イギリス共和政時代の遺産!クロムウェル ブロード金貨の魅力と価値を知ろう
▲17世紀半ば、イギリスのピューリタン革命の指導者であったオリバー・クロムウェル。1656年にサミュエル・ピーターが描いた作品。(ロンドン・ナショナル・ポートレート・ギャラリー所蔵)
イギリスといえば、華やかな王室を思い浮かべる方も多いことでしょう。
中世から長く続いてきたイギリスの王室ですが、実は共和政の時代も存在します。その時代の主役が、本日ご紹介するブロード金貨に描かれたクロムウェルです。
17世紀のイギリスのコインに相応しいエレガンスに加え、歴史的な価値も高いクロムウェルのブロード金貨。
この記事では、その魅力について解説いたします。
クロムウェル ブロード金貨
基本データ
コイン名 | イギリス オリバークロムウェル 1ブロード金貨 |
---|---|
通称 | ブロード金貨 |
発行年 | 1656年 |
国 | イギリス |
額面 | 1ブロード=20シリング |
種類 | 金貨 |
素材 | 金 |
発行枚数 | - |
品位 | - |
直径 | 30.0 mm |
重さ | 9.0 g |
統治者 | オリバークロムウェル |
デザイナー | トーマス・サイモン(Thomas Simon) |
KM | # Pn25 |
表面のデザイン | 左向きのオリバー・クロムウェルの肖像とレジェンド |
表面の刻印 | OLIVARD·G·RP·ANG·SCO·ET·HIB & PRO·(オリバー、神の守護を受けたイギリス英国、スコットランド、アイルランドの守護者) |
裏面のデザイン | 紋章とレジェンド |
裏面の刻印 | PAX · QVÆRITVR · BELLO(平和は戦争によって探求される) |
エッジのタイプ | - |
エッジの刻印 | - |
クロムウェル ブロード金貨とは?
17世紀に発行されたクロムウェルのブロード金貨は、安定感のある美しさで見る人を魅了します。まずは、クロムウェルのブロード金貨の特徴を見ていきましょう。
ブロード金貨とは
ブロード金貨とはどのようなコインなのでしょうか。
ブロードコインは、オリバー・クロムウェルが護国卿となった時代に発行された貨幣を指します。1656年の単年号の発行です。クロムウェルがイギリスの政治を掌握したのは1653年のことでした。クロムウェルが亡くなったのは1658年ですから、ブロード金貨が発行された期間は非常に短く、希少性が高いのも頷けます。
クロムウェルのブロード金貨、そのデザイン
クロムウェルのブロード金貨は、表面にクロムウェル自身の横顔が彫られています。古代の共和政ローマの伝統にのっとり、クロムウェルも月桂冠を頭に乗せています。クロムウェルはこの時50代半ば、秀でた額に知性を感じる円熟味のある肖像画です。
裏面には、コモンウェルスの紋章が見えます。
コモンウェルスとは、イギリスが共和政を布いた1649年から護国卿時代、つまり国王が不在の時代を指します。クロムウェルはコモンウェルスの紋章として、イギリスの守護聖人セントジョージとアイリッシュハープをデザインとして起用しているのがわかります。
ブロード金貨に彫られた文字の意味は
クロムウェルと紋章を囲むように、文字が彫られているのが見えます。
まずクロムウェルの面に彫られているのは、次の文字です。
OLIVARD·G·RP·ANG·SCO·ET·HIB & PRO·
(オリバー、神の守護を受けたイギリス、スコットランド、アイルランドの守護者)
紋章とともに刻まれているのは、次の1文です。
PAX · QVÆRITVR · BELLO
(平和は戦争によって探求される)
クロムウェルの気概、そして当時のイギリスの緊迫した世相を反映しているような文言です。
クロムウェル ブロード金貨が作られた当時の時代背景
▲戦場におけるクロムウェル。1851年に画家チャールズ・ランドシアーが描いた作品(ベルリン旧国立美術館所蔵)
世界史で、クロムウェルという名前は聞いたことがあるかもしれません。
クロムウェルがコインに刻まれた時代とは、どんな意味があったのでしょうか。ブロード金貨に秘められた当時の時代背景に迫ります。
17世紀のイギリスに起こったピューリタン革命
クロムウェルは共和政の指導者でした。そこにいたるまでには、ピューリタン革命を抜きには語れません。
ピューリタン革命とは、17世紀半ばに国王の専制政治に対抗する議会派が起こした市民革命です。これにより、当時の国王チャールズ1世は処刑され、イギリスには共和政が布かれます。
