今は無きアフリカの国「カタンガ」のインゴット型コイン「カタンガ・クロス」の発行の背景と歴史をご紹介
「カタンガ・クロス」というインゴット型コインの名前を聞いたことがありますか?現在のコンゴ民主共和国である「カタンガ」というアフリカの国で製造されました。銅製の大型の「カタンガ・クロス」の発行の背景と、カタンガからコンゴ民主共和国へ移り変わる歴史を解説!
カタンガ・クロス
基本データ
コイン名 | カタンガ・クロス |
---|---|
通称 | カタンガ・クロス |
発行年 | 13世紀〜20世紀頃 |
国 | カタンガ(コンゴ民主共和国) |
額面 | - |
種類 | 銅貨・インゴットタイプ |
素材 | 銅 |
発行枚数 | - |
品位 | ^ |
直径 | - |
重さ | 2.2g〜1kg |
統治者 | - |
デザイナー | - |
KM | - |
表面のデザイン | - |
表面の刻印 | - |
裏面のデザイン | - |
裏面の刻印 | - |
エッジのタイプ | - |
エッジの刻印 | - |
大きなものは1kg以上!?インゴット型のコイン「カタンガ・クロス」とは?
その起源は、13世紀のお墓の副葬品にさかのぼります。このカタンガ・クロスは富や豊かさ、権威の象徴として使われていたようです。埋葬された人の胸に結び付けられたカタンガ・クロスが発見されています。亡くなった人の手や腰のあたりに積まれていたそうです。象牙のように珍重されてきました。
▲銅の鉱山
カタンガと「銅」の採掘の歴史
現在のコンゴ民主共和国アフリカのコンゴ南東部にある「カタンガ」では、昔から銅などの鉱産資源が豊富でした。銅の採掘の歴史は1,000年以上と古く、世界の銅の埋蔵量の10%が埋蔵されているという「カッパーベルト」と呼ばれるカタンガの鉱山地帯は、何世紀にもわたって操業してきました。採掘された銅は、16世紀にはアンゴラの海岸から南へ、そしてヨーロッパへと輸出されました。そして、銅の供給源をめぐって、地方の王国の間での争いや権力の象徴になりました。このカタンガ・クロスは、この地域のアイデンティティでした。
▲約215mmX210mm|817.57gm|VF
「カタンガ・クロス」製造と使用の背景
「カタンガ・クロス」とは、カタンガの国旗にも描かれている、19世紀から20世紀にかけて現在のコンゴ民主共和国の一部で通貨として使用されていた銅で出来た十字の形のものをいいます。カタンガから分離したコンゴのルアラバ州の紋章や、ハウトカタンガ州の紋章にもカタンガ・クロスが描かれています。
扱いとしては、十字架状のインゴットでした。この形については諸説ありますが、支払いや運搬の際に何本もの銅貨をひもで縛るのに、十字の形が便利だという説があります。別名「ハンダ・クロス」と呼んだりします。
19世紀になるとアラブの商人たちが、ケニヤ経由での東アフリカ貿易で使うようになりました。そして19世紀後半になると、日常生活でも使われるようになります。必要に応じて溶かし、宝飾品や他の貨幣、武器を作るために銅の素材として再利用されました。
▲当時は「H」の形のものもありました。大きさは約50センチ。
大きなものは1kgほどのものもあり、大中小3種類あります。手のひらに収まるくらい小さいものもあり、小さい方が希少価値が高いといわれています。カタンガ・クロスは「モールド製法」という形に金属を流し込んで作る、いわゆる鋳造で製作されました。日本の和同開珎や寛永通宝などと製造方法は同じです。
カタンガ・クロスの当時の価値
カタンガ・クロス1個は、小麦粉10kg、ニワトリ5~6羽、斧6つ、布2反、ゴム4kg分の価値がありました。その他には2つでヤギ1頭、そしてヨーロッパからきた銃1つと交換することができたそうです。結婚式での花嫁の持参金としては、14個必要でした。ちなみに、この結婚が破綻した場合、返却しなければいけませんでした。
また、3~5個で男性の奴隷を、5~10 の十字架で女性の奴隷を購入できました。これはアフリカ大陸の”黒い歴史”といえます。
カタンガとその周辺諸国の移り変わりの歴史
18世紀になると、この地で栄えた「ルンダ王国」で賃金や税金の支払い用などとして使われました。このルンダ王国とは、ルバ族を中心にした多民族国家でした。その勢力は、現在のコンゴ民主共和国南部の熱帯雨林の南のはじにあたる、サバンナ地帯全体にまで及びました。このルバ王国はアフリカ中央部を横断する通商ルートの中央部を占め、19世紀に最盛期に達しました。しかし、19世紀末にはアラブの奴隷狩りやヨーロッパ列強の影響、そして内部での王位継承をめぐる紛争で弱体化してしまい、国が解体してしまったという歴史があります。
カタンガとコンゴ民主共和国の移り変わりの歴史
カタンガはベルギーの植民地である、ベルギー領コンゴの一部でした。1960年にベルギー領コンゴが独立したとき、カタンガは分離独立します。そして、1960年7月1 日にカタンガ州が成立しました。ベルギーはカタンガの独立に同意しましたが、コンゴはカタンガ州を認めず、コンゴ共和国の一部であると断固として主張しました。カタンガに鉱山会社を持っていたベルギーは、コンゴが撤退を要求した領土に軍隊を残しました。この紛争は「コンゴ危機・コンゴ動乱」として知られるようになりました。コンゴはベルギー人を追放するための支援を国連に要求し、そうでなければソビエト連邦に助けを求めるだろうと脅します。しかし、多くの国がこの領土の紛争をめぐって軍隊をコンゴに派遣することを望まなかったため、これは大きなジレンマになりました。
ベルギー、ソ連、キューバなどが豊かな地下資源を狙っていたというわけです。しかし世界は、アフリカでのソ連などの共産勢力の影響力を高めたくありませんでした。その後、1963年にベルギーが軍隊を撤退させ、国連平和維持軍の介入により解決されました。この影響で、カタンガ州は解体されました。一時ザイールと呼ばれる国になりましたが、現在ではコンゴ民主共和国のカタンガ州となりました。一時「シャバ州」と呼ばれましたが、シャバは「銅」を意味するそうです。
カタンガ・クロス以外のコイン
ベルギー領コンゴが一つの国として独立しようとしたとき、裕福なカタンガ地方はそれに従わず、独自の「カタンガ共和国」を名乗りました。国旗や1960 年から 1963 年までの 3 年間の短い間に発行された3種類のコインにはカタンガ・クロスが描かれています。
▲1フラン銅貨と5フラン銅貨
1フランは独立前の植民地であったベルギーの1フランと同等でした。アメリカの1 ドルが約50フランでしたが、再びコンゴに併合された時、その価値は 1ドル195フランにまで落ちていました。
▲カタンガクロスが描かれた1961年発行の5フラン金貨
ベルギーが 1960年にカタンガの独立を認めた直後に、コンゴからの独立を獲得した時の記念金貨です。カタンガ銀行が失われた歴史へのオマージュとして、カタンガ・クロスをデザインしました。この金貨も単年号の発行のため、今となっては貴重な金貨です。
コインの価格推移
貴重な歴史的な遺物でもある「カタンガ・クロス」はオークションでの取引履歴もあまりなく、コレクターの方は見つけたらすぐに手に入れることをおすすめします。安価なため比較的手に入れやすいのも、収集品としておすすめです。
VF
2019年11月14日に$126で落札。
Fine
2015年3月26日に$99で落札。
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