レアなアンティークコインの価格が急上昇、新たな投資先に
経済発展著しいインドの経済誌「The Economic Times」から、
インドでアンティークコイン投資熱が加熱し、コインの価値が急上昇しているというニュースです。
ムンバイ:Kishore Jhunjhunwallaさん(73歳)は
イギリス領インド帝国時代の“ツイン・カレンシー(1枚で2種類の通貨単位を有する)・コイン”
を手に入れるまで、40年近くも待たなければなりませんでした。
これは、第二次世界大戦時、連合軍に給与を支払うために特別に鋳造されたコインです。
このジョージ6世のコインは、2種類の通貨単位を有する通貨として発行されました――
1枚で1アメリカドルと2.5インドルピー両方に相当する通貨です――
インド人兵士だけでなく、外国人兵士にも支払いができるように、という意図で造られたものです。
「しかし、兵士たちはこのコインを受け取らなかった、と考えられています。
イギリスはこれらのコインを回収せざるを得なくなり、
数年のうちにコレクターの間で非常に希少なアイテムとなったのです」
そう話すJhunjhunwallaさんは、60年以上コインコレクターをしています。
Jhunjhunwallaさんがこの貴重なコインをやっとの思いで手に入れたのは1995年のことで、
当時、5万ルピー(約8万2千円)で喜んで売ってくれる売り手を見つけたのです。
その4年後、Jhunjhunwallaさんは別のコレクターに
40万ルピー(約65万8千円)で売ってくれと説得され、手離しました。
「今では600万ルピー(約987万円)支払ったって、このコインは手に入りませんよ」
Jhunjhunwallaさんは、すこし悔しそうにそう言いました。
公式にはレアコインの金額を決定するシステムはないものの、
“ツイン・カレンシー・コイン”の価格が15倍にまで高騰したというJhunjhunwallaさんの話は、
どうやら大げさではないようです。
ここ数年で、レアなアンティーク通貨の金額は、
コイン・紙幣に関わらず、その多くが上昇してきています。
例を挙げると、1939年製1ルピー銀貨――
これは、インド史上最後の“純銀製”コインとして貨幣学者に知られているコインですが――
2007年には中流層のコレクター間で、
1点7千ルピー(約1万1千円)程度でトレードされていました。
ところが今では、このコインが40万ルピー(65万8千円)を超える値段で売れているのです。
イギリス領インド帝国時代のビクトリア・モハール金貨は、
2007年には3万5千ルピー(約5万7千円)の値がついていましたが、
今ではオークションで20万ルピー(約32万9千円)を超える値で入札されています。
ウィリアム4世の2モハール硬貨は、
8年前は20万ルピー(約32万9千円)だったのが、120万ルピー(約197万4千円)に急上昇。
そして、それほど時代を遡らなくても価格が上昇している例もあります。
かつてはどこにでも存在していた1ルピー(約1.6円)紙幣のなかでも、
最後に印刷された1994年製のものが、1枚6~7ルピー(約9.8円~11.5円)で売れているのです。
カタログの翻訳:
高額コレクションアイテム推定金額
- ヴィクトリア女王(インド統治時)10ルピーモハール金貨:6,50,000ルピー(約1,072,500円)
- ササン朝ナルセ帝ディナール金貨:3,25,000ルピー(約536,250円)
- ヴィクトリア女王(インド統治時)モハール金貨:3,00,000ルピー(約495,000円)
- チャールキヤ朝パゴダ金貨:2,75,000ルピー(約453,750円)
- クシャナ朝フビシュカ帝ディナール金貨:2,65,000ルピー(約437,250円)
- マルワ地方の王、四角型タンカ硬貨:2,65,000ルピー(約437,250円)
- チャンドラグプタ王2ディナール金貨:2,50,000ルピー(約412,500円)
- プラグマルジ王の硬貨、ヴィクトリア女王の名が刻印されたもの(3点セット):2,50,000ルピー(約412,500円)
- クトプ・アイディン・ムバラク王四角型タンカ金貨:2,00,000ルピー(約330,000円)
- マナーク・パル王ナザラナモハール硬貨:2,00,000ルピー(約330,000円)
- インド・グリーク朝デメトリウス帝テトラドラクマ銀貨:1,70,000ルピー(約280,500円)
- ヴィクトリア女王モハール金貨:1,20,000ルピー(約198,000円)
