ドライカイザー10ダカット金貨とは?ハプスブルク家の黄金時代を伝える金貨の魅力と驚きの価格とは

マティアス2世の肖像画

神聖ローマ皇帝でありボヘミアの王でもあったマティアス2世の肖像

女帝マリア・テレジア、フランス王妃マリー・アントワネット

西洋史に疎い方でも1度は耳にしたことがある彼女たち、実はハプルブルク家の出身です。ハプスブルク家は欧州の歴史を語るうえで欠かせない名門であり、日本でも漫画や宝塚のテーマにもなるほどの人気があります。

今日ご紹介するのは、このハプスブルク家の繁栄を象徴する3人が描かれたドライカイザーコインと呼ばれるものです。

このコインを製造したボヘミア王マティアス2世の時代背景とともに、ドライカイザー10ダカット金貨の魅力を解説します。

 

ドライカイザー10ダカット金貨

ドライカイザー10ダカット金貨 表裏

基本データ

コイン名 ボヘミア王国 マティアス2世 10ダカット金貨
通称 ドライカイザー・スリーカイザー・スリーエンペラー
発行年 1612年〜1619年のあいだのいずれか
ボヘミア王国
額面 10ダカット
種類 金貨
素材
発行枚数 -
品位 Au 986
直径 -
重さ 約35.0 g
統治者 マティアス2世
デザイナー -
KM #144
表面のデザイン マクシミリアン1世・カール5世・フェルディナンド1世とレジェンド
表面の刻印 MAXI I CARO V ET FERD D G ROM CÆS REG HISP(3人の皇帝の名と神聖ローマ皇帝位を表記)
裏面のデザイン 双頭の鷲とレジェンド
裏面の刻印 3人の皇帝名と神聖ローマ皇帝位を表記(オーストリア大公、ブルゴーニュ・ハンガリー、ボヘミア、クロアツィア王国の君主の意)
エッジのタイプ プレーン
エッジの刻印 -

 

ドライカイザー10ダカット金貨とは?

マクシミリアン1世の家族の肖像と伝えられる作品マクシミリアン1世の家族の肖像と伝えられる作品

ゴールドの輝きがまぶしいドライカイザー10ダカット金貨。

使用されたゴールドの価値の高さに留まらず、コレクターたちが喉から手が出るほど欲しいといわれる魅力があふれるコインです。

ドライカイザー金貨の詳細を見ていきましょう。

非常に珍しい3人の皇帝の肖像

コインのサイズを思い描いてみてください。そこに複数の肖像画を刻むことは、大変な技術を要することはご想像いただけると思います。

ウィリアム3世&メアリー2世の5ギニー金貨のように、共同統治者や夫婦が描かれるコインはありますが、3人の肖像が刻まれていることはとても珍しいでしょう。

そのためこのコインは、「3人の皇帝」を意味する「ドライカイザー(ドイツ語)」や「スリ―カイザー(英語)」の愛称を持っています。

描かれている皇帝を、手前から紹介します。

  • 中世最後の騎士といわれたマクシミリアン1世
  • 「太陽が沈まない国」と呼ばれた最盛期を生きたカール5世(スペイン王としてはカルロス1世)
  • カール5世の弟で神聖ローマ皇帝位とオーストリア領を継承したフェルディナンド1世

いずれも、欧州の歴史を作ったハプスブルク家の重要人物たちです。

3人の関係も気になるところ。

カール5世とフェルディナンド1世兄弟の祖父が、マクシミリアン1世という関係になります。

また、このコインの製造を命じたボヘミア王マティアス2世は、マクシミリアン1世の孫にあたります。

ハプスブルク家のシンボル、双頭の鷲

裏面に描かれている動物は、双頭の鷲です。

欧州各地で目にするこの双頭の鷲は、ハプスブルク家のシンボルとして古くから親しまれてきました。

ちなみに、双頭の鷲を紋章としているのはハプスブルク家だけではありません。ロシア帝国のロマノフ王家やアルバニアの国旗も、双頭の鷲が使用されています。

由緒正しき紋章のデザインといえるでしょう。

ドライカイザーコインに刻まれた文字は?

肖像画や紋章の周囲は、ラテン語が刻まれています。

  • 肖像画を囲むラテン語

   MAXI I CARO V ET FERD D G ROM CÆS REG HISP

        (3人の皇帝名と神聖ローマ皇帝位を表記)

  • 双頭の鷲を囲むラテン語

   ARCHID AVST DVX BVRG HVNG BO DAL CRO Zc

  (オーストリア大公、ブルゴーニュ・ハンガリー、ボヘミア、クロアツィア王国の君主の意)

ハプスブルク家の繁栄を築いた皇帝たち、そして彼らが統治した広大な領地を誇示するコイン、といった趣でしょうか。

 

ドライカイザー10ダカット金貨が作られた当時の時代背景

トレント公会議の様子

反宗教改革が生まれるきっかけとなったとされるトレント公会議の様子

ドライカイザー10ダカット金貨が製造されたのは、17世紀の初頭といわれています。

当時のヨーロッパ、およびドライカイザー金貨が製造された周辺の地域はどんな状況にあったのでしょうか。

コイン誕生の背景に迫ってみましょう。

マティアス2世とはどんな皇帝?

