消滅した国のコイン!チベット 20スラング金貨とは?

ヒマラヤ山脈の北側に位置するチベットは、周辺の国々と様々な影響を与え合って来た複雑な歴史を持っています。
今回ご紹介する20スラング金貨は、そんなチベット「唯一」の金貨です。
チベットの複雑な背景を紐解きながら、このコインの歴史を辿っていきましょう。
チベット 20スラング金貨

基本データ
| コイン名 | チベット 20スラング金貨 |
|---|---|
| 通称 | ユキヒョウ 20スラング金貨 |
| 発行年 | 1918-1921年 |
| 国 | チベット |
| 額面 | 20srang |
| 種類 | 金貨 |
| 素材 | 金 |
| 発行枚数 | 920万枚以上 |
| 品位 | - |
| 直径 | 28.0 mm |
| 重さ | 10.91 g |
| 統治者 | ダライ・ラマ13世(トゥプテン・ギャツォ) |
| デザイナー | - |
| カタログ番号 | Y# 22, L&M# 1063, Kann# 1587, Hsu# 26, Fr# 1 |
| 表面のデザイン | 左向きのユキヒョウ、その上下にチベット文字、仏教の八吉祥(白い宝傘、法螺貝、宝瓶、勝利幢、法輪、金魚一対、無限結、蓮華) |
| 表面の刻印 | རབ་བྱང ༡༥ སོ ༥༣ (第15ラプチュン暦/第15年) |
| 裏面のデザイン | 円の中に花、その周囲をチベット文字が取り囲んでいる |
| 裏面の刻印 | ༄། དགའ་ལྡན་ཕོ་བྲང་ ཕྱོ་ ལས་རྣམ་ རྣམ་རྒྱལ། ཏམ་ སྲང་ ༢༠ (四方に勝利するガンデン宮殿、20タム・スラン) |
| エッジのタイプ | Reeded |
| エッジの刻印 | - |
複雑なチベットの歴史
現在は中国の自治区のひとつとなっているチベット。そこには、古くからの歴史と複雑に絡み合う背景がありました。その変遷を見ていきましょう。
チベットの始まり

▲標高3,700mに位置するポタラ宮。チベット初の統一王国(吐蕃)時代の遺跡を増補、拡充し建設された。
チベットの歴史は紀元前127年にはじまり、古くは7世紀の王、ソンツェン・ガンポの時代に吐蕃(とはん)と呼ばれる国が始まり、唐とインドの両方の影響を受けてチベット仏教が定着していきました。
その後氏族教団という比較的小さい規模での勢力争いの時代を経て、13世紀からは、モンゴルとの関係を持ちながらチベット(サキャ派)という国はおぼろげながらも存在していました。

そんなチベットの首都ラサは、南にヒマラヤ山脈を望み、パミール高原の東に位置しています。
チベット族が住み、チベット仏教を信仰し、17世紀半からは法王ダライ・ラマによる政教一致とした支配が行われていました。
独立と侵略の歴史
18世紀には清の主権下に置かれることとなりました。しかし清王朝の衰退とともに、中央アジア方面から南下するロシアの勢力や、アヘン戦争以来たびたびチベットへ侵攻して来ていたイギリスが進出するようになり、チベットは植民地化の危機に晒されることとなります。
1912年、辛亥革命によって清が崩壊すると、チベットは事実上の独立状態(排他的実行支配)となります。
そして1913年、指導者であるダライ・ラマ13世は独立宣言を出し、ダライ・ラマ14世とともにチベットを統治します。

▲ダライ・ラマ13世
しかしそんなチベットに、1950年、「清朝のチベット統治権を継承する」と主張していた中国から人民解放軍が入ります。
そしてその翌年1951年には、「もともと中国だった」という理由により、チベットは中国の一部となる「17条協定」を結ぶことになるのです。
これによりチベットの自治、ダライ・ラマら高僧の地位と職権の維持、宗教・風俗の保護、首都ラサへの人民解放軍の駐屯などを条件として、チベットは中華人民共和国に併合されます。「受諾を拒否すればラサを攻撃する」という脅しに屈せざるを得なかったとも言われています。
このように複雑な事情から、現在「チベット自治区」と呼ばれる場所が生まれ、今なお360万人の人々が暮らしています。
チベット仏教の指導者「ダライ・ラマ」

▲ダライ・ラマ1世
チベット仏教の僧である「ダライ・ラマ」は14世紀まで遡ることができます。
ダライ・ラマとは、代々受け継がれてきたチベット仏教の指導者を指し、観音菩薩の生まれ変わりとされています。
ダライ・ラマは世襲制ではありません。
ダライ・ラマが没すると、その遺言や託宣、占いなどを元に、僧たちによって次のダライ・ラマが捜索されます。
予言に合致する子どもの候補者が見つかると、その候補者が本当の化身かどうかを試す方法として、先代のダライ・ラマの遺品と全く同じコピー品を目の前に差し出し、きちんと先代のダライラマの遺品を選べるかどうか、といった素質が問われる試験が行われます。
そうした数々の試験をクリアした子供が、新しいダライ・ラマとして認定されるのです。
現在のダライ・ラマは14代目

