エリザベス2世ギリックソヴリン金貨の深い魅力を探る─イギリス王室が誇る威厳と伝統

 

セシル・ビートンが撮影した戴冠式の公式写真

27歳の若きエリザベス2世女王は戴冠式の場で私の人生が長くても短くても、生涯、公務に我が身をささげることを皆さんの前で誓いますと国民に尽くすことを宣言しました。

変動する時代の中で、世界中から愛されたイギリス女王。その姿勢は多くの人々の心に刻まれています。

世界中の人々に慕われ愛されてきたイギリスの女王、エリザベス2世。

本稿ではエリザベス2世ギリック肖像のソヴリン金貨を起点に、コインの背景に広がる歴史と彼女の歩みを紐解きます。


イギリス エリザベス2世 ギリックソヴリン金貨

基本データ

コイン名 イギリス エリザベス2世 ギリックソヴリン金貨
通称 ギリックソヴリン
発行年 1957年-1968年
イギリス
額面 1 Sovereign
種類 金貨
素材
発行枚数 4,558万3,000枚
品位 Gold (.9167)
直径 22.05mm
重さ 7.99g
統治者 エリザベス2世
デザイナー Mary Gillick
カタログ番号 KM# 908, Sp# 4124, 4125
表面のデザイン 月桂冠を冠ったエリザベス2世の肖像、周囲にレジェンド
表面の刻印 +ELIZABETH·II·DEI·GRATIA·REGINA·F:D: (神の恩寵によるエリザベス二世 信仰の擁護者である女王)
裏面のデザイン 竜を退治する馬上の聖ジョージ、年号
裏面の刻印 1957 B.P.
エッジのタイプ Reeded
エッジの刻印 -

イギリス エリザベス2世 ギリックソヴリン金貨とは?

エリザベス2世のギリックソヴリン金貨は、イギリス王室の象徴であり世界に誇るコインのひとつと言われています。ここでは、この金貨についてご案内いたします。

若き女王の威厳を映したエリザベス2世ギリック肖像

1957年に発行されたこの金貨の表面には、王冠を戴かず月桂冠を身につけた若き女王の姿が浮かびます。

女性彫刻家メアリー・ギリックによる肖像が特徴で、若さ」「清潔感」「静かな気高さ」を象徴しているとされます。従来の王室発行のコインの威厳を保ちながらも親しみを感じさせるこのデザインには、これから始まる新時代に思い描く希望が見受けられます。

裏面には聖ジョージと竜(Saint George and the Dragon)のモチーフが描かれています。このデザインは、イタリア人彫刻家ベネデット・ピストルッチによるもので、イギリスコインの象徴的な図柄のひとつとなっています。

 金貨としての仕様と魅力

ギリックソヴリン金貨は、重量約7.98g、金の純度は91.67%と定められており、含有金量は約7.322グラムです。

これは1817年から続くソヴリン金貨の伝統的仕様と同一で、クラウンゴールドと呼ばれるイギリス金貨の基準として、価値の保存性があり非常に優れた特徴です。

ソヴリン金貨とは?

アルベルト・デューラー作「聖ゲオルギウスと竜」

 

ソヴリン金貨は格式高いイギリス王の権威と栄光を象徴する貨幣として発行されました。
イギリスの1スターリング・ポンドに相当するこの金貨は、1489年にヘンリー7世の命により初めて発行されたのが始まりです。

「ソヴリン(Sovereign)」は「君主」や「国王」を意味し、15世紀末にこの名称の金貨が登場しましたが、現在では1817年に金本位制のもと再発行されたものを指します。この金貨には、表に君主の横顔、裏にイギリスの守護聖人・聖ジョージが竜を退治する図柄が描かれています。

第二次世界大戦で一時製造が中断されましたが、1957年に再開。これは戦後の金融安定化と国際通貨への信頼回復を意図した象徴的な措置でした。

イギリスは伝統と王室ブランドの力でソヴリン金貨の信頼性を経済に生かそうとしたのです。

 

時代を見つめた女王 エリザベス2世の歩み

戴冠式のエリザベス女王とフィリップ殿下

1952年27歳で王位に就いたエリザベス2世は、「勤勉で誠実」「家族や国民と近い存在」というイメージでイギリス国民、そして世界的に愛された女王でした。

こちらでは、エリザベス2世についてご紹介します。

1. 幼少期:王家の風格を育んだ静かな日々

▲『ヨーク公女エリザベス王女』(1933年、フィリップ・ド・ラースロー画

1926年4月21日、エリザベスはロンドン・メイフェアの母方の祖父の邸宅で誕生しました。ヨーク公アルバートとその妃エリザベスの長女として、「リリベット」という愛らしい愛称で家族に親しまれていました。

わずか2歳にして「威厳ある佇まいと評されるほど、幼い彼女の中には既に王家の品格と静かな自信が漂っていたと言われています。

祖父ジョージ5世からは特に深い愛情を受け、穏やかな幼少期を送りました。妹マーガレットとともに宮廷内で家庭教育を受け、馬術や読書など幅広く学びます。

2. 王位継承の運命と青年期の成長と結婚

▲女王夫妻(1957年)

1936年、祖父ジョージ5世の崩御と伯父エドワード8世の退位により、父アルバートがジョージ6世として即位。これによりエリザベスは突然、王位継承第1位の立場に置かれることとなりました。

第二次世界大戦が勃発すると、彼女はイギリス女子国防軍に志願し、国のために尽力。その誠実な姿勢は、国民からの信頼を築く礎となりました。不安定な時代にあっても、冷静な判断と品位を保ち、着実に成長を重ねていきます。

