お主も悪よのぅ…悪代官がもらう賄賂は実は…
本年最後の「ナミノリハウス」のブログ記事は「賄賂」!
あえて金欲丸出しの話題で本年を締めくくりましょう!!
「お代官様、山吹色のお菓子でございます」
「ふふふ、越後屋、お主もワルじゃのう」
料亭一室、商人が差し出す菓子折りの中には
黄金色のお菓子がギッシリ!
(賄賂ですね。ああ、羨ましい!? 役得、役得?)
賄賂か謝礼か?
日本人には長い歴史と、風土の中で
独自に培った文化がある。
賄賂だ、
贈収賄罪だと、現代人は非難糾弾するが、
江戸が始まる前から「礼銭」という祝い金の風習があった。
「一献料」とか「酒肴料」と称して
お世話になった、
これからお世話になるであろう方に、
邪な心であろうが、
心を込めて差し上げるのである。
江戸時代
礼銭と賄賂の区別は明確ではなく、
役得という言葉も正当であった。
お上、お相手の手を煩わせたのだから、
当然払うべき謝礼として
礼銭の遣り取りは日常茶飯事、
生活習慣として行われていたのである。
そんな賄賂の流れ、習慣を培った日本文化の中で、
「黄金色の菓子」「山吹色のお菓子」は、
小判を用いた
賄賂を表わす隠語として定着している。
他にも賄賂を表わす隠語として「袖の下」、
「鼻薬」というのもある。
鼻薬は、鼻を鳴らして物をねだる子供に
なだめて与える菓子、から派生した言葉である。
賄賂を、鼻薬や袖の下と称しては、
まるで鼻水を袖で拭うようで
密室での暗く陰湿なやり取りを
益々不愉快不快なイメージにしてしまう。
菓子折りの蓋を開けた瞬間、
突然、光を発して輝き、現れ来る小判
その煌びやかで派手な演出、登場は、
賄賂の代名詞、王者としてのイメージを保持し
今も君臨しているのである。
三貨に隠された身分差別
江戸時代の貨幣には金、銀、銭があるが、
これには士農工商の身分制度の差別と同じ、
権力者・治世者側の使い分け、
差別が隠されている。
すなわち、
金貨を上級武士、
銀貨を下級武士と町民、
そして銭貨を庶民・農民のものとし、
身分に合わせて使い分けるように仕向けたのだ。
例えば、幕府が与える手当や御褒美は、
お目見え以上の大名旗本には金貨、
御家人以下に銀貨、
庶民には銭で下賜している。
城普請などでの支払いは、
旗本に金、
御家人に銀、
人足には銭で支払っているのだ。
つまり、小判というのは、
身分が高い者が扱い持つものと定められていた。
賄賂として、
これほど適した品はないのである。
賄賂の小判は、包装か帯封か?
黄金色の菓子や山吹色の菓子は、
開封してその場で、
その輝きを楽しまなければ意味がない。
差し出す者の媚びへつらい、
困惑や諦め、
不安などの表情をチラ見しながら
征服欲も同時に味わねば、
賄賂を受け取る喜びも薄くなる。
そのため、一目瞭然
菓子折りの中の小判は、帯封がよろしい。
小判25両を和紙に包んで
時代劇では「切餅」と呼び慣わしているが、
小判を幾ら上手く包んでも
切餅のように四角い形にはならない。
本来の「切餅」とは、
一分銀100枚(25両)を包装・封印したものである。
一分銀は長方形であり、
縦長に積み重ねて和紙で包めば、
白くて四角い、切餅に似た包みができる。
小判にも百両包、五十両包、二十五両包があり、
五十両包みが一般的である。
そして、これらを総じて「包み金」という。
この包み金を三方に3つほど乗せて
賄賂として差し出す時代劇の場面もあるが、
神前に供える如き扱いでは、
賄賂としての魅力は薄く、認められない。
包み金は、有力な両替商などが封をしたので
中身の小判や数を確かめるまでもなく、
包んだままで、大口決済の手段として通用した。
1枚1枚、真贋の判定をしたり、
枚数や量目の確認は面倒である。
手間もかかれば、
別途手数料も必要になるのは厭である。
開封する時は両替商で行う。
定額通りの金銀貨が入っていない場合は、
損失として、
開封した者が負担することになっていた。
歌舞伎の演目に『恋飛脚大和往来』がある。
その最大の見せ場が「封印切」である。
飛脚問屋の若旦那忠兵衛が、
預かっていた公金の封を切ってしまう場面である。
どエライことをやらかした後悔が
三味線の叩きつけるような音と共に忠兵衛を責めるのだ。
賄賂の実例
賄賂を贈るのは商人だけに限ったことではない。
役職や官位を得るために武士も賄賂をばら撒くのだ。
賄賂政治家と悪名高い
田沼意次が残した賄賂の記録なるものが存在する。
旗本が幕府内での役職を得るために、
親戚に150両
直属上司に70両
その他協力者に25両。
計245両の賄賂を要したとあるのだ。
それで目出度く役職につけば、
賄賂が貰える立場になる。
損した分を取り戻すために
こうして賄賂文化が循環して定着するのである。
もっとも、武士にとって大切なのは
現金より体面や意地である。
贈る方は必死だが、
受け取る方は端金でバレて、
妬み僻みで足元をすくわれ、
世襲の地位や領地、子々孫々まで残す財産を
失っては馬鹿みたいである。
相手を見て絞れるだけ搾り取る。
それが賄賂を受け取る側のスリルであり
危ない橋を渡る醍醐味なのでもある。
コインについて
今回ご紹介するコインは、小判の中で人気の高い
享保小判である。
暴れん坊将軍こと徳川吉宗の時代、
慶長小判の品位を取り戻そうと鋳造された。
鋳造量は、4,140,000両と推定されている。
品質、含有率は慶長小判とほぼ同じであるのに
その半分ほどしか作られてはいない。
知る人ぞ知る
マニア垂涎の逸品である。
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