【南米・インカ帝国】貨幣を持たない黄金帝国とは!?

貨幣を持たないインカ帝国とは?

現代社会で最も普遍的な価値があるとされ、
価値の基準にもなっているのがお金である。
こうした貨幣は大昔の時代には存在しなかった。
原始時代の交易では物々交換が行われていたと考えられる。
貨幣が必要となるのは社会が一定の段階に発展し、
貨幣経済となってからのことである。

したがって、古代文明が栄える時代ぐらいになると、
貨幣が発生しているのが一般的である。
では、1492年にコロンブスがやってくる以前、アジアやヨーロッパなどと切り離され、
独自の発展を遂げてきた古代アメリカ地域はどうだったのだろうか?


当時、現在のメキシコに首都を置いていたアステカ帝国と、
南米ペルーのクスコに都をおいていたインカ帝国の二つが高度な発展を遂げていた。

インカのマチュピチュ遺跡

インカのマチュピチュ遺跡

インカ帝国と言えば、最も有名な世界遺産の一つであるマチュピチュ遺跡で知られる。
現在でも南米旅行のハイライトはマチュピチュ観光である。
インカ帝国は現在のペルー、ボリビア、エクアドル、
それにチリの北部やアルゼンチン、コロンビアの一部など広大な領域を支配していた。

インカの文化で興味深いのは、あれだけ広大な領域を支配したにも関わらず、
文字を持っていなかったことである。
それに鉄製品も無かった。
また、馬もいなければ、車輪も無かった。
そして、貨幣も無かったのである。
ある意味、非常に独自性の強い大帝国だったと言えるだろう。

インカ帝国は黄金帝国?

このように鉄も貨幣も無かったが、実は金製品は存在した。
独自の発展を遂げたこの地域でも、
黄金の輝きは多くの先住民たちを魅了していたのである。
この金製品はインカ帝国が生まれるよりはるか以前、
プレインカの時代から存在していた。

黄金は皇帝を始めとした貴族たちの権威の象徴として使われていた。
実質的な帝国としてのインカ最後の皇帝であったアタワルパは、
スペインの征服者であるフランシスコ・ピサロに捕らえられてしまう。
その際、自分を釈放する条件としてアタワルパは、
自分が閉じ込められている部屋一杯の金、それに二杯分の銀を渡した。
現在の資産価値からすれば、信じられないぐらい膨大な額である。
ピサロ等はこの膨大な財産を略取したものの、
アタワルパを解放することなく、適当な理由をつけて処刑したのである。
この部屋一杯の黄金という事実からでもインカ帝国が黄金帝国と呼ばれる理由がわかるだろう。

皇帝アタワルパ

皇帝アタワルパ

さて、フランシスコ・ピサロは何故、インカ帝国にやってきたのだろうか?
コロンブス以後、ヨーロッパから多くの者が新天地であるアメリカ大陸に渡ってきた。
彼らの多くは、一獲千金を夢見ている連中であった。
その中にコンキスタドール(征服者)と呼ばれている連中がいた。
彼らの目的は新大陸にある金銀財宝、特に金であったと言われる。
彼らの間に、南にインカと呼ばれる黄金の国があるという噂は流れていたようである。
その一人であるフランシスコ・ピサロは少数の軍勢でインカ帝国に侵入。
まんまと皇帝のアタワルパを捕らえることに成功したわけである。
つまり、ピサロがインカに侵入した理由は金などの財宝を求めた、侵略だったのである。

フランシスコ・ピサロ

フランシスコ・ピサロ

金を求める人たちが織りなす歴史

以上、インカ帝国と黄金に関する話を書いてきた。
貨幣を持たないインカ帝国であったが、金は豊富に存在した。
これが仇となり、ヨーロッパからの侵略者を招くことになったのは、
歴史の皮肉と言うものである。
19世紀中ごろ、黄金を求める人がカリフォルニア殺到した。
これをゴールドラッシュと呼ぶが、こうした人たちと新大陸アメリカに向かった人々は、
ある意味、同様の感性を持っていたと言えるだろう。
金を求めた旅で、成功して資産家になるものもいたであろうし、
失敗したものもいるだろう、中には命を落としたものも少なくないと思われる。
そんな中でインカ帝国を征服したピサロは成功者と言えるかもしれない。
だが、そのピサロも皇帝アタワルパを処刑してから8年後にリマで暗殺され、
その生涯を閉じたのである。
金が織りなす物語はこのように幕を閉じた。
しかし、そうしたエピソードを土台にして歴史は延々と続いていくのである。

普遍的資産である金

金の延べ棒

はるか昔から現代まで続く黄金への愛着。
金の価値の源泉はその視覚的な美しさと同時に希少価値にある。
今後も金の価値は依然として続くだろうし、人類を魅了し続けるはずである。
経済に不安感が増すと金の値段が高騰する。
やはり、多くの人にとって資産価値として最も信頼感があるのが金なのだろう。
ある投資の専門家は資産のうち10%程度は金で持っておくことを勧めている。
つまり、ポートフォリオに金を含めるべきだという主張である。
これは金には資産運用と言う視点もあるが、それ以上に資産保全という意味あいが強いからである。
実際、多くの資産家は金の地金はもちろん、金貨、宝飾品など、
様々な形で金を保有しているのである。

【南米・インカ帝国】貨幣を持たない黄金帝国とは!?アンティークコインギャラリア | 旧ナミノリハウスで公開された投稿です。