フランスの2つの象徴が描かれた価値ある金貨!マリアンヌ20フランに見る歴史とアイデンティティ

19世紀に描かれたドラクロア作『民衆を導く自由の女神』

▲19世紀に描かれたドラクロア作『民衆を導く自由の女神』。マリアンヌと呼ばれるフランスの象徴です。 

 

18世紀末から目まぐるしく変わる体制を経験したフランスは、一方で多くの植民地を有して世界の大国へとのし上がりました。

経済的にも文化的にも大国となり、世界から憧れの的であったフランスで発行されたマリアンヌ20フラン金貨。洗練された美しさが見る人を魅了します。

マリアンヌ20フランが発行された当時のフランスの時代背景と、同コインの魅力を解説します。

フランス マリアンヌ 20フラン金貨

フランス マリアンヌ20フラン金貨 表裏

基本データ

コイン名 フランス マリアンヌ ルースター 20フラン金貨
通称 フランス マリアンヌ 20フラン金貨
発行年 1907年〜1914年
フランス
額面 20フラン
種類 金貨
素材
発行枚数 約7,500万枚
品位 Au 900
直径 21.0 mm
重さ 6.45 g
統治者 クレマン・アルマン・ファリエール(〜1913年)、レイモン・ポアンカレ(1913年〜)
デザイナー ジュール・クレモン・シャプラン(Jules-Clément Chaplain)
カタログ番号 F# 535, KM# 857
表面のデザイン 右を向いた自由の女神マリアンヌの肖像とレジェンド
表面の刻印 REPUBLIQUE FRANÇAISE J.C.CHAPLAIN (フランス共和国、J・C・シャプラン)
裏面のデザイン フランスの国鳥である雄鶏と額面、年号とレジェンド
裏面の刻印 LIBERTE·EGALITE·FRATERNITE と額面、年号(自由・平等・博愛)
エッジのタイプ レタリングエッジ
エッジの刻印 ++*LIBERTÉ+*ÉGALITÉ+*FRATERNITÉ

 

フランス マリアンヌ20フラン金貨とは?

台の上に置かれたマリアンヌ金貨

フランスマリアンヌ20フラン金貨は、芸術の国フランスの真骨頂を感じることができます。

写実的でありながら美の規範ともいえるデザインが施されています。

フランスマリアンヌ20フラン金貨について詳しく見ていきましょう。

フランスのアートの凝縮!コレクターたちにも人気

フランスマリアンヌ20フランは、1899年から1914年にかけて発行されました。

コインの表裏に刻まれた女性像や雄鶏の完成度が素晴らしく、コレクターたちのあいだで人気のコインです。

アートの国のフランスの名に恥じない美しさと洗練。

その要素がコインに凝縮しているのです。

金の高騰が続いていますから、もちろん投資目的としても所有に意味のあるコインといえるでしょう。

描かれた女性マリアンヌとは?

マリアンヌコインと呼ばれる所以は、このコインに描かれている横顔の女性です。

大きな瞳と貴族的な鼻筋が魅力的なこの女性が、マリアンヌと呼ばれているのです。

マリアンヌとは、フランス共和国を擬人化したもの。

たとえばイギリスはジョン・ブルやブリタニア、アメリカはアンクル・サムがその国を代表するように、フランスはマリアンヌがフランスを表象しているわけです。

フランス革命の時代には「民衆を導く」旗手として描かれることも多かったマリアンヌ、フランス的に優美です。豊かな巻き毛が見えますが、頭にかぶっているのは自由の象徴のひとつであるフリジア帽です。

マリアンヌは、ニューヨークにある自由の女神のモデルになったという説もあります。

なぜ雄鶏が描かれているのか

裏面には、とても写実的で躍動的な雄鶏が彫られています。

「なぜ雄鶏?」と思われる方も多いことでしょう。

実は雄鶏は、フランスの古い歴史から生まれたシンボルのひとつなのです。

古代ローマの時代、現代のフランスのあたりは「ガリア」と呼ばれていました。ユリウス・カエサルの「ガリア戦記」は、当時のローマがガリアを支配下においた時代に書かれたものです。

