1688年ジェームズ2世5ギニー金貨を徹底解説!象と城のデザインや過去の落札価格

英国王ジェームズ2世の即位後に発行された5ギニー金貨。わずか3年の在位の間に、彼は6種類もの金貨を発行しています。今回は、そのうちとくに有名なギニー金貨を厳選してご紹介します。金貨のモデルであるジェームズ2世や当時のイギリスについても見ていきましょう。

 

 

1688年ジェームズ2世5ギニー金貨とは?

1688年発行のジェームズ2世5ギニー金貨(エレファント&キャッスル)とは、その名の通り「象と城」のデザインが特徴的な金貨です。イギリスのかつての国王ジェームズ2世が、最後に王座に就いていた年に発行された金貨でもあります。

 

1688年ジェームズ2世5ギニー金貨の特徴①:デザイン

1688年ジェームズ2世5ギニー金貨(エレファント&キャッスル)の特徴として、まず挙げられるのはそのデザイン。

6種類あるジェームズ2世5ギニー金貨のうち、1687年の金貨とこの1688年の金貨にだけ背中に「城を載せている象」のデザインが彫られています。これは、奴隷貿易で知られた王立アフリカ会社のシンボルマークです。ジェームズ2世が王立アフリカ会社の筆頭理事を務めていたことから描かれたと考えられます。

「城を載せている象」はジェームズ2世の横顔とともに、金貨の表面に描かれています。ジェームズ2世には「栄光」「栄誉」を意味する月桂樹が付けられていることも印象的です。その他、ラテン語で「神の恵みを受けしジェームズ2世」と書かれており、ジェームズ2世を讃えていることが分かります。

裏面には、王冠を伴った4つの盾と紋章が描かれています。それらと交叉するように笏杖がデザインされていることが印象的です。4つの紋章はイギリス、スコットランド、フランス、アイルランドのものになります。この紋章から、当時の政治や社会情勢を垣間見ることができるでしょう。

ちなみに、「ジェームズ」の文字ですが、古典ラテン語には「J」「U」の文字がないため「I」「V」を代わりに使用しています。つまり、「JAMES」ではなく「IACOBVS」と書かれているのです。こちらも、アンティークコインの特徴と言えます。

 

1688年ジェームズ2世5ギニー金貨の特徴②:歴史的価値

次に挙げられる特徴としては、1688年ジェームズ2世5ギニー金貨(エレファント&キャッスル)の歴史的価値です。

6種類あるジェームズ2世5ギニー金貨の中でも、1688年ジェームズ2世5ギニー金貨(エレファント&キャッスル)はジェームズ2世の在位最後の年に発行された金貨になります。僅か3年の在位であることも相まって、歴史的にも非常に希少的な価値があるのです。

また、5ギニー金貨とはイギリスにおいて17世紀〜18世紀に鋳造されました。重さ40gにもなる大型の金貨であり、当時最高の額面を誇ります。19世紀以降ではほとんど見かけないため、金貨そのものの歴史的価値も高いと言えるでしょう。

そして、素材的にも歴史的な価値があります。「象と城」のデザインには、植民地であるアフリカのギニア産出の金によってコインが作られたことを示しています。「象と城」のデザインの元が王立アフリカ会社ということもあり、当時のアフリカの植民地との関係がよく分かるコインです。

 

1688年ジェームズ2世5ギニー金貨とジェームズ2世

1688年ジェームズ2世5ギニー金貨(エレファント&キャッスル)のモデルとなった、ジェームズ2世。ここでは、そんなジェームズ2世について紹介します。

ジェームズ2世は1633年に誕生しました。幼少期から青年期まで、イギリスの内戦である清教徒革命や海外への亡命など辛い経験を体験します。しかし、兄チャールズ2世の即位によって、1660年に母国であるイギリス・イングランドへやっと帰国することが叶いました。

1685年には兄の跡を継いで、イギリス国王として即位。しかし、何度も述べているように、彼の国王としての在位は僅か3年間でした。

なぜ即位期間が短かったのか。その原因は宗教問題にありました。当時のイギリス・イングランドでは、カトリック、プロテスタント、イギリス国教会の3つが対立。そんな中で、ジェームズ2世はカトリック信仰を隠しもせず王位に就き、カトリック教徒を優先した政策を行ったため国民の怒りを買ってしまったのです。

ついには、実の娘であるメアリーとその夫によって王座を追われ、フランスへ亡命せざる得なくなります。この出来事が後に言われる「名誉革命」です。その後、反旗を翻すも失敗し、1701年に67歳でこの世を去りました。その結果、ジェームズ2世は歴史上において最後のカトリック教徒の国王だったと言われています。