ドライカイザーの製造を命じたマティアス2世は、1612年から1619年まで神聖ローマ皇帝位にあった人です。

父は神聖ローマ皇帝であり、ボヘミア、ハンガリー、クロアチアの王であったマクシミリアン2世です。

マティアス2世は次男でしたが、長兄のルドルフ2世が変わり者で政治に興味を持たなかったため、1608年からオーストリアとハンガリー、そして1611年からボヘミアの統治を委ねられています。

しかしマティアス2世は、広大な領土のかじ取りに大変な苦労を重ねることになります。

その理由はなんだったのでしょうか。

17世紀、ヨーロッパに吹き荒れた宗教改革問題

キリスト教会と一口にいっても、さまざまな宗派があることはご存じだと思います。

16世紀以降、ヨーロッパはカトリック教会と新興のプロテスタント教会の間で大揺れに揺れることになりました。

17世紀には、反カトリック教会のプロテスタント教会に抵抗する反宗教改革という動きが生まれます。マティアス2世は、この反宗教主義を信奉していました。

マティアス2世の短い治世は、新旧両教会派の調停に明け暮れることになります。

しかしその結果は、芳しいものではありませんでした。

後継ぎがいなかったマティアス2世、その死後に戦争勃発!

ハプスブルク家の家訓は「戦争は他国にまかせておけ、さいわいなるオーストリアよ、汝は結婚せよ」というもので、婚姻政策によって勢力を伸ばしました。

近親間での結婚も多く、マティアス2世の妃も従姉妹に当たる女性です。

そのためか子供に恵まれず、マティアス2世の後継者は従兄弟のフェルディナンド2世でした。フェルディナンド2世の強硬政策により、カトリックとプロテスタントは泥沼の30年戦争へと突入してしまうのです。

兄ルドルフ2世に代わって広大な帝国の調和に苦心したマティアス2世ですが、その調停作は失敗、と歴史家たちは評しています。

マティアス2世がドライカイザー金貨を製造したのも、自らの正統性や権威の主張であったのかもしれません。

 

ドライカイザー10ダカット金貨の価格推移

輝けるハプスブルク家の象徴として価値の高いドライカイザー10ダカット金貨。

その価格はどのくらいになるのでしょうか。

ドライカイザー金貨の価格や理由を解説します。

すばり、過去の取引額は?

ドライカイザー10ダカット金貨の過去の取引額を見てみましょう。

直近の取引をリサーチしてみると、その金額、なんと6,200万円

半分の5ダカット金貨でも、5,000万円弱の金額がついています。

ドライカイザー金貨が高額になる理由はどこにあるのでしょうか。

ミステリー性も人々を惹きつけるドライカイザー金貨

ハプスブルク家を代表する3人の肖像画が刻まれたドライカイザー10ダカット金貨、実はプラハで作られたこと以外、製造理由等はまだまだ不明とされています。

そのため、ハプルブルク家が製造したコインのなかでもよりミステリアスともいわれています。コレクターたちはこの魅力にひかれてますます欲しくなるという心理状態となり、価格はどんどん上昇しているわけです。

希少性が以上に高い!

ドライカイザー金貨の製造枚数は謎ですが、とにかく市場に出てこない激レアコインであることが高額の理由です。

在位わずか7年のマティアス2世によって世に出たコイン、欧州の名門にふさわしい3人の肖像画も高い技術で製作されており、芸術的にも見るべきものがあります。

こうした諸処の事情により、ドライカイザー10ダカット金貨の金額は、天井知らずに上昇しそうな勢いです。

 

コインの価格推移

発行枚数や現存枚数が不明なため、オークションへの出品もほとんど見かけず、来歴もあまりありません。未鑑定の10ダカット金貨や、今回ご紹介した10ダカット金貨の半分の単位、5ダカットの金貨の価格のご紹介です。

未鑑定

未鑑定 表裏

2018年9月9日にEUR75,000で落札。

オーストリアのオークションの未鑑定の出品物。

AU58

 AU58

2022年11月5日に62,000,000円で落札。

国内オークションで見るのは稀。

5ダカット金貨 MS63 

5ダカット金貨 MS63

2021年3月25日に$408,000で落札。

パラマウントコレクションより。

 

ヨーロッパの歴史を作った3人の皇帝が刻まれた金貨の底知れない価値

17世紀初頭に神聖ローマ皇帝であったマティアス2世。

彼が製造を命じた金貨には、マクシミリアン1世、カール5世、フェルディナンド1世という輝かしい皇帝たちが描かれています。

宗教改革の嵐が吹き荒れたヨーロッパで統治することを運命づけられたマティアス2世が、自らの正統性のために作らせたという説もあるドライカイザー10ダカット金貨。

歴史的価値もはかりしれないこのコイン、ご興味がある方はぜひアンティークコインギャラリアにご相談を!

 

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