英語が話せなかった⁉️イギリス社会の安定をもたらしたジョージ1世とコレクターにも大人気の5ギニー金貨をご紹介
▲イギリス王に即位したころのジョージ1世の肖像
イギリス王室に代々伝わる名前のひとつが「ジョージ」です。
これは、1714年にジョージ1世がイギリス王となったことに由来します。
イギリスが産業革命へと向かう時代に王となったジョージ1世は、さまざまな逸話や功績を残しました。
そして現在、ジョージ1世の横顔が刻まれた5ギニー金貨は市場でも大変な人気を誇るコインになっています。
ジョージ1世と彼が生きた時代、そして5ギニー金貨について、詳しく解説します。
ジョージ1世 5ギニー金貨
基本データ
コイン名 | ジョージ1世 5ギニー金貨 |
---|---|
通称 | 5ギニー金貨 |
発行年 | 1716-1726 |
国 | イギリス |
額面 | 5 Guineas |
種類 | 金貨 |
素材 | 金 |
発行枚数 | - |
品位 | Gold (.9167) |
直径 | - |
重さ | 41.9 g |
統治者 | ジョージ1世 |
デザイナー | - |
KM | KM # 547、 Sp # 3626 |
表面のデザイン | 右向きのジョージ1世の胸像 |
表面の刻印 | GEORGIVS·D:G·M·BR·FR·ET HIB REX F D(神の恵みによるジョージ、イギリス王、フランスとアイルランド、信仰の擁護者) |
裏面のデザイン | 中央にガーター勲章、十字に並んだ王冠をつけた盾、斜めに国章をあしらった王笏 |
裏面の刻印 | BRVN ET·L·DVX S·I·R·A·TH ET·EL·17 16(ブランズウィック公およびリューネブルク公、神聖ローマ帝国大財務官および選帝侯) |
エッジのタイプ | レタリング |
エッジの刻印 | SECVNDO |
ジョージ1世 5ギニー金貨とは?
▲18世紀中ごろのロンドン
人気が高く入手が難しいといわれるジョージ1世の5ギニー金貨とは、どのようなコインなのでしょうか。
コインの特徴を解説します。
人気の5ギニー金貨のなかでも希少性が高いコインのひとつ
イギリスで5ギニー金貨が発行されたのは、1663年のことでした。
ギニアで発掘された金で作られたことから、ギニーという通貨単位がつけられています。
現在、イギリスの5ギニー金貨はコレクターたちの間で高い人気を誇ります。
そのなかでも、1716年から1726年の間に4回しか発行されなかったジョージ1世の5ギニー金貨は、希少性が高いコインとして知られています。
ジョージ1世の5ギニーコイン、そのデザインは?
5ギニー金貨に彫られたジョージ1世の横顔は、右側を向き、イギリスの王らしく昂然としています。
1714年、ドイツから迎えられてイギリス王となったジョージ1世は、54歳になっていました。月桂冠を頭にした肖像画は、円熟味のある表情を見せています。
裏面には、イギリスの最高位であるガーター勲章の盾を中心に、イングランド、フランス、スコットランド、アイルランドの国章が彫られています。国王のしるしである王冠と王笏も、国章とともに描かれているのがわかります。
ジョージ1世 5ギニー金貨に彫られた文字
ジョージ1世5ギニー金貨には、彼のレジェンドがラテン語で表現されています。
肖像画を囲むように書かれているのは、
GEORGIVS·D:G·M·BR·FR·ET HIB REX F D
(ジョージ1世、神の恩恵を受けた英国、フランス、アイルランドの王にして信仰の守護者)
という文字です。
裏面には、
BRVN ET·L·DVX S·I·R·A·TH ET·EL
(ブランズウィック公にして神聖ローマ帝国選帝侯)
と刻まれています。
イギリスの王としてだけではなく、ドイツ貴族としての出自を大事にしていたことがよくわかります。
ジョージ1世 5ギニー金貨が作られた当時の時代背景
▲王冠をかぶったジョージ1世
ハノーヴァー王家の祖であるジョージ1世は、どのような事情でイギリス王になったのでしょうか。
当時のイギリスの社会とともに解説します。
複雑に絡み合うヨーロッパの王侯貴族
