かわいいは正義!動物界の外交親善大使

日本人が動物園で一番見たい動物はなにか。

それはパンダであるようだ。
調査結果もあるが、それ以上に「客寄せパンダ」という単語が
日本語に存在していて、今も使われている時点でそれは明白だと言える。

パンダはあの白黒模様が絶妙にかわいい。
そして、笹を食べているか寝ていることが
ほとんどな平和な草食動物である。

こんなところが人々を惹きつける要因だろう。

そんなパンダは中国の一部にのみ生息する稀少動物でしかない。
それがどのようにして、知名度を獲得していったのか、
動物園の主役になっていったのか、その歴史を見てみよう。

パンダ、世界に登場する

確実にパンダを指す単語が文書に現れるのは
中国清王朝時代の康熙年間(1661~1722)が最初だ。

そして、
西洋人によって学術的に「発見」されたのは1869年3月の出来事である。

当初は珍奇な動物として西洋人の狩猟の対象となっていたのだが、
1936年にルース=ハークネスという人物が始めてアメリカに
生きたパンダの子どもを連れ帰ってから状況は一変する。

アメリカ人達はそのかわいさに打ちのめされたのだ。

アメリカに持ち込まれたパンダ

アメリカに持ち込まれたパンダ

これ以降パンダはかわいい、
という事実が欧米世界に知られることになった。
狩猟対象としての珍獣から愛でる対象に変化したのだ。

西洋各地の動物園が展示に加えたいと望み、
パンダは次々に海外へ渡っていった。

各国でパンダは大歓迎され、パンダブームを巻き起こした。
イギリスでは一時パンダのぬいぐるみ人気がテディベアを凌いだとされる。

しかし、遅まきながらパンダの重要性に気づいた中華民国政府により、
1939年以降持ち出しが禁止されてしまう。
保護の観点からは的確な判断だったといえよう。

パンダ、外交親善大使として活動を始める

1941年、中華民国はアメリカへパンダの寄贈を申し出た。
ときは日中戦争の真っ只中。
パンダはアメリカの民意を中国に好意的に誘導するために派遣されたのだ。

終戦後もパンダ達の外交活動は続く。
冷戦時代は中国の同盟国であるソ連と北朝鮮にパンダは贈られた。
しかし、真に平和をもたらす親善大使として活動を始めたのは
1972年2月であろう。

この年、史上初のアメリカ大統領訪中を記念して
パンダのつがいがワシントンDC動物園に贈呈されたのだ。
2頭は両国の歴史的な和解の象徴となった。

これ以降、西側陣営にも友好の象徴としてパンダが派遣される。

日本も派遣先のひとつだ。
1972年9月、日中国交正常化を記念して日本に初めてパンダがやってきた。
有名な「ランラン」と「カンカン」である。

パンダの上野動物園への来訪は
日本に空前のパンダブームをもたらすことになった。
パンダを観るには「二時間並んで見物50秒」と言われ、
上野動物園の来場者数は倍増した。

ブームに乗って「パンダコパンダ」というアニメまでつくられた。
ちなみに監督は高畑勲、脚本・原案は宮崎駿、
後のスタジオジブリ創設者達だ。
そして、このアニメは「となりのトトロ」の原型となったとも言われている。

この社会現象が日本人の心に強く刻み込まれ、
「日中平和の象徴=パンダ」という図式が成立し、
中国といえばパンダということになったのだろう。
パンダは代替わりを経て今も上野動物園で暮らしている。

上野動物園のパンダ

上野動物園のパンダ

パンダ、動物保護の象徴となる

パンダの来日から遡ること11年、
既に設立されていた自然保護のための国際機関、
国際自然保護連合(IUCN)の活動を支えるための機関、
「世界野生生物基金」(WWF)がつくられた。

WWFのシンボル

WWFのシンボル

のちに「世界自然保護基金」(WWF)と改称されることになる
この機関のシンボルとして、
創設者の一人ピーター=スコットは多くの稀少動物の中からパンダを選択する。

国際機関であるからには
言語の壁を超えたわかりやすいシンボルであることが不可欠であり、
パンダはそれにふさわしいと判断されたわけだ。
いかにパンダというものの存在が
大きなものになっていたかがうかがえよう。

このマークは数度のデザイン変更を行ないつつ、
現在も使用されている。

パンダは中国の象徴だけではなく、
稀少動物保護の国際的な象徴にまでなったのである。

コインについて

中国 パンダ金貨 100元 1987年

中国 パンダ金貨 100元 1987年

今回紹介するコインはパンダ金貨である。
1982年9月に日中国交正常化10周年を記念して
日本で先行発売がなされて以来、
今年に至るまで発行され続けている。

正確には中国印钞造币总公司発行だが
日本のコイン界隈では便宜上、中国造幣公司発行とされているようだ。

片面の刻印は北京にある天壇の祈年殿である。
天壇とは明王朝第3代皇帝永楽帝が
1420年に建立したとされる広大な祭壇で、
以降清が滅亡するまで皇帝が天に祈る、国家祭祀の重要拠点であった。

天壇はユネスコの世界遺産に登録されており、
特にそのうちの現存する中国最大の祭壇とされている祈年殿は
天安門や紫禁城とならんで北京の、ひいては中国の象徴的な存在である。

もう片面は今回の主人公パンダである。
笹の生えた水辺で水を飲むパンダの姿が可愛らしい。

片面に建築物としての中国のシンボル、
そしてもう片方に生き物としての中国のシンボルを刻印したこの金貨は、
中国の象徴の結晶といえるのかもしれない。

 

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