アメリカコインの収集を始めよう:コレクターを始める前に知っておくべき基礎知識
私はよくコインの収集を始めようとする方から、こんな質問を受けます。
- 何を収集するべきでしょうか
- 今買うのにベストなコインは何ですか
そこで私が「その質問にはシンプルに答えることはできない」と言うと、多くの人は怒ってしまいます。それでも、私がそう答える理由は「コインの購入にかけられる個人の予算と興味によって異なる」からです。
それぞれのコレクターは、コインに「多額の」金を支払う前に、コインについての文献を読み、学び、調べ、少なくとも高品質なコインの画像をじっくり見て、計画を立てるべきです。
ここでは、ジョン・アルバニーズ(John Albanese)と、クリス・オイスター(Kris Oyster)からの意見を参考に「コイン収集の初心者が知っておくべき基礎知識」を紹介します。
過去の私のコラムでは、1つあたり、250ドルから1000ドルのコインの購入を考えている初級〜中級レベルのコレクターへのアドバイスに焦点を当てました。
今回はより一般的、かつ全ての所得レベルのコインコレクターに当てはまる内容です。1つあたり数ドル〜数千ドルのコインの購入を考えているコレクターにはきっと役に立つ内容だと思います。
これから説明する手順は非常に一般的で、どのようにコイン収集をはじめるべきか戸惑う初心者に向けた内容となっています。
私は、世界中の多くのコインに優れた価値があると考えていますが、今回は、その中でもとくにアメリカコインに焦点を当てたアドバイスです。
実際、アメリカのほとんどのコレクターは、アメリカコインの収集を好みます。また、世界のコインや植民地時代のコイン、メダルの収集はより難しく、情報が少なくなります。それに対して、アメリカコインに関する貴重な文献や価格情報を見つけるのは非常に簡単なのです。
1.コイン収集に使う「予算」を決める
コイン収集は1年という短期間で行うのではなく、長期間で考えるべきです。コレクターは、10年以上に渡って、毎年いくらコインに費やすことができるか、決める必要があります。
どれだけコインに使いたいか、または使うことができるのか分からないのであれば「年間にコイン収集に利用できる最少金額」を決めましょう。
よりコイン収集に関心が高まったり、収入が増えたりした時に、コイン収集に費やす金額を増やせば良いからです。重要なのは、コレクターが実際にコインに費やすことのできる金額を、現実的に考えることです。
コレクターは、退職後、医療、家族の緊急事態に必要となる可能性のあるお金を、コイン収集に使うべきではありません。
これは当然のことのように聞こえるかもしれませんが、コレクターが自身の使うことのできる予算を超えてコイン収集に費やしてしまうことは、よくあることなのです。
コインへの情熱は、支出の暴走に繋がる可能性があることを覚えておいてください。
2.コインについて知る
クリス・オイスターは「初心者はコインを買う前に、そのコインについて知ることに時間を費やすべきだ」と強調しています。
オイスターはDGSEの専門家集団のマネージング・ディレクターの経験があり、coinweek.comやコインに関する本を読むことをおすすめしています。
クリスは次のことを推奨しています。「レッドブック(Redbook)」というホイットマン(Whitman)が毎年発行するアメリカコインのガイドブックを購入し、価格だけでなくコインの歴史、種類について読み、最初にコインに関する基本を学ぶことが重要です。
コインの種類、日付、ミントマークを調べ、コインがどのように作られたのかを知りましょう。収集するコインをすぐに決めるのではなく、時間をかけることが大切です。外に出て探索し、お金を惜しまずに一般的なコインの知識を付けましょう。
ジョン・アルバニーズも、初心者にレッドブックの購入をおすすめしています。彼は1987年にNGCを創設し、2007年にはCACを創設しました。レッドブックを購入したら、各シリーズをじっくりと見て、どの種類のコインが目を引き予算に合うかを確認することをおすすめしています。
さらに1970年から1977年までの古いレッドブックを入手することも推奨しています。コイン関連の本を売買している専門家やインターネット上のベンダーから購入することができます。
また、1950年代のレッドブックも見つけられればそれも役に立つと述べています。
アルバニーズ曰く、ほとんどのコレクターは苦労して稼いだお金を値段相応の価値を持つコインの購入に当てたいと考えており、購入できる最高のグレードを購入するのではなく、本質的な価値に見合った値段のコインを購入するべきだとしています。
PBGSとNGCのポップレポートとレジストリバブルによると、1970年代に5ドル未満で販売され、今日では5000ドル以上で販売されているコインが沢山あり、これらのコインは避けるべきだとアルバニーズは述べています。
値段が今日の本質的な価値に見合っていないコインの例として「MS-67」と「MS-68」のワシントン・クウォーターを挙げています。
筆者はレッドブックがそれほど役に立つとは考えていません。インターネットの時代では、以前ほど重要ではなくなってきています。
インターネット上にはたくさんのコインに関する情報があり、誤解を招く情報やコイン関連詐欺があるとは言え、初心者は数ヶ月間閲覧すれば1セントも費やさずに多くの情報を得ることができます。