13歳のとき、家族とイングランド南部のデヴォン海岸を訪れた際、ダートマス海軍兵学校で18歳のフィリップ王子と出会い、やがて文通を通じて愛を育んでいきました

そして戦後間もない1947年、エリザベスはフィリップ殿下と結婚。贅沢が制限された時代ゆえ式は質素でしたが、274センチ・4層に重ねられたウェディングケーキが印象を残しました。砂糖が配給制だった当時、オーストラリアのガールスカウトから寄せられた寄付で材料が賄われるなど、国民への配慮が随所に見られた心温まる式でした。

3.家族、そして晩年の輝き

▲1957年エリザベス女王、フィリップ殿下、チャールズ王子、アン姫

エリザベス女王はチャールズをはじめ4人の子に恵まれましたが、国家への献身は子どもたちと過ごす時間を限られたものにしました。

1952年に即位した際、チャールズは3歳、アンはわずか1歳。多くの働く母親が背負う仕事と育児の両立の悩みと同じく、王族としての責務と母親としての役割の両立は、若き日の女王にとって容易なものではありませんでした。

それでも次第に公務の一部を控え、毎年夏にはスコットランド・ハイランド地方で子どもたちと休暇を過ごすなど、家族との絆を大切にしました。晩年には母として、祖母として、曾祖母としての穏やかな時間を楽しんだといわれています。

長き在位の中で、女王は幾度もの別れを経験しました。2021年には、ロナ禍の最中に最愛の夫フィリップ殿下が逝去。それでも女王は深い悲しみを胸に、公務を粛々と続けました。パンデミックの中ではビデオ演説を通じて国民を励まし、どのような時代においても揺るぎない存在として寄り添い続けたのです。

そして2022年には、在位70年という歴史的節目を迎え、国民とともにプラチナ・ジュビリーを祝いました。ですが、惜しまれながら2022年9月8日、96歳でバルモラル城にて崩御。その誇り高き生涯は、今も人々の心に深く刻まれています

 

エリザベス2世 ソヴリン金貨のバリエーション

エリザベス2世が即位してから5種類の肖像でコインが発行されました。

以下はメアリー・ギリック肖像以降に続いた、エリザベス2世肖像のソヴリン金貨をご紹介します。

●1974年~1984年:アーノルド・マーチン版(ヤングエリザベス)

1968年に発表された肖像はアーノルド・マーチンによるもので、月桂冠ではなティアラを着用した初のデザインでした。 この肖像が最初に採用されたのは切手でした。

肖像の発表から8年後の1974年から、アーノルド・マーチンのものがソヴリン金貨に採用されました。この年を最後に、ロンドンのタワーミントでのコインの製造が終了しました。

ティアラは祖母・クイーンメアリーからの贈り物で、王室のつながりと慣習を示す装飾品です。ヤングエリザベスの名にふさわしく、初々しさと品格の融合が感じられます。

●1985年~1997年:ラファエル・マクルーフ版(ミドルエリザベス)

この期間の肖像はラファエル・マクルーフによって手がけられ、ミドルエリザベスと呼ばれます。

戴冠した女王の姿が成熟した威厳と気品を感じさせるデザインで、表情には優しさと責任感がにじみ出ており、即位から30年以上を経た安定した統治を象徴しています。

●1998年~2015年:イアン・ランク・ブロードリー版

第4肖像として1998年に導入されたこの肖像は、リアリズム重視で知られています。

70歳前後の成熟を抑制せずに描き、過度な理想化を避け描かれています。その手法によりエリザベス2世が持つ落ち着いた風格と存在感が美しく表現されています。

●2015年以降:ジョディー・クラーク版

2015年、ジョディー・クラークによる第5肖像が登場しました。従来の彫刻法と異なり、コンピューター支援設計で制作された技術革新の一枚です。

彼は王冠としてダイアデムを選び、上品で完成度の高い肖像と言われています。初期版は限定発行であり、コインコレクターから注目されました。

 

イギリス エリザベス2世 ギリックソヴリン金貨の価格推移

未鑑定も市場で見かけるため、地金価格+プレミアムという価格帯で比較的入手しやすいものから、年号とグレードにより高額で取引されています。今からアンティークコインになる期待の銘柄です。

1957年 MS64

発行枚数2,072,000枚

2025年1月29日で$870で落札

1966年 MS65

発行枚数7,050,000枚

2025年1月29日$1,260で落札

 

1968年 MS66

2025年1月8日に$2,400ドルで落札

 

1958年 PR66 Deep Cameo

2025年1月13日に$66,000で落札

 

イギリス英国王室の美と知の象徴としてのソヴリン金貨

 

▲1953年のエリザベス2世

若い女王の初々しい横顔が表現されているこのギリックソヴリン金貨は、戦後復興の中、未来に広がる輝かしい新時代の到来を象徴するような存在でした。

彼女のコインの発行そのものが、「国民統合」「経済復興」「王室の希望」を反映するものとして、多くの注目を集めたのです。

このコインには、若き日のエリザベス女王が希望をもって未来を見つめたまなざしと、その生涯を通じて人々に寄り添い続けた姿勢の原点が刻まれています。

それは時代を越えて、私たちに希望と献身、そして深い愛の尊さを静かに語りかけてくれるのではないでしょうか。

 

イギリス エリザベス2世 ギリックソヴリン金貨にご興味はありませんか?

  • イギリス エリザベス2世 ギリックソヴリン金貨をお探しの方 
  • イギリス エリザベス2世 ギリックソヴリン金貨を保有していて売却を検討してい
  • 何かアンティークコインを購入してみたいけれど、どれを買えばいいのかわからない方 

今すぐLINEでギャラリアの専任スタッフにご連絡ください。無料でアンティークコインやマーケットの情報、購入・売却方法など、ご相談を承ります。