アルシノエ2世は初めてコインに描かれた女性?ロマンを誘う古代エジプト女王のコイン

エジプトの遺跡の壁画彫刻

エジプトの女王と聞けば、頭に浮かぶのはかの有名なクレオパトラ7世です。

本記事でご紹介するオクタドラクマ金貨に描かれているアルシノエ2世は、そのクレオパトラよりも250年ほど前に生まれ、エジプトの女王として君臨していました。

その女傑ぶりは、のちのクレオパトラに比肩するといわれています。

オクタドラクマ金貨の中で女王にふさわしい気品あふれる横顔を見せるアルシノエ2世の生涯も含めて、同コインの特徴や魅力に迫ります。

 

オクタドラクマ金貨(アルシノエ2世)

アルシノエ2世 オクタドラクマ金貨 表裏

基本データ

コイン名 プトレマイオス朝 エジプト アルシノエ2世 オクタドラクマ金貨
通称 アルシノエ2世 オクタドラクマ
発行年 紀元前261年
エジプト プトレマイオス朝
額面 オクタドラクマ
種類 金貨
素材
発行枚数 -
品位 -
直径 28.0 mm
重さ 27.71 g(多少前後することも有り)
統治者 アルシノエ2世女王
デザイナー -
KM -
表面のデザイン 右向きのアルシノエ世の肖像
表面の刻印 K
裏面のデザイン 2本の豊穣の角
裏面の刻印 ΑΡΣΙΝΟΗΣ ΦΙΛΑΔΕΛΦΟΥ(Arsinoe Philadelphus:アルシノエ フィラデスフォス)
エッジのタイプ -
エッジの刻印 -

オクタドラクマ金貨(アルシノエ2世)とは?

本日ご紹介するオクタドラクマ金貨が製造されたのは、紀元前260年頃とされています。

2000年以上も前に作られた金貨とは思えないほど、洗練された趣のあるアルシノエ2世のオクタドラクマ。

このコインには、どんなメッセージが込められているのでしょうか。

プトレマイオス王朝初代王の娘アルシノエ2世

世界史に詳しくない方でも、アレクサンダー大王の名は耳にしたことがあるかもしれません。

アルシノエ2世は、アレクサンダー大王の有力武将プトレマイオス1世の娘として生まれました。エジプトにプトレマイオス朝を作ったプトレマイオス1世は、マケドニアという国出身のギリシア人です。エジプトの女王でありながら、オクタドラクマ金貨で横顔を見せるアルシノエ2世の顔立ちがギリシア風に整っているのは、こうした事情があるためです。

改めて、金貨のアルシノエ2世の肖像を見てみましょう。

高い鼻、シニヨンにした髪、王冠とベール。オクタドラクマ金貨のアルシノエ2世は、初代王の娘として、またエジプトの女王としての気韻を見せています。

またアルシノエ2世は、現存するアンティークコインにおいては「コインに初めて描かれた女性」ということになっています。

コインの裏側に描かれたコルヌコピアとは

アルシノエ2世の肖像の裏に描かれているのは、コルヌコピアと呼ばれるものです。

コルヌコピアは、西洋では古くから使われてきた「豊穣の角」と呼ばれるデザインのひとつです。

富と平和の象徴であり、具人化された「幸運」や「勝利」、そして「平和」の神たちの持ち物とされています。

アルシノエ2世のオクタドラクマ金貨は、彼女の死後に夫であり弟であったプトレマイオス2世によって発行されました。亡き女王をコインに刻んだプトレマイオス2世の思いが、そこに込められているかのようです。

また一説によれば、2本の角はアルシノエ2世と夫プトレマイオス2世の絆の深さを示すものであるとか、上エジプトと下エジプトの融合を表しているともいわれています。

刻まれた文字に見る王の愛

コルヌコピアを囲むようにして、ギリシア語が刻まれています。

 ΑΡΣΙΝΟΗΣ アルシノエ

ΦΙΛΑΔΕΛΦΟΥ フィラデルフォス

「フィラデルフォス」とは「愛姉」を意味します。つまり「愛する姉アルシノエ」と刻まれているのです。

エジプト王家が代々行っていた兄弟姉妹との結婚は、プトレマイオス2世とアルシノエ2世に始まります。「フィラデルフォス」とは配偶者となった兄弟姉妹を愛する者という意であり、王と妻を神格化することによってエジプトを統治下に置いたのです。

 

オクタドラクマ金貨(アルシノエ2世)が作られた当時の時代背景

映画や小説でよく目にする女王クレオパトラよりも、250年前に存在したアルシノエ2世。

なかなかその時代を想像するのは難しいかもしれません。

オクタドラクマ金貨の中で優美な横顔を見せるアルシノエ2世の時代について、簡単にご説明いたします。

英雄アレクサンダー大王の死後の混乱

世界史上最も名が知られた英雄の1人が、アレクサンダー大王です。

マケドニア王であったアレクサンダー大王は、エジプトからインド西部まで征服するという偉業を成し遂げ歴史に名を残しました。

しかしアレクサンダー大王が若くして亡くなった後は、領土が広すぎるための混乱が避けられませんでした。そのため、有力な部下であった3人が領土を分割、それぞれ王朝を建てたのです。

プトレマイオス朝のエジプト王国は、こうして誕生しました。アルシノエ2世は、この初代王の王女で、生まれたのは紀元前316年頃とされています。

父プトレマイオス1世は、エジプトに学問研究所や図書館を創設するなど、王として非常に優れていたと評価されています。

アルシノエ2世も、この父の教育を受けて育ったと考えられます。

2人のアルシノエの戦い

ところで、初代王の王女なのになぜアルシノエは「2世」なのでしょうか。

それは、アルシノエ2世の壮絶な人生に答えがあります。

アルシノエ2世は最初、40歳も年上のトラキア王の妃となりました。老王の死後、紀元前278年にアルシノエ2世は、実弟のプトレマイオス2世と結婚します。プトレマイオス2世には当時、同名のアルシノエという別の王妃がいました。こちらがアルシノエ1世というわけです。

