1,000年の歴史を誇るイギリス王立造幣局で稀代の彫刻師ウィリアム・ワイオン

ウィリアム・ワイオンアンティークコイン

 

1100年以上前にさかのぼり、イングランド王国さらにはグレート・ブリテン王国の硬貨を製造し続けている、イギリスの王立造幣局(The Royal Mint)。 

今回は、そんな造幣局で活躍した歴代のコインデザイナー(原版彫刻師)の中でも三指に入る彫刻師と言われる、天才デザイナー「ウィリアム・ワイオン」をご紹介します。最も美しいとされる「ウナとライオン」を手がけました。

王立造幣局の歴史や、ウィリアム・ワイオンの人となり、エピソードなどと共に、稀代の彫刻師が手がけたコインを紹介していきたいと思います。

王立造幣局の主任原版彫刻師、ウィリアム・ワイオン

ウィリアム・ワイオンアンティークコイン

1795年にバーミンガムで生まれたウィリアム・ワイオン(William Wyon)は、コインの彫刻師であった父に師事して学び、1816年になるとロンドンの王立芸術院に通うようになりました。

芸術院では成績は優秀で、技芸協会の金賞を取ったワイオン。王立造幣局の主任原版彫刻師に就任するのは1828年のことですが、それより以前から作品は高く評価されており、貨幣に採用されていました。

原版彫刻師となって以降はいくつものコインがワイオンによってデザインされ、一般通貨から、記念金貨、万博記念メダルなど多岐にわたっています。

ニュートンも局長を務めた王立造幣局の歴史と、彫刻師達

ウィリアム・ワイオンアンティークコイン

王立造幣局の歴史が始まったのは886年とされています。イングランド王アルフレッド大王がデーン人の侵攻を撃退し、イングランド南西部の支配権を保持することによってイングランド王国は滅亡を免れた
年でもありました。

1279年にロンドン塔の裏に移設されて以降、500年以上の長きにわたって稼働していましたが、産業革命の余波で大型機械の導入が必要となると、鋳造所の拡大に迫られ、移設することとなります。

世界大戦を経てさらに移設され、現在はウェールズ地方のラントリサントで操業している王立造幣局ですが、歴代の局長には意外な有名人も。科学者として名高いアイザック・ニュートンです。銀本位制だったイギリスを、金本位制へと移行させたのがニュートンとされています。

現在は政府100%保有ですが、業務としてはロイヤル・ミント社として民営化されています。

彫刻師はコインに描かれている絵や模様などを作る人のことであり、ウィリアム・ワイオンやその従兄弟トーマス・ワイオン、ベネデット・ピストルッチなどが同時代人にいます。

ウィリアム・ワイオンがデザインした、世界でもっと美しいとされる「ウナとライオン」

ウィリアム・ワイオンアンティークコイン

世界でも最も有名といえるような金貨があります。1839年発行の「ウナとライオン」と呼ばれる金貨で、世界で一番美しい金貨と評されています。描かれているのは物語に出てくる女性ウナと、ウナを守り付き従うライオンです。

ウナが当時の若きヴィクトリア女王を表し、ライオンがイギリスを表しているとされています。イギリスを構成する王国のひとつであるイングランド王国の紋章がライオンであるところから来ているのでしょう。 

 

その他、ジョージ4世をデザインした金貨やウィリアム4世を描いた金貨などもあり、ヴィクトリア女王の在位10周年記念銀貨などもワイオンにデザインされています。ワイオンが没する年である1851年に開かれた、世界初の万博であるロンドン万博では、記念銅メダルを手がけています。

現代でも圧倒的な評価を持つ、稀代の彫刻師ウィリアム・ワイオン

長い歴史を持つ王立造幣局では、多くの彫刻師が活躍し、様々な作品を残してきました。現在では国有企業となっていますが、世界でも有数の硬貨の生産所を続けています。2013年の記録によれば、世界の硬貨生産量の15%を占めているともいわれています。

英国製硬貨の評価は高く、近年コインの取引価格が高騰しています。優れた彫刻師達の活躍が要因になっています。150年たっても最高峰のコインとして求められ、今後も彼の価値は高まり続けていくことでしょう。