coinweek.comの過去の記事やコラムに加え、PCGSやNGCのウェブサイトには多くの情報が載っています。
大手オークション会社では、過去のオークションの情報が落札価格と画像と共に載っています。Heritage、Stack’s + Bowers、Goldbergs、DLRCのウェブサイトには、豊富な情報が載っていますが、初心者は専門家に相談しながらそれらの情報を解釈していく必要があります。
お金を使う前にたくさんの情報を読み、コインについて知ることは重要です。
私はスコット・トラバース(Scott Travers)の意見にはいくつか賛成できず、短期的な投機もすすめませんが、トラバースの古典的な本である、コイン・コレクターズ・サバイバル・マニュアル(The Coin Collector’s Survival Manual)が好きでした。
第7版は2010年11月に出版されています。初心者は最初少し混乱するかもしれませんが、時間と共に理解が進み、多くの貴重な情報を得ることができます。
インターネット上のコイン関連サイトを(できれば私の記事を含めて)1ヶ月以上閲覧した後、可能であれば1988年に発行されたウォルター・ブリーン(Walter Breen)のアメリカコインの体系的な百科事典を入手できると良いでしょう。
この巨大な本には多くの間違いが含まれ、また資料の一部は古くなっていますが、非常に貴重な情報とアメリカコインの種類に関する優れた議論が特集されています。
残念ながらブリーンの1988年の百科事典はバラバラになっていますが、ほとんどくっついていないこの本に数ドルを費やす初心者は、良い買い物をしていると言えるでしょう。
プルーフコインに関心のあるコレクターにとって、プルーフコインのために出版されたとも言える1977年のブリーンの百科事典は、プルーフコインに関する唯一の価値のある本です。間違いが含まれますが、非常に素晴らしい内容で、ブリーンの最高傑作といっても過言ではありません。
書店、図書館、フリーマーケットで見られるアメリカコインに関する本は、コインの知識がほとんどない作家が書いたものが多いです。
有能な著者は、書いているトピックについて実際よりも精通しているように見えることがあります。例えば、私がスポーツ記念品について話す時、実際よりも知識が豊富に聞こえることがよくあります。
おそらく私が野球のグローブ、ジャージ、バット、サイン入りのフットボールについてあまり知らないということに、誰も気がつかないでしょう。
検索と学習を続けているうちに、初心者は知識のある著者によって書かれたコインに関する本に常に出くわします。初心者には、ジェフ・アンビオ(Jeff Ambio)とQ・デビッド・バウアーズ(Q. David Bowers)の本が非常に役立つでしょう。
3.モダンコインではなく、古いアメリカコインを購入する
私は、現代の抽象芸術のように、モダンコインは大部分が流行であり、確かな伝統に基づいていないと考えています。
モダンコインは文化的なルールを欠いており、一部はアメリカの財務省と米国議会の意思決定者の気まぐれに起因します(国にとって有益な決定であることが多い)。私は昨年、1933年と34年が、古典コインと現代コインの真の境界線である理由について、2部構成のシリーズを書きました。1933年以降に鋳造されたアメリカコインが、それ以前に鋳造されたコインよりもはるかに一般的であることは明白です。
初心者が、コインに「多額」と思える金額を費やそうと考えている場合、それは少なくともレアなコインでなければいけません。
最近鋳造された「シルバー・イーグル」コインは、他のコインとほとんど同じように見え、インターネットから数秒で注文できます。このコインは個性が無く、収集する伝統はほとんどありません。
さらにアメリカの「シルバー・イーグル」は希少でなく、多くのコイン専門家はそれを真のコインだとみなしていません。大量生産されたものではなく、希少価値が高く個性のあるコインを選ぶことは、理にかなっています。
またコイン収集をはじめたばかりのコインコレクターは、高度な専門家が「意味がある」とみなすコインを収集するべきです。それは必ずしも高価なコインである必要はありません。
ジョン・アルバニーズは、ほとんどの場合1934年以前に発行されたコインに限ったほうが良く、1933年以降に発行されたコインを購入する場合はトップポップコインやMS-66より高いグレーディングとして認定されたコインは避けるべきだとしています。
さらに、MS-70やProof-70グレード認定に対して、5倍または10倍のプレミアムを支払う必要は無いと述べています。
一部のコレクターは、現代コインは古典コインよりも安価な印象を持っています。私のオークションレビューが初心者にそのような印象を与える可能性は理解していますが、実際は高価でない1934年以前のコインが多数存在します。
Numismedia.com、PCGS.com、およびRedbookでの見積もりを見てみると、1934年以前に発行された少額で購入できるコインが多数あることがわかります。すべての収入レベルのコレクターが購入でき、自然な色調の希少な1934年以前のコインが存在します。
このようなきちんとしたコインを購入するのに、数ドルしかかかりません。
コイン鑑定機関の認定コインを購入すべきか?