そしてラテン語では、雄鶏のことを「Gallus」と言います。

「ガリア」と「ガッルス」、この響きが似ているために雄鶏がフランスのシンボルとなっていったのです。

さらに雄鶏は、歴史的にも勇敢さや警戒心、戦いの象徴とされており、フランスの民族的アイデンティティを表しています。そのため、フランスは雄鶏を国の象徴として用いることで、国民の団結や自国への誇りを高めることができるとされています。

つまり、フランスの文明化はローマ化によって始まったことを誇っているわけです。

そのため、マリアンヌ20フラン金貨は「マリアンヌ・ルースター金貨」と呼ばれることもあります。

ルースターとは、英語で雄鶏を指します。

刻まれた文字が示すもの

フランスマリアンヌ20フランの両面には、ラテン語が書かれています。

マリアンヌ像を囲むように修飾している文字は、

REPUBLIQUE FRANÇAISE·(フランス共和国)

です。

そして、マリアンヌ20フラン金貨をデザインしたジュール・クレモン・シャプラン(J.C.Chaolain)の名前が見えます。

雄鶏の面には、

LIBERTE·EGALITE·FRATERNITE(自由・平等・博愛)

と、革命の時代から知られる、フランスのモットーが格調高く書かれています。

 

フランス マリアンヌ20フラン金貨が作られた当時の時代背景

パリの凱旋門に残る革命をテーマにした彫刻

パリの凱旋門に残る、革命をテーマにした彫刻

フランスマリアンヌ20フラン金貨が発行されたのは、20世紀初頭のことでした。

当時のフランスは、どのような状況にあったのでしょうか。

マリアンヌ20フラン金貨が世に出た頃の時代背景を解説します。

 

試行錯誤の時代を経て

日本では漫画「ベルサイユのばら」で有名なフランス革命は、18世紀の終わりに起きています。

19世紀のフランスは共和政や王政、帝政と目まぐるしく政体を変え、迷走の時代でした。

マリアンヌ20フラン金貨が発行された20世紀初頭、フランスは1870年に樹立された第3共和政下にありました。

第3共和政は1870年から1940年まで長く続いたため、フランスの歴史の中でも内政に関しては比較的安定した時代を迎えていたのです。フランスの歴史において最も長い政治体制の一つとなりました。

議会制民主主義が定着し、ブルジョワジーと呼ばれる階層が社会の中で躍進しました。

フランス第三共和政の宣言の様子

▲フランス第三共和政の宣言

フランス第三共和政(French Third Republic)とは、1870年から1940年まで続いたフランスの政治体制です。第三共和政は、1870年の普仏戦争(フランスとプロイセン王国との戦争)でフランスが敗北し、ナポレオン3世が捕らえられたことで始まります。その後政治的な混乱が続き、共和主義者や君主制主義者、そして社会主義者などの異なる政治勢力が対立しました。しかし、1875年に共和制を確立する憲法が制定され、第三共和政が安定し始めました。

この時、フランスは国内外で多くの試練に直面しました。その中には植民地の拡大、労働運動の発展や文化的・科学的な革新と第一次世界大戦、そして世界恐慌が訪れます。

第三共和政は、1940年にナチス・ドイツによってフランスが占領されたことで終わりを告げます。

マリアンヌ20フラン金貨の発行が終了した1914年、ヨーロッパは第1次世界大戦の荒波をかぶることになります。フランスも当然、この流れの中で多くの戦死者を出すなどの影響を受けることになりました。

経済の発展と近代化

マリアンヌ20フラン金貨が発行された時代は、フランスが経済の発展を謳歌したことでも知られています。

世界各地に植民地が広がり、フランスはその交易から生まれる富によって自国内の工業化を推進しました。世界的な大量生産と消費の時代への移行に、フランスも遅れは取らなかったのです。

