ワイタンギクラウン銀貨!イギリス国王と先住民が表裏に描かれたコインの魅力と背景
▲ワイタンギクラウン銀貨に姿を残す英国王ジョージ5世。1933年頃の肖像
ワイタンギという不思議な響きを持つ銀貨をご存じでしょうか。
ワイタンギはニュージーランド北島の地名です。20世紀の歴史の一片を語る場所として、その名を残したワイタンギは、1935年に製造されたコインの名前にもなっています。
ワイタンギクラウン銀貨には、当時のイギリス王とニュージーランドの先住民の姿が描かれています。このデザインは、当時の世界情勢と無縁ではありません。
発行枚数が少ないうえに、歴史的にも価値あるワイタンギクラウン銀貨について、詳しく解説いたします。
ワイタンギクラウン銀貨
基本データ
コイン名 | ニュージーランド ジョージ5世 クラウン銀貨 ワイタンギ条約締結記念 |
---|---|
通称 | ワイタンギ クラウン 銀貨 |
発行年 | 1935年 |
国 | ニュージーランド |
額面 | 1クラウン |
種類 | 銀貨 |
素材 | 銀 |
発行枚数 | 通常貨幣:660枚|プルーフ:468枚(セットのみの発行) |
品位 | Sv 500 |
直径 | 38.61 mm |
重さ | 28.28 g |
統治者 | ジョージ5世 |
デザイナー | 表:Percy Metcalfe(パーシー・メッカルフ)|裏:George James Berry(ジョージ・ジェームス・ベリー) |
KM | #6 |
表面のデザイン | 王冠を被った左向きのジョージ5世の周りにレジェンド |
表面の刻印 | GEORGE V KING EMPEROR(ジョージ5世,王であり皇帝) |
裏面のデザイン | マオリ族の酋長タマティ・ワカ・ネネと英国人船長ウィリアム・ホブソンがワイタンギ条約締結のため握手する姿の上に王冠、その周りにレジェンドと発行年 |
裏面の刻印 | NEW ZEALAND CROWN+1935 WAITANGI(ニュージーランドクラウン,1935年,ワイタンギ) |
エッジのタイプ | リーデッド |
エッジの刻印 | - |
ワイタンギクラウン銀貨とは?
ワイタンギクラウン銀貨は、どのような特徴を持っているのでしょうか。
コインの概略を解説します。
英国王ジョージ5世25周年に発行された銀貨
ワイタンギクラウン銀貨が発行されたのは1935年。
先日亡くなったエリザベス女王の祖父ジョージ5世が即位し、25周年に発行されたコインです。
厳密には記念コインではありませんが、実質的に記念コインのような扱いを受けて珍重されています。
ジョージ5世の即位25周年の年に発行されたこと、また1933年からニュージーランド独自のコインを使用するようになってから初めて発行されたコインであることが、その理由です。
表にはジョージ5世、裏にはワイタンギ条約締結場面が
表に刻まれているジョージ5世は、王冠をかぶった端整な横顔を見せています。
コインの裏に描かれているのは、ワイタンギ条約締結という歴史的なシーンです。
ニュージーランドに移住した芸術家ジェームス・ベリーがデザインし、彫刻家パーシー・メッカルフが彫刻を担当しました。
ワイタンギ条約が締結されたのは、1840年2月6日のことでした。この条約以降、ニュージーランドは英国連邦の一部となります。
イギリスの代表であったウィリアム・ホブソン大佐と、先住民マオリ族の首長タマティ・ワカ・ネネが手を取り合っているシーンが印象的です。
ラテン語で刻まれた文字
国王ジョージ5世を囲むラテン語は、
GEORGE V KING EMPEROR(ジョージ5世 王にして皇帝)
ジョージ5世はイギリスと連合国の王であり、インド皇帝でもあったためです。
いっぽう、ワイタンギ条約締結シーンを囲む文字は、
NEW ZEALAND CROWN+1935 WAITANGI
ニュージーランドのクラウン銀貨であること、描かれているのがワイタンギ条約を結ぶシーンであることを説明しています。
この銀貨が、「ワイタンギクラウン」と呼ばれる理由です。
ワイタンギクラウン銀貨が作られた当時の時代背景
▲ワイタンギ条約締結の様子
ワイタンギクラウン銀貨が発行された1935年当時、世界情勢はどのように変化していたのでしょうか。
世界大戦によって大きく揺れる時代の中で生まれワイタンギクラウン銀貨。その誕生の背景を追います。
ワイタンギ条約以降の英国とニュージーランド
ワイタンギ条約は1840年2月6日に結ばれ、これ以降、ニュージーランドは英国の植民地となりました。ニュージーランド全島の全権はイギリスの王にあり、イギリス王はニュージーランドに住む人々の資産や権利を保障して、イギリス国民として遇するというのがその主旨です。
