テトラドラクマ銀貨とは?古代ギリシャの歴史とアンティークコインを探る
テトラドラクマ銀貨は古代ギリシャで広く普及した通貨です。この通貨は古代ギリシャ時代の多くの国々において、貿易や取引に欠かせない通貨でした。
古代ギリシャはアンティークコインのコレクターや投資家たちにとって非常に人気が高いテーマの1つでもあります。古ければ古いほど希少価値も高くなるため、将来的な値上がりが期待できる古代のコインに興味を持つ方は多いでしょう。
今回は、テトラドラクマ銀貨とはどんなコインなのか、古代ギリシャの歴史を紐解きながら解説していきます。
テトラドラクマ銀貨とは
テトラドラクマ銀貨が普及し始めたのは紀元前6世紀後半~紀元前5世紀あたりの古代ギリシャ・アテネ。時代はちょうど古代オリエントのリディア王国、ペルシア帝国からギリシャ・アテネへと移り替わろうとしていた時でした。
古代オリエントで主流だったスターテル金貨の流れを受け、テトラドラクマ銀貨はアテネを舞台に広大な地域に渡って華やかに展開していきます。テトラドラクマ銀貨の歴史的背景を探っていきましょう。
古代ギリシャ
ギリシャの歴史は古く、紀元前40万年前に遡るといわれています。ここでいう古代ギリシャとは紀元前6世紀~3世紀にかけてアテネを中心に発展を遂げたギリシャ時代のことを指します。
古代ギリシャは複数のポリスと呼ばれる都市国家によって形成され、現代の民主主義の基盤となる政治形態が確立された時代でもあります。4世紀に入ったアテネではマケドニア王国出身のアレクサンドロス3世が国王の座につき、頭角を現し始めていました。
エーゲ海、地中海を囲んだ古代オリエントの国々では、長きに渡って貿易・流通が栄え、と同時に支配権を争う幾多の戦争が相次いでいました。紀元前5世紀から4世紀にかけて古代オリエントを支配したのは巨大な領土を持つペルシア帝国でした。
ペルシア帝国が猛威を振るう中、ペルシア帝国の最後の国王カンビュセス2世は、ギリシア征服を狙いますが紀元前334年アレクサンドロス3世率いるギリシア軍に敗れ、古代ギリシャが君臨する時代が始まったのです。
アレクサンドロス3世はペルシアをはじめ、小アジア、エジプト、メソポタミア一帯を征服・統一しアレクサンドロス帝国と呼ばれる大帝国を短期間で築き上げていきます。
アテネ
古代ギリシャの主要都市はアテネ。アテネは世界史上初めてのオリンピックが開催された土地でもあり、ギリシャの経済、産業、政治、文化の中心となった都市です。ソクラテスやプラトン、アリストテレスなどの偉大な哲学者を輩出しています。
アテネは西洋文明の芸術、学問、哲学の始祖として栄え、パルテノン神殿やアクロポリスなど数々の歴史的モニュメントを残しています。
貿易と取引
もともとギリシャは半島や諸島が集結した国です。ペルシアやエジプトに比べて大規模な穀倉地帯に欠け、古代ギリシャでは穀物の大半を近隣国から輸入する必要がありました。小麦などの穀物以外にも木材や鉄鋼、奴隷などを輸入。そしてギリシャの主産業となる陶器、オリーブ油、ワインなどの輸出で財政のバランスをとっていました。
アテネでは貿易産業がこれまでになく著しく発展し、貿易のためのエンポリウムと呼ばれる交易港が設置されました。そこで、他国との貿易や国内での商取引にあたって主要通貨となったのが、ギリシャ政府が発行するテトラドラクマ銀貨だったのです。
ドラクマ
テトラドラクマとはドラクマと呼ばれる古代ギリシャの通貨単位の1つで、テトラドラクマは4ドラクマ通貨のことです。1ドラクマは4.3グラム、2ドラクマが8.6グラム、テトラドラクマは17.2グラムの銀貨となります。
アッティカ地方には豊富な銀鉱山があったため、従来のスターテルに変わって銀が通貨の素材に使われるようになったようです。
古代ローマ
アレクサンドロスが大帝国を築いた時代には、多くの領土国において、古代ギリシャ・アテネを模倣した都市が生まれました。古代ギリシャの文化と精神を受け継ぐ代表的な都市の1つがイタリア・ローマです。
