テトラドラクマ銀貨とは?美しい女神のコインと古代ギリシアの歴史を探る

アテネテトラドラクマ銀貨

基本データ

コイン名 アテネ テトラドラクマ銀貨
通称 テトラドラクマ
発行年 紀元前454年〜320年
アテネ(アッティカ)
額面 1テトラドラクマ=4ドラクマ
種類 銀貨
素材
発行枚数 -
品位 -
直径 25 mm
重さ 17.04 g(前後する場合あり)
統治者 -
デザイナー -
KM -
表面のデザイン 戦闘用のヘルメットをかぶった右向きのアテネ神
表面の刻印 -
裏面のデザイン フクロウとオリーブ、三日月
裏面の刻印 AΘΕ(ギリシャ語でアテネ)
エッジのタイプ スムース
エッジの刻印 -

 

テトラドラクマ銀貨の普及と古代ギリシアの首都アテネ

パルテノン神殿

▲ギリシア アテネのパルテノン神殿

テトラドラクマ銀貨が普及し始めたのは、紀元前6世紀後半~5世紀あたりの古代ギリシアのアテネ。時代はちょうど古代オリエントのリディア王国、ペルシア帝国からギリシア・アテネへと移り替わろうとしていた時でした。

古代オリエント世界で主流だったスターテル金貨の流れを受け、テトラドラクマ銀貨はアテネを舞台に広大な地域に渡って華やかに展開していきます。テトラドラクマ銀貨の歴史的背景を探っていきましょう。

古代ギリシア 現代民主主義の基盤

古代地中海諸国地図

▲古代地中海沿岸諸国

ギリシアの歴史は古く、紀元前40万年前に遡るといわれています。ここでいう「ギリシア」とは紀元前6世紀~3世紀にかけてアテネを中心に発展を遂げた古代ギリシア時代のことを指します。

古代ギリシアは複数のポリスと呼ばれる都市国家(ポリス)によって形成され、現代の民主主義の基盤となる政治形態が確立された時代でもあります。4世紀に入ったアテネではマケドニア王国出身のアレクサンドロス3世が国王の座につき、頭角を現し始めていました。

エーゲ海、地中海を囲んだ古代オリエントの国々では、長きに渡って貿易・流通が栄え、と同時に支配権を争う幾多の戦争が相次いでいました。紀元前5世紀から4世紀にかけて古代オリエントを支配したのは巨大な領土を持つペルシア帝国でした。

ペルシア帝国の最後の国王カンビュセス2世は、ギリシア征服を狙います。しかし、紀元前334年アレクサンドロス3世の率いる軍に敗れ、ギリシアが君臨する時代が始まったのです。

アレクサンドロス3世はペルシアをはじめ、小アジアやエジプト、メソポタミア一帯を征服・統一し「アレクサンドロス帝国」と呼ばれる大帝国を短期間で築き上げていきます。

首都アテネ 政治と文化の中心

古代ギリシアの主要都市はアテネ。世界史上初めてのオリンピックが開催された土地でもあり、ギリシアの経済や産業、政治と文化の中心となった都市です。ソクラテスやプラトン、アリストテレスなどの偉大な哲学者を輩出しています。

アテネは西洋文明の芸術と学問、哲学の始祖として栄え、パルテノン神殿やアクロポリスなど数々の歴史的モニュメントを残しています。

古代ギリシアの貿易と取引

もともとギリシアは半島や諸島で構成された国です。ペルシアやエジプトに比べて大規模な穀倉地帯に欠け、古代ギリシアでは穀物の大半を近隣国から輸入する必要がありました。小麦などの穀物以外にも木材や鉄鋼、奴隷などを輸入。そしてギリシアの主産業となる陶器とオリーブ油、ワインなどの輸出で財政のバランスをとっていました。

アテネでは貿易産業がこれまでになく著しく発展し、貿易のためのエンポリウムと呼ばれる交易港が設置されました。そこで、他国との貿易や国内での商取引にあたって主要通貨となったのが、ギリシア政府が発行するテトラドラクマ銀貨です。

テトラドラクマ銀貨と通貨単位

テトラドラクマとは「ドラクマ」と呼ばれる古代ギリシアの通貨単位の1つで、テトラドラクマは「4ドラクマ」のことです。1ドラクマは4.3g、2ドラクマは8.6g、テトラドラクマは17.2gです。

アッティカ地方には豊富な銀鉱山があったため、従来のスターテルに変わって銀が通貨の素材に採用されるようになったようです。

古代ギリシアの首都アテネと古代ローマ

アレクサンドロスが大帝国を築いた時代には、多くの領土国において、古代ギリシア・アテネを模倣した都市が生まれました。古代ギリシアの文化と精神を受け継ぐ代表的な都市の1つがイタリア・ローマです。

古代ローマは、紀元前700年頃に設立されたイタリアの小さな地方都市でした。紀元前500年以降にギリシアとアフリカやのヨーロッパ諸国への中継地点として商業や産業が発達していきました。紀元前300年~200年代に入るとローマでも多数のテトラドラクマ銀貨が製造されました。そして紀元後に近づくにつれ、時代はやがてギリシアからローマへと移行していきます。

 

人気のテトラドラクマ銀貨

それでは、古代ギリシアを代表するテトラドラクマ銀貨をご紹介します。

1. アテネとフクロウとオリーブ銀貨

古代ギリシアのテトラドラクマ銀貨で最も有名なのが「女神アテネとふくろう」のコインです。当時は、丸く平らな銀を刻印と刻印の間に置き、ハンマーでたたく方法で作っていました。刻印の大きさに対して銀の量が多かったためか、裏側は刻印からはみ出た銀が盛り上がっています。