- ティプー・スルターン、パゴダ金貨:90,000ルピー(約148,500円)
「希少性ありきのビジネスですからね」
とOswalオークションのオーナー、Girish Veera氏。
「コレクターの数やコインオークション回数も2007年から増加しています。
レアコインの需要が高くなると、値段も上がります」
過去に例をみないコインの価格上昇の理由の一つとして、
オークション数が増加していることも挙げられます。
最大手オークション会社によると、
2007年に開催された初の大規模コインオークションでは、
レアコインの販売点数は2,500点超。
それが2015年には、25回オークションを開催し、
30,000点超のレアコインを売り上げたのです。
「今まで以上にコレクターが増えています」
インド最大規模のオークション会社、“Todywalla オークション”のFarokh Todywalla氏は言います。
「以前は、政府による規制…金規制、(取引)管理などがありましたが、
現在の法律では規制緩和が進んでいます」
Todywalla氏によれば、
オークションにはコレクターや趣味の収集家が多く参加しているとのこと。
「2,000人超の顧客が我々のオンラインオークションに登録しています」とTodywalla氏。
「売上について言えば、
3千ルピーから2万ルピーの価格帯(約4千9百円~3万2千円)のコインが良く売れています。
また、モハール金貨やその他特別なコインも揃えており、高額バイヤーも顧客となっています」
数か月前、あるコレクターが、
Todywallaオークションでムガール帝国時代の星座をあしらった希少なモハール硬貨を
1400万ルピー(約2300万円)で購入しました。
このような買い手は通常、サービス税、付加価値税、
そしてオークション会社に10~12%の“ハンマー・コミッション(成約手数料)”を支払うことになります。
しかし、通貨収集にのめりこむのは大金持ちに限ったことではありません。
なかには単なる趣味やコレクターではなく、
数年先に資産価値が上がるコインを求めてコレクションに興じる人もいます。
「あらゆる経済階層に買い手がいます。また、投資目的でレアコインを買う人も存在します」
そう説明するのは、インド・バンガロール市に本社を置くオークション会社Marudhar ArtsのCEO、
Rajenden Maru氏です。
「コイン収集は、元が取れる唯一の趣味です…
良好なクオリティのコインを手元に置いておけば、10~15年先に良い値段で売ることができます」
オンライン貨幣世界美術館“Mintage World”の貨幣学者Bimal Trivedi氏によれば、
コインにどの程度希少価値があるかは様々な要素が関係しているとのことです。
在位期間の長い皇帝や女性の名前
(ラジーヤ・スルターン、ヌーアジハーン、ナーガニカ)で発行されたコインは
コレクターから希少だとみなされています。
また、マルワ地方の王が発行した八角形のコインなど珍しい形のコインや、
歴史的に重要な年に発行されたコインは多くの人の購買ニーズがあります。
最高グレードのアンティークコイン(刻印が深くしっかりしていて、刻印位置が真ん中のもの)
も高値で取引されます。
コインの供給数も増え始めていると、ある専門家は言います。
所有しているコインのことを長い間忘れていた人々が、
所有物を確認するようになってきたからです。
「インドにはコイン流通の長い歴史があります…
屋根裏部屋や古いスーツケースにしまわれたままのコインたちが、発見され、
鑑定してもらえるのを待っているのです」
そう話すのは、Sushil Agarwal氏。
オンライン貨幣ミュージアム“Mintage World”のチーフ・マーケティング・ディレクターです。
「人々が自身の所有するコインの価値に気付きさえすれば、
レアコインの供給数は増えていくでしょう」
今後数年のうちにもっと価値の高い掘り出し物に出会えるのではと
コレクターたちが希望をもっている一方で、
偽物のコインや紙幣が広く出回っていることが、懸念材料でもあります。
新人コレクターたちへのアドバイスですが、
インターネット上や未認定業者を通じてのレアコイン購買時には注意してください。
こんな格言があります――
“コレクターは決して、レアコインを探し当てることはできない。
レアコインが、良いコレクターを探し当てて来るのだから。”
レアなアンティークコインの価格が急上昇、新たな投資先にはアンティークコインギャラリア | 旧ナミノリハウスで公開された投稿です。