大吉より小吉のほうが高い?縁起物小判の価値がおもしろい!

おみくじには大抵、
大吉、吉、中吉、小吉、末吉、凶がある。

「凶」のおみくじを引いたら
利き腕と反対の手で木に結び、
「大吉」であれば、
持ち帰るという人が多い。

実は、この縁起の良い「大吉」
小判の中にも、あるのである。

御金神社

御金神社

京都市中央区に「御金神社」がある。
ビルに囲まれた谷間に
黄金色の鳥居がひかり輝いている。

「みかねじんじゃ」と読む
この神社、
日本でただ1つの
お金を祭る神社として有名である。

なので、
競馬や競輪などのギャンブル必勝、
宝くじの当選などの
祈願に訪れる人が多いのである。

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神社であるから当然、おみくじがある。
こちらのおみくじは、おまけ付きである。

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福俵、福銭、小判などのお守りが入っている。
この小さなグッズをお財布の中に入れておくと
金運がアップすると評判なのだ。

大吉はめでたい

小判が夢に現れれば縁起が良い、
実物を見られたら嬉し有り難い、
手にのせることが出来れば至福である。

その実物小判に、或る時、
おめでたい言葉が刻まれた。
「大吉」である。

小判の裏の左下辺りに、
小判師たちの小さな験極印が押される。

それがたまたま
金座人の験極印が「大」、
吹屋棟梁の験極印が「吉」、
「大吉」になった小判が現れたのだ。

この小判は、マニアの間で
「偶然大吉」と呼ばれて珍重されている。

小判の製造

小判の製造

当時も実にめでたい出来であり、
恐らく、金座の長官、
後藤辺りが仕掛けたのであろうが、
この偶然を必然にして
献上小判に
「大吉」を入れることを思い付いた。

献上小判とは、
金座が、将軍家や幕閣などに
年始贈答や祝儀、御礼などとして、
小判を献上する慣例があったのだ。

それで、元文小判が造られた頃からは
裏面の金座人と
吹屋棟梁の験極印の組み合わせが
「大」「吉」に限られ、
仕上げも念入りになされて配られた。

量目は通常の元文小判と同一であるが、
この献上小判は、やや長めで、
「献上御清小判」と称され、
端正に特鋳された。

この配られた特上の小判が、
「献上大吉」の生い立ちである。

「文」の書体が時代を語る

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左下2つの打印
上の「大」が、金座人の験極印であり、
下の「吉」が、吹所の吹屋棟梁の験極印である。

時代が変わっても変わらない
小判としての証印の刻印なのである。

ちなみに、
この2つの小判は、作られた時代が違う。

右上に
「文」という文字が刻んであるが、
書体が異なる。

読みやすい真書体の「文」は
「元文」(1736年~1740年)、
下の崩してある草書体の「文」は
「文政」(1818年~1830年)
の「文」である。

つまりここら辺りにある刻印は、
何時ごろその小判が作られたかを表しているのである。

「偶然大吉」と「献上大吉」

「大吉」と刻まれた小判には、
2種類ある。
「偶然大吉」と「献上大吉」である。

「偶然大吉」は、
享保を境に、それ以前の
慶長、元禄、宝永、正徳の小判で
現存が確認されている。

「献上大吉」は、
享保、元文、文政、天保の
小判の中で見つかっている。

それ以降、
安政と万延の小判には
「偶然大吉」は存在せず、全て
「献上大吉」であると考えられているのである。

めでたいのは大吉だけではない

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「大吉」小判だけではなく
「小」と「吉」が刻まれた
「小吉」小判も存在する。

「小吉」小判

「小吉」小判

おみくじを引いて、
小吉でも、まあ許せる人もいるだろうが、ランクは低い。
大吉、吉、中吉と続き、小吉は4番目である。
後に続くのは末吉、凶のみである。

献上小判として「小吉」はいただけない。
偶然押されたとしか考えられない。

現在「小吉」が確認されているのは、
享保、元文、文政、天保の小判である。

では、偶然
「小」と「吉」を押したのは誰か?
やはり気になり、調べ上げる人がいるのだ。

小判の験極印は、
金座人であれば、その首席の年寄役が、
吹屋棟梁でも、その首席が
各自打刻する慣わしであった。

文政、天保の
「小吉」の座人印の
「小」は
江戸金座人の久保田万四郎。

「吉」は、
江戸吹屋棟梁の広瀬吉兵衛
が押したと判明した。

ただ、この久保田万四郎は、
在任期間が短い。
首席を長く勤めなかったことがわかっている。

なので、
文政小判、天保小判の「小吉」は数が少なく、
残っていれば大珍品であると言われている。

恐らく現存は数品で、その価値は、
「献上大吉」より高いと評価されているのだ。

文政、天保以前の元文小判は、
約12,204,998両鋳造された。
これは小判の中で歴代1位の記録である。

また、この小判は、
80年以上の長期間に亘り流通していた。

このため、元文小判の「小吉」は、
案外残存しているのではないかと言われているのだ。

大吉より価値ある
小吉もあるのだ。

コインについて

文政小判

文政小判

今回ご紹介する小判は、
特製の献上小判も造られた文政小判である。

裏の右上に「文」字が打印されているが、
この「文」の字は、
元文小判と区別する草書体になっている。

そのため「草文(そうぶん)」と呼び分け、
「新文字小判(しんぶんじこばん)」
または
「草文小判(そうぶんこばん)」
とも呼ばれている小判である。

験極印に着目していただきたい。
「大」「吉」
或いは
「小」「吉」
が打たれてあれば、
かなり希少価値のあるものである可能性が高い。

もちろんそうでなくても
小判として価値が高い
草文小判の逸品であることに間違いはない。

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