自由と自治を謳歌した時代のシンボル!神聖ローマ帝国ニュルンベルク都市景観6ダカット金貨

 

15世紀、最盛期のニュルンベルクの様子

 

ドイツ南東部、バイエルン州にある町ニュルンベルク。現在はドイツ有数の工業都市として知られるニュルンベルクは、昔から商業都市として大いに栄えました。第2次世界大戦後に、ニュルンベルク裁判の舞台となったことでも有名です。

中世のニュルンベルクは神聖ローマ帝国内で自治と自由を認められ、独自の貨幣を発行していました。ニュルンベルク発行のコインの中でも、とくに精緻な美しさで人気があるのが「神聖ローマ帝国ニュルンベルク都市景観6ダカット金貨」です。

本記事ではこの金貨の特徴を解説します。

神聖ローマ帝国 ニュルンベルク 都市景観 6ダカット金貨

基本データ

コイン名 神聖ローマ帝国 ニュルンベルク 都市景観 6ダカット金貨
通称 ニュルンベルク 都市景観 6ダカット金貨
発行年 1698年
神聖ローマ帝国 ニュルンベルク
額面 6ダカット
種類 金貨
素材
発行枚数 不明
品位 Au 986
直径 43.5 mm
重さ 21.0 g
統治者 -
デザイナー -
カタログ番号 KM# 234, Fr# 1872
表面のデザイン 上部にヘブライ語で「エホバ」、下部に碑文と年号のある市街図
表面の刻印 MONETA REIPUB: NORIMBERGEN-SIS.1698(ニュルンベルク共和国発行貨幣 1698年)
裏面のデザイン 盾を持つ2人の精霊の上に立つ平和の女神
裏面の刻印 EXOPTATA DIV PAX COE: - LI EX MVNERE VENIT(待ち望んだ平和は神によってもたらされる)
エッジのタイプ -
エッジの刻印 -

 神聖ローマ帝国 ニュルンベルク 都市景観 6ダカット金貨とは?


神聖ローマ帝国ニュルンベルク都市景観6ダカット金貨とは、どんな金貨なのでしょうか。その概要を解説します。

美しいニュルンベルクの景観

1698年にニュルンベルクで発行された6ダカット金貨。美しく、そして誇らしくデザインされているのは、ニュルンベルクの街並みです。ニュルンベルクのシンボルである聖ローレンツ教会の2つの塔や、ニュルンベルク城などがバランスよく配置されています。

町の上には町を祝福する旧約聖書で神を意味する「エホバ(Jehovah)」の刻印が見えます。

コインには山々と町並みや城壁、街を歩く人や乗馬する人まで細かく描かれたニュルンベルクの町の下には、

MONETA REIPUB: NORIMBERGEN-SIS.1698(ニュルンベルク共和国発行貨幣 1698年)

と刻まれています。

ニュルンベルクは厳密には「共和国」ではありませんでしたが、「REIPUB(LICAE)」という言葉には公益を共有する国家という意味合いがあり、古代ローマの前例に倣った刻印ではないかと言われています。

平和の女神と2人の精霊

6ダカット金貨の裏には、平和を偶像化した女神の姿が。女神が手にしているのは、平和の象徴のオリーブの枝と、聖なる力を有するエルメスの杖。

女神の足元には、天使の”ような”2人が見えます。羽根がないため天使ではなく精霊であるといわれており、1人は神聖ローマ帝国の紋章、1人はニュルンベルクの町の紋章を手にしています。2人とも勝利を意味するヤシの枝を持っています。

女神を囲んでいる文字は、

 EXOPTATA DIV PAX COE: - LI EX MVNERE VENIT(待ち望んだ平和は神によってもたらされる)

と刻印されています。

 

そして、神聖ローマ帝国ニュルンベルク都市景観6ダカットクリッペは、1967年に締結されたライスワイク条約1周年を祝うために発行されたという説があります。

ニュルンベルクは9年間続いた戦争を事実上集結させたライスワイク条約と直接的な関連がないため、1948年のウェストファリア条約締結50周年の記念コインではないかと考えられています。

文字に込められた6ダカット金貨の発行年

精巧な彫りが美しい神聖ローマ帝国ニュルンベルク都市景観6ダカット金貨。

実は女神を囲む文字に、秘密が潜んでいます。文字の大きさに大小ありますが、大文字だけを抜き取ると、ローマ数字が見えてきます。

EXOPTATA DIV PAX COE: - LI EX MVNERE VENIT(下線がある文字がコイン上で大文字)

 

X(10)

D(500)

I(1)

V(5)

X(10)

C (100)

L(50)

I(1)

X (10)

M(1,000)

V(5)

V(5)

I(1)

 

この数字をすべて足していくと、ニュルンベルク都市景観6ダカットが発行された「1698」になります。

コインに潜められた秘密を知るのも楽しいものです。

 

神聖ローマ帝国 ニュルンベルク 都市景観 6ダカット金貨が作られた当時の時代背景

15世紀後半のニュルンベルク

神聖ローマ帝国ニュルンベルク都市景観6ダカット金貨が発行された時代、ヨーロッパはフランスのルイ14世の影響を受けていました。各国では戦争や内乱が続き、オスマントルコ帝国など外部からの圧力も強まりました。

