リストライク(再鋳貨)について徹底解説!コインの種類や価値の見極め方
アンティークコインには、リストライクという種類のコインがあります。リストライクとは簡単にいうと、以前発行されたコインの復刻版・再鋳貨版のことです。
リストライクコインはオリジナルよりも価格が下がり入手しやすいことや、グレードがよいものが多いなどのメリットがあります。
今回はアンティークコインを検討するなら選択肢の1つとなるリストライクコインについて詳しく解説していきます。ぜひ、コイン選びの参考にして下さい。
リストライク(再鋳貨)とは
コインのリストライクとは、英語の「Restrike/打ち直し」をしたコインのことで、日本語でいう復刻版・再鋳貨版にあたるコインのことです。
リストライクコインでは、100年~200年以上の昔に発行されたコインと同じデザイン・年代が再現されます。最近のリストライクコインは流通用とは別で記念コインとして特別に発行されたものが多いです。
コインがリストライクされるのは、
- 入手が難しい古いオリジナルコインの人気が高まった
- 人気のコインでもグレードのよいものが少ない
- 芸術的な価値が高く打ち直す価値がある
などの理由からきています。
コイン収集におけるリストライクの魅力
数え切れないほどのコインがある中、リストライクは収集や投資の価値があるのか疑問に思う方もいるでしょう。ここで、リストライクコインの魅力を見ていきましょう。
オリジナルに比べて入手がカンタン
リストライクコインは、古いものでも200年~300年程度とアンティークコインよりは歴史が浅いジャンルです。最近になって発行されたリストライクコインも結構あります。
グレードのよいコインが多いため初心者にも選びやすく、価格はオリジナルよりも遥かに安くなるケースがほとんどです。オリジナルでは現存数が極めて少なく、非常に高価なコインや、すでに博物館でしかお目にかかれないような貴重なコインがリストライクされるケースもあります。
普通なら手にすることができないようなコインが、比較的に簡単に入手できることが、リストライクコインの大きな魅力となっています。
芸術品としての美しさが担保されているのでコレクションに最適
そもそもコインがリストライクされるということは、そのコインの人気が非常に高いことや、芸術的価値が高いことの証明でもあります。
リストライクコインでは、著名なコインデザイナーが手がけた幻の傑作も少なくありません。各国の貨幣造幣局の管理のもと、当時の美しいデザイン・形状が、最新の技術を駆使して忠実に再現されています。
優れた芸術品としての美しさが担保されているリストライクコインは、多くの投資家・収集家にとって最高のコレクションとなり得るのです。
リストライク(再鋳貨)を購入する場合の注意点
入手が容易なことや芸術的価値が高いことがリストライクの魅力になっていますが、いざ購入する際には、いくつか注意点があるので確認しておきましょう。
希少性が高いものを選ぶ
それぞれのリストライクコインの発行数は多いものから少ないものまで様々です。
通常のモダンコインやアンティークコインのように、リストライクコインも人気度・希少性によって価格が左右されていきます。オリジナルでいかに高額な値がついているとしても、発行数が多いものはそれなりに価値も低くなってしまいます。
希少性が高く人気があるリストライクコインを選ぶことが値上がりを狙うコツです。
カタログ等で「BV」と記載のあるものは避ける
また、アンティークコインやリストライクコインの中には、BV(Bullion Value)で売買されているコインがあり注意が必要です。
BVとは、金や銀などの貴金属そのものの価格をg数で表示したもので、基本的にそれ以外のコインの付加価値がないものに表示されています。
グレードが低いコインや芸術的価値がないコインに多く見られる価格表示法となるので、避けておいた方が無難です。
参考:BV Grade - US, World, and Ancient Coins|NGC
自分が好きなデザインを選ぶ
そして、リストライクコインを投資として捉える時の重要なポイントは、長期的な視野で取り組むことです。
なぜなら、リストライクも含めてアンティークコインが現在の相場から値上がりするには、長い年月を要するからです。時間が経つことで希少価値や人気が高まり、コインの価格が数倍、数十倍、時には数百倍と値上がりすることが期待できるわけです。
持っているだけで、眺めているだけで誇らしくなるような、好きなデザインのコインを選ぶことが大切です。愉しみながら取り組むことがコイン投資で後悔しないコツだといえます。
価値低めのリストライク