 

ジェームズ2世の他のコイン

さて、ジェームズ2世のコインはこれまでに述べてきたように1688年ジェームズ2世5ギニー金貨(エレファント&キャッスル)だけではありません。ジェームズ2世の在位中には、5ギニー金貨とともに2ギニー金貨も発行されました。ここでは、ジェームズ2世がモチーフの他のコインについて紹介しましょう。

まず、5ギニー金貨ですが、ジェームズ2世の5ギニー金貨は「エレファント&キャッスル」を含めて6種類あります。1887年に1st Bust、2st Bust、Elephant&Castleの3種類が発行。1688年にも同じように、1st Bust、2st Bust、Elephant&Castleの3種類が発行されました。

しかし、いずれもデザインに大きな違いはありません。Elephant&Castle 以外は「象と城」が描かれていなかったり、年によってジェームズ2世のリボンの長さが違ったりしますが、他のデザイン自体は全て同じです。

2ギニー金貨についても、5ギニー金貨と同様になります。2ギニー金貨は1682年頃に発行。デザイン自体は5ギニー金貨と同じものであり、金貨の価格のみ異なります。しかしながら、5ギニー金貨と2ギニー金貨のどちらとも手に入れにくいレアなコインには変わりありません。

 

1688年ジェームズ2世5ギニー金貨と当時のイギリス

ジェームズ2世自身について紹介したところで、次は1688年ジェームズ2世5ギニー金貨(エレファント&キャッスル)が発行された当時のイギリスについて簡単に説明したいと思います。

ジェームズ2世のところでも述べましたが、この金貨が発行された当時のイギリスは宗教的な問題によって、国内が混乱していました。キリスト教の宗派であるカトリックとプロテスタント。それに加えて、16世紀の国王ヘンリー8世によって作られたイングランド国教会の3つが対立していたのです。

この3つの中でもカトリック教徒はあまり好まれていませんでした。カトリックよりであるフランスのルイ14世の振る舞いから、絶対王政になると恐れていたのです。その結果、カトリック教徒であるジェームズ2世の即位は短く、名誉革命によってプロテスタントの時代が始まりました。

また、1688年ジェームズ2世5ギニー金貨(エレファント&キャッスル)の最大の特徴とも言える「象と城」。この元となる王立アフリカ会社もジェームズ2世の在位時期に貿易を独占していました。1672年〜1698年まで市場を独占し、合計10万人以上の奴隷をアメリカやカリブ海に送ったのです。

奴隷たちの主な仕事は、砂糖や煙草などのプランテーションでの労働。特に、17世紀当時のイギリスは砂糖の消費量が多かったため、労働者も多く確保しなくてはいけなかったのです。現在で言えば、決して褒められるものではありません。しかし、当時ではごく普通に行われていたのです。



1688年ジェームズ2世5ギニー金貨の価値とは?

それでは、1688年ジェームズ2世5ギニー金貨(エレファント&キャッスル)の価値について紹介します。過去の最高落札額や発行枚数(希少性)、年代の異なるコインの価格などもふまえて、詳しく説明します。

 

1688年ジェームズ2世5ギニー金貨の価値①:価格

あくまで目安ですが2013年に行われた銀座コインオークションにおける1688年ジェームズ2世5ギニー金貨(エレファント&キャッスル)の落札額は、約125万円となっています。

この金貨は、発行枚数が不明となっておりますが、市場にでてくる機会は少なく、希少性の高いコインです。

参考:第25回銀座コインオークション

 

1688年ジェームズ2世5ギニー金貨の価値②:年代

年代の異なる1687年ジェームズ2世5ギニー金貨も高い価値を誇っています。1687年ジェームズ2世5ギニー金貨は、第48回日本コインオークションにて約290万円で落札されました。こちらは状態もかなり良く、「VF+(Very Fine)」の評価をもらっています。

参考:第48回日本コインオークション

コイン市場での「VF」とは「美品」と言い、「摩耗や傷、デザインの細部不明瞭はあるが、本来のデザインは十分に判別可能」という意味になります。

 

1688年ジェームズ2世5ギニー金貨の魅力に浸る

ジェームズ2世は短期間の在位にも関わらず、イギリスに宗教改革という名の波を起こした人物の一人でもあります。また、1688年ジェームズ2世5ギニー金貨(エレファント&キャッスル)の「象と城」のデザインから「奴隷貿易」という当時の悪しき商売に関わっていたことも読み取れます。

もしジェームズ2世の金貨を手にする機会があれば、当時に思いを馳せてみてはいかがでしょうか。