帝政ロシアの栄光を伝えるファミリールーブル!皇帝一家の睦まじさを刻んだコインとその時代

ニコライ1世の肖像

「ヨーロッパの憲兵」といわれるほど厳格な皇帝であったニコライ1世の肖像

 

ロシアの帝政時代。

そのきらびやかさは、日本でも開催されるエルミタージュ美術展等でご存じの方も多いかもしれません。

その帝政ロシアの繁栄の象徴ともいえるコイン、それが本日ご紹介するファミリールーブル銀貨です。

1836年に発行されたコインには、当時の皇帝ニコライ1世と彼の家族がデザインされています。ファミリールーブルと呼ばれるゆえんです。

専制君主のイメージが強いロシアの皇帝の時代に、なぜこの家族愛あふれるファミリールーブルコインが生まれたのか。

コインの特徴とともに、その時代背景もご紹介したいと思います。

 

ニコライ1世 戴冠10周年銀貨

ニコライ1世 戴冠10周年記念銀貨

基本データ

コイン名 ニコライ1世 戴冠10周年記念銀貨
通称 ファミリールーブル
発行年 1836年
ロシア帝国
額面 1½ Ruble = 10 Złotych
種類 銀貨
素材
発行枚数 П.У. 150枚|Р.П. УТКИНЪ 50枚|ノボデル(リストライク)は不明
品位 Sv868
直径 40.0mm
重さ 31.1g
統治者 ニコライ1世
デザイナー Paul Utkin(ポール・アトキン)
KM -
表面のデザイン ニコライ1世右向き肖像
表面の刻印 ½ РУБЛЯ. 10 ZŁOT. 1836 П. У.(1 1/2 Rouble 10 Złotych P. U.=1 1/2ルーブル・10ズウォティ デザイナーのイニシャル) ※イニシャル表記は2種類あり、イニシャルが無いものがノボデル(リストライク)
裏面のデザイン 中心にアレキサンドラ妃の右向き肖像、周りにその子供たち
裏面の刻印 -
エッジのタイプ リーデッド
エッジの刻印 -

 

ロシアのファミリールーブル銀貨とは?

ロシアで発行されたコインのなかでも、名品の呼び声が高いファミリールーブル銀貨。

まずはこのコインの特徴と魅力を見ていきましょう。

ニコライ1世即位10周年記念に発行されたコイン

ファミリールーブル銀貨が発行されたのは、1836年のことでした。

1825年に29歳でロシアの皇帝となったニコライ1世の、即位10周年を祝って発行されたものです。

当然、銀貨にはその主役、ニコライ1世の横顔が彫られています。

しかしこのルーブル銀貨を名品たらしめているのは、裏面に彫られた皇帝の家族たちにあります。

王や皇帝が個人で、あるいは夫婦で、または擬人化された国家とデザインされることが多いコインの中で、妻と7人もの子供たちがともに描かれたコインは、非常に珍しいといえるでしょう。

バイエルン王ルートヴィヒ1世のコインがヒントに

ロシアで発行されたコインのなかでも、最も美しいといわれるファミリールーブル銀貨。

その発行の発端となったのは、バイエルン王国で1828年に発行されたターレル銀貨の存在でした。

バイエルン王ルードヴィヒ1世とその家族が刻まれたコインは、ドイツに赴任していたロシア大使によってエルミタージュ・コレクションに加えられたのです。

このデザインが気に入ったニコライ1世は、自らの即位10周年の記念にルーブル銀貨を発行することを決定、プロイセン出身の皇后アレクサンドラと7人の子供たちがモデルとなったのです。

ニコライ1世自身もデザインにこだわり、バイエルン王のコインとは異なる仕様になるよう腐心しました。妻アレクサンドラの姿をもっと若々しくと注文したという話も残っています。7児の母であったアレクサンドラ皇后は当時36歳、その妻を思いやるニコライ1世自身も、貴紳にふさわしい姿を見せています。

ファミリールーブル銀貨の発行枚数が少ない理由

ニコライ1世の肖像画の下には、「Р.П. УТКИНЪ」の文字が見えます。

これは、このコインをデザインしたパーヴェル・ウトキンの名前です。ウトキンは当時の帝国芸術アカデミーを卒業、サンクトペテルブルク造幣局で職人として名を馳せていました。

皇帝の家族の肖像が主役のコインに刻まれている文字はそのほか、ルーブル銀貨の価値を示す数字と発行年「½ РУБЛЯ. 10 ZŁOT. 1836 П. У.」だけです。

特筆すべきは、ニコライ1世のファミリールーブル銀貨の発行数です。

このコインは、通貨として世に出回ることを目的として発行されたのではありません。皇帝から家臣へ、あるいは国賓への贈り物として使用される目的を持っていました。

そのため、発行されたのはわずかに150枚

上流階級だけが手にすることだけができる銀貨であったわけです。

 