先住民の人々と入植したイギリス人が平和に暮らす公正な社会構築のために結ばれた条約でしたが、これで双方が丸く収まったわけではありませんでした。
1860年には、両者が対立するマオリ戦争が勃発、抗争は10年以上も続きました。
こうした紆余曲折を経て、ニュージーランドは20世紀以降、近代化を進めていったのです。
「2つの文化、ひとつの国」の実践
民族性が異なる2つの文化をひとつの国としてまとめる意義を持っていたワイタンギ条約は、かつてはイギリスの植民地政策のシンボルでもありました。
しかし現在は、多様性を受け入れる社会の象徴として好意的に解釈する動きも見えます。
実際ニュージーランドでは、ワイタンギ条約が結ばれた2月6日を「ニュージーランド・デー」に制定し、お祝いをする風習があります。
エリザベス女王の祖父ジョージ5世とは
ワイタンギクラウン銀貨に肖像画を残すジョージ5世とは、どんな王だったのでしょうか。
ジョージ五世は、大英帝国に君臨し国民の尊崇を集めたヴィクトリア女王の孫にあたります。
彼は自由な思想の持ち主であり、人種的偏見を嫌ったといわれてきました。
国王として初めてインドを訪問したことは、大英帝国史上最大の祝賀行事として歴史に刻まれています。
ジョージ5世が君臨した1910年から1936年は、世界情勢のみならず、イギリスの政治構造も大きく変化した時代と重なります。
ジョージ5世はそのような時代にあって、内閣の成立に深く関与し、国王によりクリスマスのラジオ放送を行うなど、近代的な王として大きな足跡を残しました。
また当時のイギリス王家はサックス・コーバーグ・ゴータ家と呼ばれていましたが、敵国であったドイツ的な響きを除くため、ウィンザー家と改名したのもジョージ5世です。
先日崩御したエリザベス2世は、ジョージ5世の孫です。
世界大戦を英国民と耐えたジョージ6世は、ジョージ5世の次男でした。ちなみに、シンプソン夫人と結婚しわずか100日足らずで王位を退いたエドワード8世は、ジョージ5世の長男です。
開かれた精神を持ち続けた偉大なジョージ5世の面影は、国民に愛されながら惜しまれて逝ったエリザベス女王にも見ることができるといえるでしょう。
ワイタンギクラウン銀貨の価格推移
ニュージーランドのコインとして有名なワイタンギクラウン銀貨。
イギリスの植民地であった時代の歴史を伝えるワイタンギクラウン銀貨の価格は、いかほどでしょうか。
近年の取引額や状況を見てみましょう。
ワイタンギクラウン銀貨は発行枚数が少ない!
ワイタンギクラウン銀貨は近代に発行されたコインですから発行枚数が多いのかと思いきや、発行枚数は非常に少ないのです。
- 通常貨 660枚
- プルーフ 468枚(セットのみ)
つまり希少価値が高いコインなのです。
2000年以降、価格が急上昇!
アンティークコインの人気が高まった2000年以降、ワイタンギクラウン銀貨の価格も比例するように上昇しています。
具体的にどのくらいの価格で取引されているのでしょうか。
ワイタンギクラウン銀貨の価格は?
近年のワイタンギクラウン銀貨の取引額、ずばりこちらです。
80万円!
市場に出るとあっという間にソールドアウトになる人気ぶりですので、今後も価格は上がる可能性は否定できません。
海外でも、100万円近い金額にまで上がってきています。
発行枚数が少ないコインですので、まずは市場に出ることを祈りましょう!
コインの価格推移
MS64
2022年11月4日に$5,040で落札。
MS評価なので「通常貨幣」です。
PF64
2022年5月5日に$6,600で落札。
イギリスの銀貨の品位はSv 925が多いですが、ワイタンギはSv 500(50% Silver)のため、トーンの色が黒や青ではなく赤っぽい色になっています。
PR65
2022年11月2日に$6,900で落札。
PF66
2022年1月10日に$7,800で落札。
偉大な英国王と先住民の融和のシンボルを、ぜひお手元に!
イギリスの植民地政策は功罪さまざまといわれています。
ワイタンギクラウン銀貨に肖像画を残したジョージ5世は、開かれた精神の持ち主として、植民地対策や国政の近代化に貢献した王です。
多様性を受け入れる社会のシンボルとして見直されつつあるワイタンギ条約。
そのシーンを刻んだクラウン銀貨にご興味を持ったかたはぜひ、アンティークコインギャラリアにご相談ください。
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