イギリス人彫刻家が考案したアメリカのモルガンダラー銀貨とは?その特徴を紹介し、時代背景について徹底解説!
アメリカで現在使われているピースダラーが作られる前には「モルガンダラー」が使われていました。どのような特徴を持ったコインなのか、また、コイン制作の裏にはどのような秘話があるのか解説していきます。併せて、最近の価格相場がどうなっているのか、2021年に落札されたモルガンダラーの例をいくつか紹介します。
モルガンダラー
基本データ
コイン名 | アメリカ 1ドル 銀貨 |
---|---|
通称 | モルガンダラー |
発行年 | 1878年〜1921年 |
国 | アメリカ合衆国 |
額面 | 1ドル |
種類 | 銀貨 |
素材 | 銀 |
発行枚数 | 86,730,000枚 |
品位 | Sv 900|Cu 100 |
直径 | 38.1 mm |
重さ | 26.73 g |
統治者 | ジョン・カルビン・クーリッジ・ジュニア→ハーバート・クラーク・フーヴァー |
デザイナー | ジョージ・T・モルガン(George T. Morgan) |
KM | #110 |
表面のデザイン | 左向きのリバティ像、レジェンド |
表面の刻印 | E · PLURIBUS · UNUM LIBERTY 年号(多州からなる統一国家) |
裏面のデザイン | リースの中に矢とオリーブの枝を持つ鷲 |
裏面の刻印 | UNITED STATES OF AMERICA In God we trust ONE DOLLAR (アメリカ合衆国、我々は神を信じる、1ドル) |
エッジのタイプ | リーデッド |
エッジの刻印 | - |
モルガンダラーとは?
モルガンダラーは、19世紀後半から20世紀にかけてアメリカ合衆国で発行された1ドル銀貨です。どんなコインなのかその特徴を見ていきましょう。
モルガンダラーの発行
モルガンダラーは直径38.1㎜、重さ26.73gのずっしりとした感触のある銀貨です。1878年に最初に発行され、1904年に至るまで発行され続けました。1905年に発行停止になったのは、材料に使っていた銀の地金がなくなってしまったことが理由でした。モルガンダラーはその後しばらくの期間をおいて、1921年に復活しました。ただこの時の発行はこの1年だけでした。そして2021年、再度発行されたのですが、これは最後に発行された1921年から100年たったことを記念して作られたものです。コインの製造は、一般的に一か所で行われる場合が多いですが、モルガンダラーは、フィラデルフィア、カーソンシティ、デンバー、ニューオリンズ、サンフランシスコの5か所から発行されました。
コイン表面のデザイン
モルガンダラーの表面に描かれているのは自由の女神の横顔です。デザインしたのはこのコインの名前にも使われているジョージ・モルガンです。モルガンは自由の女神の絵のモデルにギリシャ神話などに出てくる空想の人物を採用するのではなく、実際に存在するアメリカ女性をモデルにしたいと考えていました。最終的にアンナ・ウィリアムズという女性をモデルに起用しました。アンナ・ウィリアムズについては後の章で詳しく触れたいと思います。
表面のエッジに沿って刻まれているのは「E PLURIBUS UNUM」というラテン語です。英語では「OUT OF MANY, ONE」となり、「多州からなる統一国家」という意味でアメリカ合衆国のことを指します。長くアメリカの標語として使われましたが、1956年には法により「In God We Trust(我々は神を信じる)」が公式な国の標語として定められました。
裏面のデザイン
モルガンダラーの裏面にはアメリカの国鳥であるイーグルの絵が描かれています。オリーブの木の枝に止まり大きく羽を広げた鷹のデザインになっています。コインのリムに沿って刻まれているのは、国名である「UNITES STATES OF AMERICA」の文字です。また、イーグルのすぐ上に刻まれているのは、現在、アメリカの標語になっている「In God we trust」の文字です。そして裏面の一番下のところには額面である「ONE DOLLAR」の文字が刻印されています。
裏面のデザインで注意したいのが、「DOLLAR」の「DO」の文字の上部に刻まれたアルファベットのマークです。これはモルガンダラーが造幣された場所を示すもので、マークが何もないのがフィラデルフィア、「CC」がカーソンシティ、「D」デンバー、「O」ニューオリンズ、そして「S」がサンフランシスコを意味します。