ファミリールーブルが作られた当時の時代背景

エルミタージュ宮殿

ロシア帝国の首都サンクトペテルブルクにあるエルミタージュ宮殿

ファミリールーブル銀貨発行当時のエピソードは微笑ましいものがありますが、実際のニコライ1世はどんな皇帝だったのでしょうか。

輝かしいロマノフ王朝は当時どんな状況にあったのか、ファミリールーブル銀貨の時代背景を探っていきましょう。

ロシアを大国へと導いたロマノフ王朝

ロシアの歴史は複雑で、なかなか把握しにくいものがあります。

いくつかの公国時代、そして動乱の時代を経て、ピュートル1世が皇帝となった18世紀初頭から、帝政ロシアの時代が始まります。

ロマノフ王朝と呼ばれたこの時代、啓蒙専制君主であったエカチェリーナ2世や、ナポレオンを破ったアレクサンドル1世などの英傑が登場し、ロシアを強国へと導いています。

ファミリールーブルコインを発行したニコライ1世は、エカチェリーナ2世の孫であり、アレクサンドル1世の弟でした。

「ヨーロッパの憲兵」にして専制君主

皇帝の息子とはいえ3男であったニコライ1世は、本来は皇帝とは縁の遠い皇子でした。

兄アレクサンドル1世の急死、次兄の皇帝就任拒否などの偶然が重なり、ニコライ1世は1825年に皇帝となります。

当時のヨーロッパはナポレオンが死去し、フランス革命から始まった自由主義が広がろうとしていた時代です。

アメリカ合衆国もヨーロッパからの独立を宣言するという風潮の中、ニコライ1世は「ヨーロッパの憲兵」として絶対主義を信奉し、国内にも国外にも厳格な態度で終始しました。

教育や司法行政にも積極的に関与したニコライ1世でしたが、世界を席巻しつつあった自由主義と近代化に後れを取り、治世30年のあと1855年、ロシアの情勢に心を痛めながら亡くなったと伝えられています。

幸せだった夫婦生活

18ニコライ1世の妻アレクサンドラと長男アレクサンドル、長女マリア

1820年頃のニコライ1世の妻アレクサンドラと長男アレクサンドル(のちの皇帝)、長女マリア

国内外でさまざまな問題を抱えていたニコライ1世ですが、厳格な真面目な性格は家庭生活には幸せをもたらしたようです。

2歳年下の妻アレクサンドラはプロイセン出身、芸術や文学を愛する快活な女性で、真面目なニコライ1世とは好一対でした。

2人の間には次々と7人の子供が生まれ、長男がアレクサンドル2世として皇帝となります。当時としては珍しく、婚外子の存在も認められないニコライ二世の私生活は、コインに描かれた家族によって満たされていたのでしょう。

コインにデザインされているニコライ1世も、「ヨーロッパの憲兵」という通称にふさわしからぬ、優しい家庭人の顔をして見えます。

 

ファミリールーブルの現在の価格相場

通貨としてではなく、記念メダル的な要素があったといわれるニコライ1世のファミリールーブル銀貨。

発行当初から特権階級しか手にできなかったという事情があります。

はたして、ニコライ1世のファミリールーブル銀貨の価格相場はどのくらいになるのでしょうか。

高額になる理由がいくつか存在する!

ニコライ1世のファミリールーブル銀貨は、高額になる理由がいくつか存在します。

  • 発行年数は1836年の1年だけ
  • 発行枚数は推定でたったの150枚
  • ロシアのアンティークコインの中ではひじょうに人気が高い

以上を念頭において、ニコライ1世ファミリールーブル銀貨の価格相場を知っていただきたいと思います。

ファミリールーブル、現在の価格相場

市場に出回ること自体がまれなファミリールーブル、現在世界のアンティークコインを扱うサイトでの価格を見ると、

€50000(約680万円)~€60000(約810万円)

$75000(約1千万円)~$125000(約1650万円)(換算レートは2022年8月現在のもの)

などなど、状態等の条件にもよりますが軒並み高額となっています。

コインの価格推移

発行枚数も150枚と少ないため、オークションでも見かけることは稀です。特にスラブに入っているコインは更に少ないため、気になる方はぜひご入札を。

AU58

AU58

2021年1月21日に$52,800で落札。

MS61

MS61

2012年1月3日に$57,500で落札。

MS62

MS62

2021年1月のオークションで$78,000で落札。

19世紀の激動の世界を感じる芸術品!

ニコライ1世のファミリーコイン、大変な高額での取引が多いのが実情です。

発行当時の事情、歴史的価値、美術品としての完成度の高さなどを考慮すれば、これも意味ある価格といえるかもしれません。

世界が大きく変わろうとしていた19世紀の歴史を秘めた芸術品として、手元に置きたいと思われる方は少なくないことでしょう。

 

まとめ

絢爛豪華なロマノフ王朝の歴史の中から生まれたファミリールーブル銀貨。

ロシアの皇帝ニコライ1世が、自らの在位10周年を記念して、1936年に発行した貴重なコインです。

皇帝の品格を感じさせるニコライ1世の肖像画の裏面には、彼が愛した妻子の姿がデザインされています。

皇帝としては厳格であったニコライ1世が、贈り物にすることを目的に発行した希少性の高い芸術品。

ニコライ1世ファミリールーブル銀貨にご興味を持たれたかたは、ぜひお気軽にご相談ください!

 

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