クロムウェルは、このピューリタン革命を率いた指導者であったのです。
クロムウェルと新政府の混乱
ピューリタン革命に勝利し、議会派のトップとなったクロムウェル。
彼はどのような経歴を持つ政治家なのでしょうか。
クロムウェルは1599年、イギリス東部ハンティンドンに生まれました。”ジェントリ”という地主階級に生まれたクロムウェルは、父の跡を継いで農業経営に優れた手腕を発揮するだけではなく、自ら騎兵を率いて戦う軍人でもありました。クロムウェルが率いた「鉄騎隊」は、国王軍を破る主戦力となったほか、内乱期に起った各地の反乱を鎮圧しています。
しかし、共和政のトップとして護国卿となったクロムウェルはイギリス国内に安定をもたらすことができず、議会派内部でも改革の方向をめぐって対立が生じることになります。
1558年にクロムウェルが亡くなると、共和政は終焉を迎えました。1660年には、処刑された国王の息子チャールズ2世が国王に即位(王政復古)、クロムウェルによるピューリタン革命はここに幕を閉じたのです。
クロムウェルの評価
イギリスの歴史のなかでも類を見ない国王の処刑を敢行したクロムウェルの評価は、時代や人によって大きく変わります。国王に対する反逆者と呼ぶ人もあれば、ピューリタン革命の英雄と讃えられることもあり、見方によってクロムウェルの評価も揺れ動きます。
19世紀に入ると、クロムウェルは専制性への抵抗、ピューリタニズムの諸点において再評価され、近代社会の扉を開いた人と呼ばれる動きが加速しました。
ピューリタン革命の時代はわずか20年で終わりますが、クロムウェルが提唱した宗教における寛容や改革立法はそのまま残り、後世の基礎となった要素も少なくなかったのです。
クロムウェルのアンティークコインの種類・その他のコイン
イギリスにおける近代の扉を開いたといわれるクロムウェル。
クロムウェルに関連するコインは、ブロード金貨以外にも存在します。そのうちのいくつかをご紹介します。
同じデザインのシルバーコイン
▲クロムウェル 6ペンス銀貨
ブロード金貨は20シリング貨幣ですが、6ペンス銀貨が存在します。その他にクラウン銀貨とハーフクラウン銀貨も発行されています。
デザインはブロード金貨とまったく同じ、希少性の高さも同様とされています。
ロイヤルミントによれば、クロムウェルのシルバーコインは発行数が非常に少ないうえ、クロムウェルの死と王政復古により、この貨幣が流通した形跡は見当たらないと報告しています。
パターンコイン(試鋳貨)の存在も
アンティークコインの市場を検索すると、クロムウェルが彫られた貨幣にはパターンコイン(試鋳貨)もあります。こちらは通常の貨幣よりもさらに高額で取引されているのがわかります。
芸術的な価値も高いクロムウェルのコイン
クロムウェルのコインをデザインしたのは、ピューリタン革命の時代に造幣局の主任彫刻家であったトーマス・サイモンです。
彫刻家でありデザイナーとして優れた技術を持っていたサイモンは、王政復古後もチャールズ2世に重用されました。
サイモンの傑作といわれるクロムウェルのコインは、歴史的価値だけではなく、アートとして鑑賞するにも耐えうる、美しい芸術品といえるでしょう。
クロムウェル ブロード金貨の価格推移
1ブロード金貨は20シリングと同じ価値のため、オークションではブロード/20シリングと表記されることがあります。
通常の評価からプルーフ評価までの価格推移をご紹介します。
AU58
2021年1月21日に$36,000で落札。
MS62
2022年5月5日に$51,600で落札。
PR62+
2022年8月25日に$96,000で落札。
プルーフ評価のため、通常貨よりも高額で取引されています。
PR63 Cameo
2022年1月10日に$108,000で落札。
特異なイギリスの共和政時代の遺産、クロムウェルのブロード金貨
イギリスの長い歴史の中でも、非常に珍しい共和政時代に発行されたクロムウェルのブロード金貨。
ピューリタン革命の指導者であったオリバー・クロムウェルによって発行されたこのコインは、イギリス英国が近代へと発展する過渡期に生まれた歴史的遺産でもあります。
歴史的価値を考慮、希少性の高さなどから今後も評価が高まりそうな同コイン、ご興味を持たれた方はぜひ、アンティークコインギャラリアにご相談ください。
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