表はオリーブの冠をかぶったギリシア神話の女神アテネ(アテナイ)の肖像。

女神アテネは知恵・芸術・工芸・戦略をつかさどる女神で、アルテミスとヘスティアーと並ぶ三大処女神としてもよく知られています。また主要都市アテネのシンボルとして刻まれています。目はアーモンド形。微笑むアテネ像は古典期の芸術様式がそのまま反映されています。頭にはオリーヴ紋様が施されたアッティカ式の兜を被り、大きな耳飾りと首飾りを身につけています。また、額の付近にはとても小さなの三日月がデザインされています。

裏面にはアテナ神の聖鳥フクロウが表現されています。左側にはオリーヴと三日月、右側にはアテネを示す「ΑΘΕ」がギリシア語で刻まれています。コインに刻まれたフクロウは正式には「コキンメフクロウ(英名:Little Owl)」で、ラテン語の学名では「Athene Noctua」と呼ばれます。

女神アテネとふくろうのコイン

右画像のように切れ込みが見られるものがあります。これは「テストカット」という、流通先で銀の含有量と真贋を見極めるためにカットしたものです。

時代ごとにデザインのバラエティーがありますので、少しずつ違うデザインをコレクションするのもいかがでしょうか。

価格相場:出土の量が大変多く、マーケットに流通している量も鑑定数も多いため、未鑑定のものは10万円以下で購入できるものもあります。紀元前のコインだけに、未使用クラスでグレードが高いものは数百万円以上の値がつくこともあります。

2. テトラドラクマ銀貨 武装したアテネとフクロウ銀貨(BC500~480年)

武装したアテネとフクロウ

アテネとフクロウのモチーフを使用したバリエーションがたくさんあるため、その中から「武装したアテネとフクロウ」をご紹介します。紀元前500年~480年あたりに製造されたもので、「アテネとフクロウ銀貨」の初期版になり、非常にレアな古代ギリシアのコインです。

武装したアテネがコインに登場するのは紀元前515年から。当初の武装したアテネはやや稚拙な図柄であるのが特徴。紀元前500年以降から、上記のように立体感に優れたアテネの肖像が描かれるようになります。

裏面は羽根を閉じたフクロウと垂れ下がったオリーブとベリーがデザインされています。

2020年1月13日に$13,200で落札されました。

価格相場:武装したアテネのテトラドラクマ銀貨は希少価値が高く、劣化が目立つものでも数百万円はします。極美品以上のクラスになると500万円以上で売買されています。

3. イオニア・レベダスの「ステファノフォリ」テトラドラクマ銀貨

ステファノフォリ(花輪の持ち主)

この銀貨は、こん棒にとまるフクロウが花輪に囲まれているため、「ステファノフォリ」(花輪の持ち主)と呼ばれるようになりました。このタイプは、アテネの新しいスタイルのコインとして発行されました。

この銀貨が発行されたイオニア同盟の 12 の都市の 1 つであるレベドスは、温泉で知られるリゾート都市でした。人口は半島の一部に集中しており、このコインの流通範囲は限られていたため、希少なものとなりました。繊細なヘルメットを身に着けているアテナも、大変美しいデザインです。

このコインは、ローマの古典芸術が台頭する前の、ギリシアの貨幣芸術の最後の偉大な開花を表しています。

 

アテネ フクロウ テトラドラクマ銀貨の価格推移

古代のコインは現代に比べると製造クオリティも高くないため、状態も様々です。Strike(刻印の状態)とSurface(摩耗の程度)の数字が高く、両面が正位置になっているものが人気です。

 AU Strike 5/5 Surface 3/5 brushed

AU Strike 5/5 Surface 3/5 brushed

2022年7月27日に$630で落札。

おそらくギリシア東部の発行。

「brushed」というブラシで磨いた跡があるという評価が付いているため、あまり価格も高くありません。

MS Strike 4/5 Surface 4/5

MS Strike 4/5 Surface 4/5

2022年7月27日に$1,560で落札。

「MS」という未使用の評価がついていて、銀色も美しく残っている状態です。

MS★ Strike 5/5 Surface 5/5

MS★ Strike 5/5 Surface 5/5

2021年10月29日に$13,200で落札。

裏側のスラブが上下逆になっていることからわかるように、現代の製造技術とは違い、正確さが欠けているところも古代コインの魅力です。

表面のアテネの横顔も欠けることもなく刻印されているため、「MS★」の評価が付いています。

 

多彩な古代ギリシアのテトラドラクマ銀貨

古代ギリシアのテトラドラクマ銀貨は実に多彩で、アテネ以外で製造されたものもあれば、モチーフや図柄も稚拙なものから芸術的なものまで様々です。

アンティークコインの売買やコレクションで成功するためには、単に古い通貨で入手が難しいものを選ぶだけでは高い投資効果は期待できません。例えば、古代ギリシアにおいては人気が高いテーマ、美術的価値にすぐれた図柄、そして状態が美しいコインを選ぶことが大切です。

今回ご紹介した「アテネとフクロウ」は、ともに永久不滅の歴史のテーマでもあり、比較的入手しやすいため、おすすめです。コレクションをしていくうちに、年月ともに、希少価値・美術的価値はますます高くなることが期待できるでしょう。

 

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