額面世界最高のドイツの1兆マルク。その特徴や時代背景、価格状況を徹底解説!

ドイツ1兆マルク

ドイツ ウエストファーレン 1兆マルク

基本データ

コイン名 ドイツ ウエストファーレン 1兆マルク 緊急発行貨
通称 ウエストファーレン
発行年 1923年
ドイツ
額面 1兆マルク
種類 -
素材 ニッケル貨に銀メッキ
発行枚数 11,113枚
品位 -
直径 60.1 mm
重さ 77.2 g
統治者 Heinrich Friedrich Karl vom Stein(ハインリヒ・フリードリヒ・カール・フォン・シュタイン)
デザイナー -
KM -
表面のデザイン 跳ね馬とレジェンド
表面の刻印 Notgeld der Provinz Westfalen 1 Billion Mk. ·1923·(緊急発行貨 ウエストファーレン 1兆マルク 1923年)
裏面のデザイン フリードリヒ・フォン・シュタインの左向き肖像とレジェンド
裏面の刻印 Minister vom Stein•Deutschlands Führer in schwerer Zeit 1757-1831(シュタイン首相・困難な時代のドイツのリーダー 1757-1831)
エッジのタイプ スムース
エッジの刻印

-

 

1兆マルクとは?

1兆マルク コイン両面

 

1923年にワイマール共和国(現在のドイツ)で発行された1兆マルクは、どのような特徴をもったコインなのでしょうか。

コインの特徴

1兆マルクは、二ッケル・銅・亜鉛の合金に銀をメッキしたものです。大型のコインで、直径60㎜、重量は77.2gあります。「1兆」という驚くほど高い額面がつけられたのは、当時ドイツがハイパーインフレに直面していたという時代背景があります。(詳しい説明は次章をご覧ください。)

1兆マルクの表面のデザイン

1兆マルク表面デザイン

表面・裏面の判断が、取り扱い業者により異なりますが、ここでは額面の記されている方を表面とします。表面中央には跳ね上がる馬の絵が描かれています。この馬のモチーフは、コインの発行場所であるウエストファリア州の紋章に使われているものです。ウェストファーレンは現在、馬の種類の名前にもなっています。馬場馬術用や障害飛越用の馬として世界的に評価が高く、オリンピックなどの馬術競技で活躍しており、乗用馬として非常に人気の高い品種です。また、近年では日本でもウェストファーレンを輸入して乗用馬の生産、育成を行っています。ウェストファーレンは東プロイセンから運ばれ、当時のドイツでは騎兵隊の馬として使われていました。そして、馬の足の下のところに「1 Billion mk」という文字が刻まれています。1 billion はドイツ語で1兆を示します。コインの一番下のところには発行年「1923」の数字が刻まれ、エッジに沿った部分には「Notgeld der Provinz Westfalen」という文字が刻まれています。これは「ウェストファリア州からの緊急資金」を意味します。

1兆マルクの裏面のデザイン

1兆マルク裏面デザイン

 

1兆マルクの裏面に描かれているのは、ハインリヒ・フリードリヒ・フォン・シュタインの横顔です。フォン・シュタインは18世紀から19世紀にかけてプロセイン王国で活躍した政治家です。現在のドイツができる前、ドイツ北部からポーランド西部一帯は、ベルリンを首都としてプロセイン王国として栄えていました。

コインのエッジに沿って刻まれているのは「Minister vom Stein•Deutschlands Führer in schwerer Zeit 1757-1831」の文字です。これは「フォン シュタイン大臣 困難な時代におけるドイツの指導者 1757-1831」を意味します。

 

1兆マルクが作られた当時の時代背景

世界最高の額面価格を持つ1兆マルクは、いったいどのような時代背景の下に発行されたのでしょうか。その内容を詳しくみていきましょう。

第1次世界大戦後のドイツ

1兆マルクが発行されたのは第1次世界大戦が終わってから5年後の1923年のことでした。イタリア、オーストリアと三国同盟を組んでいたドイツは、この戦争に負け、新たにヴァイマル共和国を成立させました。しかし敗戦により多額の賠償金を抱えていたため、ドイツの経済は混沌状態に陥ってしまいました。さらに悪いことには、労働者たちがそうした不安定な経済状況に不満を抱きストライキを頻繁に起こしたのです。結果として生産が落ち、物が不足する事態が起きました。

ハイパーインフレ

1922年には、戦争賠償金を支払うこともできないほど経済が悪化し、ハイパーインフレを招いてしまいました。この時のインフレのひどさは、次のような説明の中に見ることができます。

「パン1斤の値段は1923年1月には250マルクだったが、1923年11月には、200,000,000,000マルクにまで上がった。・・・物価があまりにも急激に上がり、お昼になるころには、それまでの労働者の給与は実質上価値がなくなってしまったため、彼らは1日2回給与を支払われた。」(「The hyperinflation crisis, 1923|BBC」より引用)

当時の生活がどんなに大変だったか想像できますね。しかもこのような経済危機に対応するために政府はさらに造幣を促したのです。1兆マルクが発行されたのは、まさにこのような状況下でした。

経済の正常化

シュトレーゼマン首相

ドイツの経済を救ったシュトレーゼマン首相

 

崩壊寸前まで落ち込んだドイツ(ワイマール共和国)の経済でしたが、驚くことに1924年になると改善の兆しが見えてきました。そのカギとなったのが新たに就任したグスタフ・シュトレーゼマン首相の政策でした。労働者に対してストライキなどの労働運動をやめるよう訴えました。。そのことで生産性が上がり、物が流通するようになりました。政府はまた、貨幣を新しい貨幣「レンテンマルク」に変え、数を限って造幣しました。その結果、貨幣としての価値が上がり国内外の信頼も回復しました。こうしてドイツの経済は難関を乗り切り復活していったのです。

 

1兆マルクの落札価格推移

1兆マルクの落札価格推移を海外と日本の場合に分けて見ていきましょう。

海外での落札状況

海外でのオークションでは2020年1月にUS$700で落札されたものがあります。2021年ではUS$300と価格が少し下がっていますが、これはオークションにかけられたコインがわずかに変色していたことが理由です。2022年では、コンディションの良いものはEUR650 (US$715)、EUR792 (US$792)など高額で落札されています。

日本での落札状況

1兆マルクは日本でも落札されています。日本での落札価格は海外のものを上回っています。2022年の4月のオークションでは\200,000 (US$1,589)、6月のオークションでは\120,000 (US$894)で落札されています。

 

ドイツ1兆マルクの価格推移

MS64

MS64

 

2021年5月27日に$1,020で落札。

鑑定のタイミングによっては大きめのサイズ(Over Size)のプラスチックホルダーになる場合もあります。

MS63

MS63

2021年2月11日に$1,260で落札。

MS62

MS62

2021年5月27日に$1,020で落札。

MS67

ブロンズに金メッキが施されたものもあります。

ブロンズに金メッキが施されたコイン

2022年5月17日に$456で落札。

 

ドイツのハイパーインフレで発行された1兆マルク

何かを記念して発行されるコインが多い中で、1兆マルクは第1次世界大戦後にドイツで起きたハイパーインフレという経済危機の下に発行されました。その額面はこれまで発行された世界中のコインの中で最も高いものです。現在ドイツは経済大国の一つに数えられていますが、現在のように豊かなドイツにも、苦しい時代があったことをこの1兆マルクは教えてくれているように思います。ぜひ、歴史の中の1枚を手に入れてみてはいかがでしょうか。

 

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