ダライ・ラマ14世は本名をテンジン・ギャツォといい、その意味は「知恵の大海」です。
1959年、人民解放軍の追っ手から逃れ美しいポカラ宮を脱し、インドへ亡命した当時のダライ・ラマ14世は若干23歳でした。

▲若かりしころのダライ・ラマ14世
中国政府との衝突のあと消息が不明となっていましたが、突如としてインドに姿を現しました。6,000メートルを超えるヒマラヤの雪山を家族をしたがえて裸足で越えてきたそうです。
その最中に時のインドの首相、ネルーから亡命を受け入れるという一方が届き、秘密裏に現在の亡命政府があるダラムサラへと辿り着いたのです。

▲インドのヒマーチャル・プラデーシュ州の一角に位置するダラムサラ
ダライ・ラマ14世は、世界平和やチベット宗教・文化の普及に対する貢献が高く評価され、1989年にノーベル平和賞を受賞しています。
そのほか、2010年にアメリカ合衆国政府から民主主義功労勲章を授与され、2012年には宗教界のノーベル賞である、イギリスのテンプルトン賞を受賞しています。
このようにダライ・ラマ14世は、その平和への取り組みや、チベット仏教圏に影響力をもつ宗教的・政治的権威とを兼ね備えた存在として、世界的にも評価されています。
日本にも何度も訪れているダライ・ラマ14世
ダライ・ラマ14世は幼少期、オーストリアの世界的登山家ハインリヒ・ハラーとの交流がありました。彼との友情と美しい日々は、名作映画「セブン・イヤーズ・イン・チベット」に描かれています。

▲ブラッド・ピット主演「セブン・イヤーズ・イン・チベット」
また、ダライ・ラマ14世は、日本にも何度か訪れています。
日本に来て必ず飲むのは「紅茶花伝」のホットだそうですが、待ちきれずにすぐに開けて飲んでしまうほど大好きだそうです。インドのチャイにも勝るものなのでしょうか?

▲紅茶花伝を飲んで笑顔のダライ・ラマ14世
いつもかけているメガネは、日本にいる友人からのプレゼントだそうです。

このように、遠いかの地の法王と日本は繋がっているのですね。
希少なチベットのコイン
チベットで唯一発行された金貨である「 20スラング金貨」はどのような金貨なのでしょうか。詳しく見て行きましょう。
チベットが独立した当時の世界情勢
チベットが独立宣言を出した当時の世界情勢は、1914年に起こった「サラエボ事件」を発端に第一次世界大戦が始まるという不安定な状態となっていました。
そのため、この時代のチベットの金貨はありません。
金地金を調達して金貨を発行するのは、国も経済も余裕がないとできないことなのです。
チベット 20スラング金貨とは?
ダライ・ラマ法王がインドに亡命する1959年まで、このコインは国内で使用されていました。
発行されたのは1918年〜1921年までのたった3年間のみ。それぞれ刻印にドットがあるものとないものが存在しています。
重さは10.91g、直径は28mmと日本の五百円玉より気持ち大きめです。表の真ん中には絶滅危惧種のユキヒョウが刻印され、その可愛さから非常に人気の高いコインです。

▲絶滅危惧種ユキヒョウ。ヒマラヤ山脈など限られた地域に生息している
周りには仏教の 8 つの縁起の良いシンボルである王権の象徴である白い日傘、ホラ貝、宝の花瓶、勝利の旗、法輪、ペアの金魚、無限を意味する結び目、と蓮の花が刻印されています。見た目は非常に可愛いですが、価格はどんどん上昇しています。歴史と可愛さを兼ね備えた人気コインなので、手に入れたい!という方はお早めの購入をおすすめいたします。
チベット 20スラング金貨の価格推移
それでは、気になる価格推移を見て行きましょう。
MS62

2023年8月7日に$18,600で落札。
落札履歴を遡ってみると、2009年には2,760ドルだったので、なんと13年間で6倍以上になっています。人気が急上昇していることが分かります。

MS64

2023年12月9日に$22,800で落札。
こちらも2015年には約5,000ドルだったということで、約9年で4倍以上の価格になっていることが分かります。

MS64+

2023年1月21日に$36,000で落札。
先ほどの64よりもほんの少しのグレードの差で、ここまで価格が違って来ます。
ちなみに、同じグレードのMS64+ですが、2018年1月のオークションでは$6,600でした。なんと5年で6倍です。コインは欲しい時が買い時です。
ちなみに、銀のパターンもあります。
SP61

2023年6月21日に20,400ドルで落札。
まとめ:激動の歴史を辿ったチベットのコイン

激動の歴史を辿ったチベットから発行された、かわいいユキヒョウの20スラング金貨。
希少性という魅力は勿論、ダライ・ラマやチベットの人々の思いも感じ取れるようなコインです。
平和への願いを込めて、お手元にお迎えしてはいかがでしょうか。
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