この時代のニュルンベルクについて解説します。

神聖ローマ皇帝と縁が深いニュルンベルク、貨幣発行の権利も

ニュルンベルクは、ドイツの中部と南部をつなぐ交通の要衝にあります。こうした地理的な条件もあり、10世紀に興った神聖ローマ帝国の皇帝からも優遇されていました。

1050年に歴史に登場するニュルンベルクは、コンラート2世やハインリヒ3世によって宮廷が置かれ、発展を続けました。11世紀には大規模な市場があったことがわかっているほか、聖ゼバルドゥスを信仰する巡礼者も多くにぎわっていました。

1062年には帝国貨幣製造所が設置され、伝統的にコインの発行を行っていたこともわかっています。貨幣の発行や関税の徴収によって、ニュルンベルクは大きく発展します。

17世紀のニュルンベルク

14世紀にカール4世が発布した金印勅書によって、ニュルンベルクは国王選挙後の国会を開く場所に定められました。また帝国の財宝の保管所としてニュルンベルクが選ばれ、都市国家として絶大な力を持つようになります。

中世から手工業生産が盛んだったニュルンベルクは経済的にも繁栄を謳歌し、町の支配権は市参事会や富裕な商人層が握っていたといわれています。16世紀に最盛期を迎えたニュルンベルクは、17世紀に三十年戦争を経て衰退に向かいます。

とくにヨーロッパの交易が大西洋へと向かうと、ニュルンベルクの国際的な存在感も徐々に薄れていきました。

困難の時代から復活へ

激動の18世紀を経た1806年、ナポレオンによって神聖ローマ帝国は解体されます。それに伴い、ニュルンベルクはバイエルン王国に属することになり、中世以来の自治を失います。

しかし1835年、フュルトとニュルンベルク間にドイツで最初の鉄道が敷かれました。ニュルンベルクは近代都市として活気を取り戻し、工業都市としての礎を築くことになります。

 

神聖ローマ帝国 ニュルンベルク 都市景観 6ダカット金貨の種類・とその他のコイン

伝統的にコインの発行で有名なニュルンベルク。都市景観と平和の女神がデザインされたクリッペ以外にも、サイズや額面が異なるさまざまなコインを発行しています。

ニュルンベルクのラムダカット

とくに有名なコインは、ラムダカットと呼ばれるもの。都市景観6ダカット金貨より2年あと、1700年に発行されたラムダカットは、その名の通りかわいい羊がデザインされています。キリストの呼び名「神の子羊」が描かれ、羊は「PAX(平和)」と記された旗を持っているのが見えます。

17世紀から18世紀へ向かおうとしていたニュルンベルクは、三十年戦争やナポレオンの台頭に翻弄されていました。平和によってかつての繁栄を取り戻したいという願いが込められているかのようです。

ニュルンベルク都市景観レオポルド2世ダカット金貨

ニュルンベルクの美しい街並みがデザインされたコインは、神聖ローマ帝国時代にたくさん発行されました。

ハプスブルク家の皇帝の中でも賢明さで知られたレオポルド2世。彼が即位した年に発行されたダカット金貨には、ニュルンベルクの街並みが描かれています。肖像画で見るとなかなかハンサムなレオポルド2世は、兄の跡を継いで皇帝となるまではトスカーナ大公でした。

歴史的建造物の塔が印象的なニュルンベルクの町は、18世紀後半も健在であったことがわかります。

パリス・フォン・ロドロン 12ダカット金貨

ニュルンベルク同様、神聖ローマ帝国内で独自の政体を持っていたのがザルツブルクです。8世紀末、大司教管区となったザルツブルクは、大司教を領主とする都市でした。

17世紀、長期にわたりザルツブルク大司教であったロドロン伯パリスの時代に発行された大型の12ダカット金貨。

塩の町として知られるザルツブルクの塩の鉱床は、聖ルパートが発見したという伝説にちなんでいます。ヨーロッパでも最も有名なバロック様式の大聖堂の1つである「聖ルパート大聖堂」の完成を記念して発行された大型金貨です。

 

神聖ローマ帝国 ニュルンベルク 都市景観 6ダカット金貨の価格推移

海外有名オークションでも1枚しか落札記録が確認できない希少なコインです。

MS62+

2023年8月17日に108,000ドルで落札。

 

神聖ローマ帝国内で重要な役割を果たしたニュルンベルクが発行した6ダカット金貨クリッペ

神聖ローマ帝国建国以来、交通の要衝として栄えた都市ニュルンベルク。中世には貨幣の発行や関税の徴収の権利も皇帝から与えられ、経済的な繁栄を謳歌しました。

1698年、三十年戦争によって国際的な重要性を失いつつあった時代のニュルンベルクで発行されたのが、神聖ローマ帝国ニュルンベルク都市景観6ダカット金貨クリッペです。

コインとしては珍しい形状、ニュルンベルクの街並みや平和を願う人々の思いがこもったコインはとにかく美しい1枚。希少性も高く、機会があったら是非入手したい1枚です。

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