古代ローマは紀元前700年頃に設立されたイタリアの小さな地方都市です。紀元前500年以降にギリシャとアフリカやのヨーロッパ諸国への中継地点として商業や産業が発達していきました。紀元前300年~200年代に入るとローマでも多数のテトラドラクマ銀貨が製造されました。そして紀元後に近づくにつれ、時代はやがてギリシャからローマへと移行していきます。
人気のテトラドラクマ銀貨
それでは、古代ギリシャを代表するテトラドラクマ銀貨にはどんなものがあるのか、人気のコインをいくつかをご紹介いたします。今後のアンティークコイン選びの参考にしてみて下さい。
テトラドラクマ銀貨 アテネとふくろう(BC490~404年)
古代ギリシャのテトラドラクマ銀貨で最も有名なのが「アテネとふくろう」のコインです。
表はオリーブの冠をかぶったギリシャ神話の女神アテネの肖像。女神アテネ(アテナ)は戦争と戦略、知性と学問のシンボル。また主要都市アテネのシンボルとして刻まれています。裏は女神アテネの従者ふくろうとオリーブの枝。ふくろうとオリーブは勝利のシンボルで、オリーブの冠をかぶったアテネとふくろうのテトラドラクマ銀貨が約100年近くに渡って製造されました。
このタイプのアテネとふくろう銀貨が最初に製造されたのは、おそらく紀元前490年あたりで、ギリシャ軍が初めてペルシア軍に勝利した「マラトンの戦い」がきっかけだといわれています。上記のコインは440年以降のもので、年代によってアテネやフクロウの図柄が異なります。
価格相場:劣化が目立つコインは10万円以下で購入できる一方では、紀元前のコインだけに未使用でグレードが高いものは数百万円以上の値がつくこともあります。NGCの鑑定AUクラスだと50万円~70万円あたりが相場。
テトラドラクマ銀貨 武装したアテネとフクロウ(BC500~480年)
こちらのテトラドラクマ銀貨は「武装したアテネとフクロウ」がモチーフとなる非常にレアな古代ギリシャのコインです。紀元前500年~480年あたりに製造されたものでアテネとフクロウ銀貨の初期版になります。
武装したアテネがコインに登場するのは紀元前515年ぐらいから。当初の武装したアテネはやや稚拙な図柄であるのが特徴。紀元前500年以降から、上記のように立体感に優れたアテネの肖像が描かれるようになります。
価格相場:武装したアテネのテトラドラクマ銀貨は希少価値が高く、劣化が目立つものでも数百万円はします。極美品以上のクラスになると500万円以上で売買されています。
テトラドラクマ銀貨 アレクサンドロス3世(紀元前336~200年)
アレクサンドロス3世のテトラドラクマ銀貨も古代ギリシャで人気のテーマです。アレクサンドロス3世は紀元前336年に即位してから、華々しく帝国を築いた後、紀元前326年に32歳の若さで熱病で急死しました。
その後もアレクサンドロス3世の業績を記念して100年以上に渡ってコインが製造され続けました。上記のアレクサンドロス3世コインは紀元前311年~305年に製造されたものです。
相場価格:アレクサンドロス3世コインは製造期間も長く、多数の地域で製造されているため種類も多く価格帯も幅広いのが特徴です。数万円~10万円程度のものもあれば、グレードや年代・地域によっては100万円~300万円以上の値がつきます。
まとめ
古代ギリシャ、テトラドラクマ銀貨といっても実に多彩で、アテネ以外で製造されたものもあれば、モチーフや図柄も稚拙なものから芸術的なものまで様々です。
アンティークコインで成功するためには、単に古い通貨で入手が難しいものを選ぶだけでは高い投資効果は期待できません。古代ギリシャにおいて人気が高いテーマ、美術的価値にすぐれた図柄、そして状態が美しいコインを選ぶことが大切です。
今回ご紹介した、アテネとフクロウ、アレクサンドロス3世はともに永久不滅の歴史のテーマでもあり、おすすめのテトラドラクマ銀貨です。年月ともに、希少価値・美術的価値はますます高くなることが期待できるでしょう。