2人のアルシノエは王や権力をめぐって対立、最終的にアルシノエ2世が1世を流刑に処するという形で、権力闘争に終止符が打たれました。

女王としてのアルシノエ

アルシノエ2世は、どんな女王であったのでしょうか。

言い伝えによれば、生前から自らを神格したアルシノエ2世は、政治や外交面でも優れた手腕を見せ、夫プトレマイオス2世は大いに姉であり妻でもある彼女を頼りにしていたといわれています。

ギリシア人でありながらエジプトを統治したプトレマイオス王朝は、かの有名なクレオパトラの島で300年近く続くのです。それは、王朝の初期にさまざまな制度を整えたアルシノエ2世に因るところが大きいといえるでしょう。

 

プトレマイオス朝のコインとドラクマ

▲プトレマイオス朝のコイン

実に294年も続いたエジプトの王国プトレマイオス朝。

当時のエジプトは金の産地としても有名で、古代ローマもその富を欲してエジプトを支配下にしようとしたことで知られています。

こうした事情もあったためか、プトレマイオス朝のコインの金貨は世紀を超えた今も美しく輝き、コレクターたちも入手を望むコインとなっています。

オクタドラクマとは?

オクタドラクマという言葉を聞いたことがない人もいるかもしれません。

ドラクマという貨幣単位は、ギリシアがユーロを導入する以前まで、つまり20年ほど前まで使われていた単位です。

「オクタ」はギリシア語の「8」、つまりオクタドラクマとは8ドラクマということになります。

西洋文明の基盤となったギリシアでは、早くからテトラドラクマ銀貨が流通していました。テトラドラクマ銀貨は、擬人化されたアテナイと知のシンボルであったふくろうのデザインが有名です。

ドラクマは、地中海世界では非常に価値ある貨幣として流通していたといわれています。

プトレマイオス朝のコイン

プトレマイオス朝のコインが初めて製造されたのは、紀元前323年のことでした。エジプトの造幣所は、最初はメンフィスにあり、のちにアレクサンドリアに移されたといわれています。

アルシノエ2世の金貨には、その刻印を彫った職人の洗練が見えます。また、プロメテウス2世の跡を継いだ3世の金貨は、さらに精緻な彫刻が美しく、とても2000年以上のものとは思えないほどです。

プトレマイオス朝に製造されたコインは多く、最後の女王クレオパトラの肖像画刻まれたコインも残っています。今回ご紹介しているアルシノエ2世の肖像の隣に「K」という文字が刻印されていますが、これも「クレオパトラのK」といわれています。

 

オクタドラクマ金貨(アルシノエ2世)の価格推移

数世紀を超えて輝きを失わないアルシノエ2世のオクタドラクマ金貨、価格はどのくらいになるのでしょうか。

その価格の推移を見ていきましょう。

NGC XF 5/5 - 3/5

NGC XF 5/5 - 3/5

2022年8月25日に$20,400で落札。

NGC Choice XF 5/5 - 4/5 Fine Style

NGC Choice XF 5/5 - 4/5 Fine Style

2022年8月25日に$22,800で落札。

「Fine Style」の表記の通り、お顔のストライクが美しい。

NGC Choice AU 5/5 - 4/5 Fine Style

NGC Choice AU 5/5 - 4/5 Fine Style

2022年8月25日に$26,400で落札。

こちらも「Fine Style」。

NGC Choice MS 5/5 - 4/5

NGC Choice MS 5/5 - 4/5

2022年8月25日に$78,000で落札。

歴史に残るコインのコレクターグループである「トリトン」コレクションより。

古代のコインは希少性が高い

アルシノエ2世のオクタドラクマ金貨が製造された時代は、コインはすべて手作りでした。当然のことながら、形が微妙に異なるだけではなく、製造枚数も非情に限られていたことは想像に難くありません。

この希少性の高さは、価格にも反映されます。

世界でも価格が上昇している「金」

ここ数年、金の相場そのものが上昇していることも考慮に入れる必要があります。

金貨はその美しさを愛でるコインの愛好家だけではなく、金が投資の対象となっているために、さらに需要が増えているという事実があります。

アルシノエ2世のオクタドラクマ金貨、その価格は?

アルシノエ2世のオクタドラクマ金貨の価格を見てみましょう。

実は、世界中で展開するコイン販売のサイトでも、このコインはほとんどが「Sold」。

市場に出た途端に、売れてしまうという傾向があるようです。

いくつかのサイトを参照すると、「22,500ドル(およそ330万円)」「55,000ユーロ(およそ800万円)」の価格がついています。

コインの状態、円相場によっても変化する価格ですが、いずれにしても高額になることはまちがいないようです。

 

古代女王の輝きを凝縮したコインをお手元に!

古代の女王クレオパトラに先駆けて、プトレマイオス朝エジプトに君臨し、手腕を振るった女王アルシノエ2世。彼女が作った王国の制度は、その後長きにわたってプトレマイオス朝の繁栄に貢献しました。

アルシノエ2世の死後に、夫のプトレマイオス2世によって作られたといわれるオクタドラクマ金貨には、その栄光と輝きが詰まっています。

古代のロマンともいえるこの金貨にご興味がある方は、ぜひ当社にご相談ください。

 

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