初心者はPCGSまたはNGC認定のコインを購入するべきでしょうか?現代コインに関しては、この質問はトリッキーだと言えます。
私が皆さんに1934年以前に発行された古典コインの購入をおすすめする通り、このセクションの議論は1934年以前に発行されたアメリカコインに関連します。
繰り返しになりますが、植民地時代のコイン、メダル、トークンや世界のコインは異なる問題であり、分けて考える必要があります。
ジョン・アルバニーズは、3000ドル以上のほとんどのアメリカコインは、NGCまたはPCGSによって網羅されていることは事実で、もしあなたが専門家でなくPCGSまたはNGC認定を受けていない3000ドル以上のコインを購入する場合、それは賭けをしているようなものだと述べています。
つまり、PCGSまたはNGCの認定を受けていない3000ドル以上のアメリカコインを購入するのは非常に危険だということです。
初心者が安価なコインを購入するか、高価なコインを購入するかに関係なく、正直な専門家のアドバイザーを見つけることが重要だとアルバニーズは強調しています。正直で無い専門家やディーラーも存在します。
クリス・オイスターは、「評判の良いディーラー」を見つけることが重要であることに同意しています。初心者は特にインターネット上で耳障りのいい取引を提供する売り手に注意する必要があると強調しています。
コインは市場価格で販売され、市場価格以下で取引されることはありません。さらに、金相場より10%以上高い価格の金貨、及び500ドルを超える全ての銀またはニッケル硬貨は、PCGS、NGCまたはANACSの認定を受ける必要があると主張しています。
私の見解では、境界線は250ドルになるはずです。1934年以前のアメリカコインを250ドル以上で購入しようと考えているコレクターは、すでにPCGSまたはNGCの認定を受けているコインかどうか確認する必要があります。
私は、コイングレードのインフレとコイン・ドクタリングについて書きました。すべてのPCGSまたはNGC認定コインが望ましいとは誰も言っていません。しかしPCGSまたはNGC認定を受けていない250ドル以上のアメリカコインは、深刻な問題を抱えているか、売り手によって間違った価格を伝えられている可能性があります。
実際、そのようなコインの多くはPCGSまたはNGCによって拒否され、採点不能とみなされたものだからです。
コインの購入者は認定サービス以外の要素も考慮する必要がありますが、PCGSまたはNGCの認定済みコインは、認定されていない250ドル以上のコインよりもはるかに望ましく、価値のあるものだと言えます。
つまり、初級または中級のコレクターがPCGSまたはNGC認定のコインを100枚購入し、それと別にタイプ、希少性、品質において似通っている非認定コインを100枚購入した場合、100枚の認定コインのグループ(平均)は、全体的な品質とオリジナリティーの点で、非認定グループよりもはるかに優れていることになります。
250ドル未満のコインを購入する場合、認定コストがメリットを上回ってしまう可能性があります。そのようなコインについてたくさん調べて、専門家に質問することが重要です。
初心者は自分のコイン収集予算の中から一部を費やして、コインの物理的特性についての基本的な理解を深めるべきです。経験と努力によって知識が得られ、格付けスキルの向上が期待できます。
繰り返しですが、専門家とのコミュニケーションを取ることが重要です。
アメリカコインの収集をはじめるのは簡単です。予算を立て、たくさんの文献を読み、考えて調べ、専門家に質問してからコインを購入しましょう。
本記事は、『COINWEEK』の翻訳記事です(掲載許可有り)。元記事は以下のリンクより確認できます。