オーストリア=ハンガリー帝国、最後皇帝フランツ・ヨーゼフ1世の皇后、エリザベートの数奇な人生

雲上の女神アンティークコイン

コインコレクターの中では知らない人はいない、フランツ・ヨーゼフ1世とエリザベート。そう『雲上の女神(1908年)』です。 二人が過ごした19世紀ヨーロッパは、まさに大激動。

神聖ローマ帝国を引き継ぎ、広大な領土を持つオーストリア・ハンガリー帝国で68年にわたって皇帝を務めた「フランツ・ヨーゼフ1世」 その皇后であり、君主制を否定し帝国の資産を湯水のように使うなど自由奔放な絶世の美女「エリザベート」 今回は「雲上の女神」で知られる二人についてご紹介していきます!


外交と内政との敗北によって誕生した、オーストリア=ハンガリー帝国

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1806年、フランス皇帝ナポレオンに敗れた神聖ローマ帝国は、ナポレオンによって解体されました。 破れたフランツ2世は、先立ってオーストリア帝国を創設し、その皇帝に即位しています。以後、ハプスブルク家はオーストリア皇帝として、広大な領土の統治者を続けました。 (オーストリア大公国やボヘミア王国・ハンガリー王国などの同君連合国家群だった時代、オーストリア帝国からオーストリア=ハンガリー帝国までをあわせて、ハプスブルク帝国と総称されます。)

プロイセン、フランスなどの列強国が強大化し、様々な周辺国と国境を接する広大な領土を維持するための外交は、難しくなってきました。 また周辺国とのパワーバランスも変化したために、マジャル人(ハンガリー)、チェコ人など多様な民族をまとめていく内政も弱体化していきました。

1867年、プロイセンとの戦いに敗れ、国内統治のために妥協を必要とした結果、 ハンガリー人とのアウスグライヒ(妥協)を実現させ、ハンガリーに自治権を与えることでオーストリア=ハンガリー二重君主国(オーストリア・ハンガリー帝国)が成立しました。


自由主義革命によって生まれた、絶対君主"皇帝フランツ・ヨーゼフ1世"

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1848年、フランス王国で発生した2月革命がヨーロッパ中に飛び火し、オーストリア帝国では3月革命が発生。 混乱の中、前任の伯父フェルディナント1世の退位が決まり、フランツが皇帝"フランツ・ヨーゼフ1世"として即位しました。

なぜ父がフランツ1世にもかかわらず「フランツ2世」ではなかったのか。 急進的な改革を行い、自由主義者からも敬愛される神聖ローマ皇帝ヨーゼフ2世を思い出せるとして、革命勢力をなだめようとする意図があっと言われています。

しかし、ハプスブルク家に伝わる帝王学を徹底的に叩き込まれたフランツ・ヨーゼフ1世は、君主は神によって国家の統治権を与えられているという"王権神授説"を強く信じていました。 そのため、19世紀高まっていた自由主義や国民主義で起きた革命や暴動に対して対抗する立場をとることになり、多くのウィーン市民は失望したと言われています。

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そんな失望の中生まれた皇帝も68年に及ぶ長い在位で、オーストリア帝国(オーストリア=ハンガリー帝国)の「国父」とも称され、晩年は「不死鳥」とも呼ばれ、オーストリアの象徴的存在でもありました。 広大な領土を持つ帝国の長期期間の統治を実現するには、単なる支配だけではなく、国民の信頼や敬愛がなくてはとてもできないことです。 特に晩年は、列強国との緊張関係や第一次世界大戦などの不屈の精神から、国内からは慕われてると言われています。 ちなみに絶対君主である彼も、母であるゾフィーの意見には逆らえなかったとか。。。


現在のウィーンを整備した、フランツ・ヨーゼフ1世

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世界遺産にも登録され街全体がとても美しいウィーンは、マリアテレジア女帝時代に栄え、フランツ・ヨーゼフ1世の治世時代に整備されました。 古い城壁などを壊し、1857年大きな都市開発プロジェクトがスタートし、現在の町並みになりました。


フランツとは真逆な"皇后エリザベート"

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エリザベートの姉であるヘレーネとのお見合い先で出会ったことがきっかけとなり、エリザベートと結婚。 バイエルンからやってきたエリザベートは、厳格なフランツとは真逆で、自由な性格の持ち主でした。 当時のヨーロッパ宮廷一といわれた美貌に加え、皇后らしくない自由な性格のため、「シシィ」の愛称で国民からも慕われました。

散財癖はともかく、、、皇帝権の削減や共和制の推進をし、 夫が反対していた、ハンガリーの自治権を認めたアウスグライヒ(妥協)を締結するにあたっては陰の推進者の役割を果たしたと言われています。 そのため、これまで支配や分割などの多くの苦難をおってきたハンガリーに自由で平和な国家の基盤を作った人物として、多くの方に愛されています。


世界で最も美しいとされるコインの一つ「雲上の女神」

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1908年皇帝の在位60年を記念して作られた金貨「雲上の女神」。 フランツより先に暗殺された皇后エリザベートが、雲の上からオーストリア・ハンガリー帝国そしてフランツ・ヨーゼフ1世を見守る姿が描かれています。

その天国からの願いも届かず、1916年にはフランツ・ヨーゼフ1世が、1918年にはオーストリア・ハンガリー帝国が世界から姿を消しました。 しかし、その二人を描くコインは、これからも世界で最も美しいコインとして、価値を上げ続けていくことでしょう。