また、初等教育制度が普及したのも第3共和政の時代でした。

産業化や工業化の風潮の中で初等教育によってフランス人の知的水準も向上し、識字率は飛躍的に上昇したのです。

農業国のイメージが強かったフランスも、こうしたさまざまな制度化によって近代国家へと生まれ変わった時代でした。

花開くフランスの芸術と文化

第3共和政下のフランスは、個人の自由や思想を認めていたため文化面も華やかでした。

いくつかの芸術運動が興ったフランスのこの時代の文化を、イタリアにおけるルネサンスと比肩しうると評する学者もいます。

モネの「日本の橋」

▲モネの「日本の橋」

日本でも有名なモネルノワール、セザンヌなどの印象派の画壇が隆盛を極め、ゴッホやゴーギャン、マティスなどの画家も作品を残し、彫刻ではロダンが活躍します。

文学の世界では、マルセル・プルースト(『失われた時を求めて』)やフローベール(『ボヴァリー夫人』)、ヴィクトル・ユーゴー(『レ・ミゼラブル』)やアンドレ・ジッド(地下室の手記』)、サン=テグジュペリ(『星の王子さま』)やモーパッサン(『女の一生』)、そしてゾラ(『ナナ』)やジャン・コクトー(『オルフェ』)が作品傑作を世に送り続けました。

音楽界にはドビュッシーが君臨し、その他にはエリック・サティやラヴェル 、サン=サーンスやビゼーなど、現在でもオーケストラで演奏される音楽家を生みました。

そして、キュリー夫妻がノーベル賞を受賞するなど、文化や学術の面でもフランスは世界に豊かな影響を与えたのです。

こうした時代を背景に誕生したマリアンヌ20フラン金貨は、輝けるフランスの象徴ともいえます。

 

フランス マリアンヌ20フラン金貨の種類・類似のコイン

見ているだけで幸せな気分にしてくれる、フランスマリアンヌ20フラン金貨。

この美しいデザインのようなコインはあるのでしょうか。

いくつかの例を紹介します。

フランス マリアンヌ 10フラン金貨

マリアンヌ10フラン金貨 表裏

マリアンヌ20フラン金貨とまったく同じデザインで、10フラン金貨も存在します。

ただし、重さと大きさが多少異なります。

20フランの直径は21mm、重さは約6.4gですが、10フランは直径が19.0mm、重さは3.2gほどです。

20フランよりも少し小ぶりで半分の大きさの10フラン金貨も、その美しさは変わりません。

フランス20フラン黄銅貨

フランス20フラン黄銅貨

第2次世界大戦後間もない1951年に発行されたフランス20フラン黄銅貨。

マリアンヌ20フラン金貨と同様に、女性と雄鶏のコンビがコインの表裏を飾っています。

貨幣価値が安定しなかった時代のコインであるため、重さがなく価格もお手ごろ。

マリアンヌ20フラン金貨とは異なる趣があります。

 

フランス マリアンヌ20フラン金貨の価格推移

日本では昔からペンダントなどのジュエリーに加工されるほど人気のデザインです。

発行枚数も多いため、状態の良いものが地金価格+α程度という比較的手に入れやすい金額で購入することができます。ご予算に合わせたグレードの20フランを選んでコレクションの1枚に加えてみてはいかがでしょうか?

AU58

AU58

2023年1月23日に$384で落札。

MS65

 MS65

2023年1月5日に$432で落札。

MS66

MS66

2023年4月6日に$660で落札。

MS67

MS67

2023年2月9日に$900で落札。

PF67 Matte 1900年

大変珍しいマットプルーフです。

よく見るとサンドブラストの跡のようなザラつきがあるのが特徴です。

MS67 Matte 1900年

2020年1月13日に$18,000で落札。

 

フランスが輝いた時代のマリアンヌ20フラン金貨!

18世紀後半のフランス革命に始まり、試行錯誤の19世紀を経験したフランス。

世界大戦勃発前夜の平和の時代に発行されたフランスマリアンヌ20フラン金貨は、当時のフランスの繁栄が凝縮されたかのように、美しさと洗練を兼ね備えています。

豊かな時代であったヨーロッパの輝きを、ぜひマリアンヌ20フラン金貨から感じとってみてください。

フランスマリアンヌ20フラン金貨にご興味がある方は、ぜひアンティークコインギャラリアにご一報ください!

 

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