64+ 1894年

MS64+ 1894年

2016年8月11日に$56,400で落札。

MS63

MS63

2018年8月17日に$33,600で落札。

MS62

MS62

2018年8月17日に$15,600で落札。

コレクターのあいだでも人気が高いエンジェル金貨

コインのデザインは多岐にわたりますが、19世紀末から20世紀初頭に発行されたコインの中でも、エンジェル金貨は特に人気が高いもののひとつです。

コインの天使が持ち主を守ってくれるような物語性があるのが理由のひとつですが、ベル・エポックと呼ばれたフランスの古き良き時代を想起させる美しさが、多くの人を魅了しているのかもしれません。

エンジェル金貨のまとめ

フランスの第三共和政時代に発行された100フラン金貨は、エンジェル金貨という通称で人気があります。「ラッキーエンジェル」や「守護天使」の名でも知られる、フランスが混乱の時代を抜けようとしていたベル・エポックの雰囲気も感じさせてくれます。優しくも力強い天使が宿るエンジェル金貨、持ち主に幸運をもたらしてくれそうな美しさを有しています。

エンジェル金貨の購入を考えている方は、以下のギャラリア公式LINEよりご相談ください。