ジョージ1世は、イギリス王家の王子として生まれたわけではありませんでした。ドイツのハノーヴァー選帝侯の息子ゲオルグは、母ソフィアがイギリス王ジェームズ1世の孫娘であったため、イギリス王ジョージ1世として迎えられたのです。
当時のイギリス王室は、アン女王が跡継ぎを残さず亡くなり、スチュアート王家がとぎれたという事情があります。
ジョージ1世の母の家系がイギリス王室にあったことから、ドイツのハノーヴァー家が新たにイギリス王室となったわけです。
王族や貴族の結婚によって複雑な縁戚関係にあった当時のヨーロッパ、それを象徴するようなジョージ1世の即位でした。
イギリス国民のあいだでの人気はイマイチだったジョージ1世
ジョージ1世がロンドンに到着したとき、その傍らに王妃の姿はありませんでした。
彼にはゾフィア・ドロテアという妻がいましたが、不仲であった彼女はドイツに残したまま、単独で戴冠式に臨んだのです。
またイギリスの王となっても英語を理解しなかったため、イギリス国民にはあまり人気のない王様として、イメージが定着してしまいました。
「君臨すれども統治せず」責任内閣の発足を促したジョージ1世
英語を理解しないジョージ1世は、現在まで伝わる英国王室の伝統を生み出しました。
それが「君臨すれども統治せず」という姿勢です。
国民の人気は高くなかったのですが、君主としての手腕は歴史家たちにも評価されています。
とくに軍事面に優れ、才能ある政治家を閣僚に任命して、政局の安定化に努めました。
ジョージ1世の施策によって、この後に来る産業革命による繁栄の礎を築いたのです。
近年はまた、外交面での功績も称えられているジョージ1世。
その時代の5ギニー金貨は、歴史的な価値が凝縮されています。
ジョージ1世 5ギニー金貨以外のコイン
イギリスと王室の歴史に大きな足跡を残したジョージ1世。
ジョージ1世にゆかりのあるコインは、5ギニー金貨だけではありません。
ジョージ1世と関連するコインを紹介します。
ジョージ1世 クォーターギニー金貨
ジョージ1世が王として即位した4年後の1718年、クォーターギニー金貨が発行されました。
クォーターギニー金貨の発行は、銀価格の高騰に対応するために、当時王立造幣局長であったアイザック・ニュートンのアイデアから生まれたといわれています。
5ギニー金貨とほぼデザインは同じですが、ジョージ1世が力強く彫られているのが特徴です。
クオーター金貨は1718年と1762年の2度しか発行されていないため、入手が大変難しいコインです。
ジョージ1世 1ペニー銀貨
ジョージ1世の肖像画と、1という数字が王冠をかぶっているデザインが珍しい1ペニー銀貨。
1716年から1727年にかけて発行されたコインです。
アンティークコインの中ではお値段もお手ごろで、初心者にも入手しやすいのがメリット。
肖像画を囲む文字は「GEORGIVS· DEI·GRA(神の恩寵を受けたジョージ)」。シンプルなところがまた魅力的です。
ジョージ1世 シリング銀貨
1717年、1723年、1724年に発行されたジョージ1世のシリング銀貨も、収集の価値があるコインのひとつ。裏面の4つの国章には王冠は刻まれているものの、5ギニー金貨に見える王笏はありません。
発行された年によってデザインが微妙に異なり、コレクターたちの目を楽しませてくれます。
ジョージ1世 5ギニー金貨の価格推移
発行枚数が不明のため、希少なコインのひとつである「ギニー」。
オークションでも取引がなかなか無いため、少し前のオークション結果のご紹介です。
AU50 1726年
2021年8月19日に$43,200で落札。
MS61 1720年
2023年1月9日に$114,000で落札。
勢いのあったイギリスを象徴するジョージ1世 5ギニー金貨!
英語が得意ではなかったのにも関わらず、ハノーヴァー王家の王として18世紀に君臨したジョージ1世。
軍事や外交における功績が、近年脚光を浴びている王です。
産業革命を迎えようとしていた時代に発行された5ギニー金貨には、当時のイギリスの輝きが凝縮されています。
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