それぞれ発行枚数もばらつきがあるため、人気や評価も異なります。
モルガンダラーが作られた当時の時代背景
ここでは、モルガンダラーがどのような時代背景の下に作られたのか解説していきます。
モルガンダラーの考案者はイギリスの彫刻家
モルガンダラーを考案したのは、ジョージ・モルガンです。モルガンはイギリス人の彫刻家で当時はまだイギリスに住んでいました。1870年代、アメリカの造幣局は新しいコインを作ることを計画しましたが、デザイナーにはイギリス人を起用したいと考えました。そこで関係の部署に適した人物を紹介してくれるよう依頼したところモルガンが推薦されたのです。モルガンは1876年に渡米し、まずペンシルベニアの美術学校に入学しそこでコインのデザインを学びました。そして1877年から実際のコインの制作に携わるようになりました。
モデルになりたくなかったモデル
モルガンダラーの表面に描かれているのはアメリカ人女性教師アンナ・ウィリアムズです。アンナは実際のところモルガンダラーのモデルにはなりたくなかったと言われています。アンナはモルガンの友人の画家トマス・エイキンズを通してモルガンに紹介されたのですが、当時モデルになることで有名になることを恐れていました。何度か断ったのですが最終的にモルガンに説得され、このコインのモデルになることを引き受けたのです。結果的に、モルガンダラーのモデルであることが一般に知られ有名になってしまいました。アンナはこのことについてはほとんど言及することなく、退職するまで女学校の教師、そして最後は校長として教育界に貢献したとのことです。
2021年発行のモルガンダラー2種
これまでは100年以上前に発行されたモルガンダラーについて解説しましたが、2021年には2種類のモルガンダラーの復刻版が発行されています。一つは、銀貨、もう一つは金貨です。まず銀貨の方から見ていきましょう。2021年はモルガンダラーの最後の発行年、1921年からちょうど100年目にあたる年です。同時にモルガンダラーに代わって作られた「ピースダラー」の最初の発行年からも100年たっています。この2つのことを記念するために「モルガン&ピースダラー記念コインプログラム」という企画が立ち上げられ、モルガンダラーの銀貨とピースダラーの銀貨が記念コインとして発行されました。
モルガンダラーの価格推移
発行枚数が少なく、人気の造幣局(CC:カーソンシティ)でハイグレードなものは数百万〜数千万円と高額です。発行枚数も多く、良いグレードのものであれば10万円前後から手に入れることができます。細分類が多いため、価格にもかなり差があります。
オークションでの出品も多いため、最初のアメリカコインとしてコレクションしてみるのはいかがでしょうか?
MS62 1893-S
2021年4月24日に$336,000で落札。
発行枚数は10万枚と他の年号に比べると極端に少なく、一般流通はせず1918年にほとんど溶解されてしまいました。
現存はわずか2ダース分の袋が金庫室から発見されたのみの希少な年号です。
MS64 1887-S Prooflike
2022年12月18日に$2,640で落札。
プルーフライク。
製造時の初期打ちの状態のため、フィールドと刻印のコントラストが強く出ています。
MS66 1883-CC Deep Mirror Prooflike
2022年10月18日に$3,360で落札。
プルーフよりさらに状態の良い「Deep Mirror Prooflike(ディープミラープルーフライク)」という希少な状態。
MS64 1880年 O(ニューオリンズ)
発行枚数が多いため、ある程度のグレードであれば10万円前後と手頃なお値段で入手可能です。
2022年12月18日に$1,230で落札。
19世紀にアメリカ合衆国で発行されたモルガンダラー
表面に自由の女神を描き、裏面にイーグルを描いたアメリカのモルガンダラーはイギリス人の彫刻家モルガンによってデザインされ、1878年に発行されました。その後も長きにわたりアメリカの1ドル銀貨として流通していました。2021年には最終発行年1921年から100年がたったことを記念して新しいモルガンダラーが作られるほど人気のデザインです。全体として発行枚数も多いため、年代別に集めたり造幣局ごとに集めたりするなど、多くの人に親しまれています。
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