イギリス国王ジョージ4世のクラウン銀貨の魅力とは!希代の職人が彫り出した王の横顔と紋章
▲トラファルガー広場に残るジョージ4世の騎馬像
現在のイギリス王室は、「ウィンザー家」という家名がついています。
ウィンザー家の前の王朝が、「ハノーヴァー家」でした。ドイツの貴族からイギリス王家となったハノーヴァー家の君主たちはかなりユニークで、イギリスの歴史のなかでも特異な存在となっています。
今回のジョージ4世もそんな君主のひとりでした。
1826年、希代の彫刻家ウィリアム・ワイオンによって彫られたジョージ4世の横顔は、上り坂にあったイギリスの顔としての品格を感じさせます。
本日ご紹介するジョージ4世のクラウン銀貨は、アートとして鑑賞可能なほど精緻である上に、パターンコインであるという要素を持つコインになります。
ジョージ4世のクラウン銀貨の特徴について、発行当時の歴史なども踏まえて、詳しくご紹介いたします。
ジョージ4世 パターンクラウン銀貨
コイン名 | イギリス ジョージ4世 クラウン銀貨 |
---|---|
通称 | ジョージ4世 パターンクラウン銀貨 |
発行年 | 1825年〜1826年 |
国 | イギリス |
額面 | 1クラウン |
種類 | 銀貨 |
素材 | 銀 |
発行枚数 | 不明 |
品位 | Sv925 |
直径 | 28.28 g |
重さ | 38.6 mm |
統治者 | ジョージ4世 |
デザイナー | 表:ウィリアム・ワイオン|裏:ジェーン・バプティスト・マーレン |
KM | # 699 |
表面のデザイン | 左向きのジョージ4世の肖像とレジェンド |
表面の刻印 | · GEORGIUS IV DEI GRATIA ·1826(George the Fourth by the Grace of God:神の恩恵を受けるジョージ4世) |
裏面のデザイン | クラウンと盾、レジェンド |
裏面の刻印 | BRITANNIARUM REX FID: DEF:DIEU ET MON DROIT.(King of the Britains Defender of the Faith God and my right:ブリテン王国の王 信仰の擁護者 神と王の権利) |
エッジのタイプ | キジムシロ(バラ科)の花模様 |
エッジの刻印 | - |
ジョージ4世 クラウン銀貨(パターン)とは?
ジョージ4世のクラウン銀貨(パターン)とは、どんな特徴があるのでしょうか。
希少性が高く、市場での価値も揺るぎないといわれるこのコインについて、詳細をご紹介いたします。
パターンコイン、究極の希少性の理由
1826年、即位6年目を迎えていたジョージ4世の時代に発行されたクラウン銀貨は、プルーフでした。プルーフとは、テスト用に打刻された貨幣や、造幣局が諸外国の君主への贈呈用や、コインの収集家などのために新硬貨発行に際して個数を限定して発行したものを指します。
今回のジョージ4世クラウン銀貨は、プルーフコインのなかでも、一般的に「試鋳貨」と呼ばれているパターンコインであり、市場でとくに高値で取引される傾向があります。通常流通する貨幣とは別の意義をもって発行されている少数のコインであるため、当然希少性が高くなるためです。
一説によれば、ジョージ4世のクラウン銀貨の発行数はたったの150枚。
コレクターたちがチャンスを伺い、入手を狙っているアンティークコインの1枚といってよいでしょう。
クラウン銀貨に彫られた王と紋章
1826年のクラウン銀貨の表面には、ジョージ4世が左向きの横顔でデザインされています。
ヴィクトリア女王の時代に「ウナとライオン」という伝説的なコインをデザインしたウィリアム・ワイオンが、このコインの意匠を手掛けました。
ジョージ4世は無冠で短髪というカジュアルなスタイルながら、プルーフコイン特有の繊細な意匠により、高貴な肌の感触まで感じる質感が圧巻です。当時ジョージ4世は58歳、決して若い王ではなかったものの、コインに刻まれた肖像は王にふさわしい力強さも感じとれます。
裏面には、イギリス王の紋章が彫られています。ジョージ4世がハノーヴァー家の出身であることを示すかのように、中央にはハノーヴァー家の紋章も彫られた複雑なものです。
1825年には通常貨幣としてシリング銀貨が発行されています。通常貨幣の裏面は紋章ではなく、王冠とライオンがデザインされていました。
刻まれたラテン語の文字の意味
ジョージ4世のクラウン金貨には、ラテン語の文字が彫られています。
表面、ジョージ4世の肖像画を囲むように「GEORGIUS IV DEI GRATIA(神に祝福された王ジョージ4世)」の文字が見えます。
裏面を見ると、紋章の下のリボンには「 DIEU ET MON DROIT(神と私の権利)」と彫られています。これは、15世紀のイギリス王ヘンリー5世の時代に王家の紋章に採用されたモットー。王の神性を表す標語とされてきました。
紋章の上には「BRITANNIARUM REX FID: DEF(ブリテンの王にして信仰の守護者)」「DECUS ET TUTAMEN ANNO REGNI SEPTIMO(治政6年、栄養と守護とともに)」と記されています。
ジョージ4世 クラウン銀貨が作られた当時の時代背景
▲スコットランドの民族衣装に身を包む1822年のジョージ4世
クラウン銀貨に彫られたジョージ4世とは、どんな君主であったのでしょうか。
わかりやすく説明すると、ジョージ4世はヴィクトリア女王の叔父にあたります。
波乱万丈であったハノーヴァー王家と、当時のイギリスの社会について見ていきましょう。
「金のスプーンを口にしたプリンス」の誕生!