具体的にどんなリストライクコインがあるのか、まずは比較的に入手しやすい価格のものをいくつかご紹介していきます。
フランツ・ヨーゼフ1世の4ダカット金貨(リストライク)
最初にご紹介する1枚は、1915年フランツ・ヨーゼフ1世の4ダカット金貨です。フランツ・ヨーゼフはハンガリー国王もかねたオーストリア皇帝(1848年~1916年)。68年に渡る長い在位期間にて、国民からは「不死鳥」と呼ばれ絶大な支持を得ていました。
不死鳥を思わせる豪華絢爛たるデザインが印象的なコインです。海外のオークションサイトHERITAGE AUCTIONSによると、2018年にはMS67のグレードのこのコインが約5,6万円で落札されていたのが、2021年3月には約20万円で落札されています。3年間で約4倍の価格に値上がりしてる点に注目です。
1915年オーストリア100コロナ金貨(リストライク)
続いてこちらもフランツ・ヨーゼフ1世のリストライクコイン、1915年100コロナ金貨です。表面は英国コインを思わせるような晩年のフランツ・ヨーゼフの高貴な肖像、ステファン・シュワルツによるデザイン。
このタイプの100コロナ金貨は1909年~1914年にかけて5年間のみ発行され、1915年版はリストライクのみとなるのが大きな特徴です。HERITAGE AUCTIONSではMS65のグレードで2018年に13万円程度、2021年に20万円程度の値がついています。入手しやすい今のうちに手にしておきたいリストライクです。
1925年ジョージ5世ソブリン金貨
こちらのストライクコインは、1925年のジョージ5世ソブリン金貨。このリストライクコインは1949年、1950年、1951年に新しい年代のソブリン金貨を準備する時間がなかったため、緊急策として1925年版がそのまま使われたという異例のケースです。
コインの縁の高さからリストライク版が判別できます。最近の価格相場は約10万円程度。実はオリジナルよりもリストライクの方が発行数が少なく、現在ではリストライクの方が高い値で売買されています。今後の値上がりが期待できる1枚です。
価値の高いリストライク
最後に、すでに驚くほど高額な値がついているリストライクコインを参考までにご紹介しておきましょう。
1804年アメリカ1ドル シルバーダラー
伝説ともなっているリストライクコインは、1804年アメリカ1ドル銀貨です。米国のアンティークコイン業界では「King of Coins/キング オブ コイン」とも呼ばれている存在で、現存するコインは世界で20枚程度だといわれています。
コインコレクターをターゲットにリストライクされたは1859年。裏面の刻印に若干の違いがある「Class II(クラス2)」と「Class III(クラス3)」の2つのタイプが発行され、「Class III」の方が少なく、そのうちの1枚が2017年の米国のオークションで何と3.7億ドルで落札されました。コイン投資の夢を描いたような参考事例です。
参考:1804 Draped Bust Silver Dollar All Varieties Coin Value Prices, Photos & Info|USA COIN BOOK
1836年ゴブレヒト・シルバーダラー
そして、こちらのリストライクは1938年のゴブレヒト1ドル銀貨です。ゴブレヒトという名称はコインデザイナーであるクリスチャン・ゴブレヒトの名前からきています。ゴブレヒト銀貨は1836年、1838~39年しか発行されていないため非常に希少価値が高いコインの1つです。
とくに1836年のオリジナルは1,000枚程度と少なく、星の数や配置にいくつかパターンがあり、当時からコインコレクターを魅了し続けています。1850年代に、人気が高かったことからごく限られた数のリストライク版が発行されました。現在は1500万円程度で売買されています。資金に十分な余裕がある方は、この辺のレベルにチャレンジするのもありですね。
参考:Gobrecht Silver Dollars – The Most Misunderstood Coin|COIN WEEKS
まとめ:リストライク(再鋳貨)について知ろう
リストライクコインは、過去に人気があったコインや芸術的価値が高いコインの復刻版です。そもそも、ある程度のニーズを見込んで発行されるため、値上がりが期待できる一方では発行数が多すぎると価格が上昇しづらい結果となります。
希少価値が高く、将来的な人気が見込めるもの、かつ長く付き合っていける好きなデザインのリストライクを選ぶことが大切です。
どんなリストライクがあるのか、オリジナルはどんなコインなのか、まずは気軽に調べてみることから始めてみましょう。