ジョージ4世は1762年、イギリス国王ジョージ3世の長男として誕生しました。
アン女王が嫡子を残さなかったためにスチュアート王朝が途絶えた後、親戚筋のハノーヴァー家がドイツからイギリスにやってきてからおよそ50年、ようやくハノーヴァー家がイギリス国民に親しまれ始めた時代に、ジョージ4世は誕生したことになります。
ヨーロッパでは高貴な生まれの人物を指して「銀のスプーンを加えて生まれてきた」と表現しますが、王家の長男として誕生したジョージ4世は「金のスプーンを口にしたプリンス」と祝福されたと伝えられています。
ウォルポールによる平和と産業革命の時代
ジョージ4世が統治した19世紀のイギリスは、どんな時代であったのでしょうか。
17世紀にピューリタン革命と名誉革命を経験したイギリスはその後、植民地を増やし、ヨーロッパの大国として急成長します。
イギリス国民の間の人気はいまひとつといわれていたハノーヴァー王朝統治初期には、名宰相と名高いウォルポールの手腕によって国内は安定し、やがて産業革命の時代を迎えます。
ジョージ4世の父、ジョージ3世の時代に、イギリスはアメリカの独立を認めることになりました。
国内外ともに、時代の動きが急速になっていったのが、18世紀以降のイギリス史の特徴です。
ジョージ4世は、イギリスをはじめ世界の国々が近代化に向かっていた過渡期に君臨した王であったといえるでしょう。
功罪さまざま、ジョージ4世の評判とは
ジョージ4世の王としての評判は、芳しいものばかりではありません。
華やかな女性関係や、父王や兄弟たちとの確執など、スキャンダルが少なくなかったというのが実情です。王妃との間には早死にした王女しかいなかったため、ジョージ4世の跡を継いだのは弟のウィリアム4世でした。
その後に女王となったのが、ジョージ4世の弟エドワードの娘ヴィクトリアで、彼女の治世に大英帝国は絶頂期を迎えるのです。
世評はよくなかったジョージ4世ですが、当時イギリスと緊張関係にあったスコットランドとの関係修復には大いに貢献した王でした。
またジョージ4世は芸術的センスに恵まれており、リージェント・パークやリージェントストリートを設計したジョン・ナッシュのパトロンであったことが知られています。
ジョージ4世 クラウン銀貨(パターン)の価格について
緻密なデザインが美しいジョージ4世のクラウン銀貨は、どのくらいの価格になるのでしょうか。過去の価格を参考に、その価値に迫ってみたいと思います。
市場に出回る数が少ないコイン
ジョージ4世のクラウン銀貨は、発行数が少ないためオークションへの出品回数も少なく、価格の推移を見るための資料が少ないのが難点です。
実際、世界各国のアンティークコインの販売サイトを見ても、このコインを常に在庫に持っているコイン商は、非常に少ないのが実情です。
過去の取引額は?
その少ない資料を参考に、ジョージ4世のクラウン銀貨の価格をご紹介いたします。
日本のあるサイトでは、250万円弱で取引されています。
また海外のサイトを参考にすると2万ユーロ弱(約280万円)という価格がついているものがありますが、ほとんどはsold out。
価格云々よりも先に、市場に出たら即買うことが入手の条件になりそうです。
今後の動向は?
近年は、趣味としてだけではなく投資の対象としてアンティークコインは大変な人気になっています。
財産としてアンティークコインを購入した方も、その魅力に取りつかれるというケースも多いのではないでしょうか。
ジョージ4世のクラウン銀貨はまず発行数が少ない点、さらに高名なワイオンによるデザインなどの条件を考慮すると、今後も入手が難しい高額のコインとなる可能性が大いに高いといえるでしょう。
オークション価格の推移
1825年と1826年の2つの年号での発行ですが、1826年の方がオークションの出品が多く、比較的手に入れやすいようです。今回は1826年の落札結果を見てみましょう。
PR62
2021年1月21日に$15,000で落札。
PR63
2021年8月19日に$22,800で落札。
PR65
2021年5月6日に$40,800で落札。
PF66
2016年8月11日に$49,350で落札。
大英帝国の黎明を感じさせるジョージ4世のクラウン銀貨をぜひお手元に
産業革命を経て、イギリスが世界に冠たる大英帝国へと成長を続けていた19世紀、その歴史の証人として、ジョージ4世のクラウン銀貨は大いなる価値を持っています。
ワイオンの手による美しいデザインも魅力的なジョージ4世のクラウン銀貨、そのご購入に興味がある方は、ぜひ当社にご相談ください。
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