小判の模様ってこんなだったの!?

小判に刻まれた印のアレコレ!
「刻印」は、江戸弁で「こっくい」と、粋に読むのである。

小判の顔は変わらない?

江戸時代の小判は10種類ある。
その産まれた年代により金の含有量、
大きさ、重さ、発行枚数など、全て異なる。
だが、デザインは、ほとんど同じである。

まず、小判の表の面には
鏨による茣蓙目が刻まれている。

鏨(たがね)とは、
鋼鉄で出来た金属を加工する道具のことである。

鏨(たがね)

鏨(たがね)

茣蓙(ござ)とは、
藺草 (いぐさ) の茎で編んだ敷物のことで、
茣蓙目(ござめ)とは、
その筋目が表わす模様のことだ。

茣蓙目(ござめ)1

茣蓙目(ござめ)1

 

茣蓙目(ござめ)2

茣蓙目(ござめ)2

この模様は小判の表だけで、裏にはない。
この茣蓙目を背景に、
まず、上下に五三桐を囲む扇枠がある。

五三桐(ごさんのきり)

五三桐(ごさんのきり)

五三桐(ごさんのきり)は、
日本を代表する紋で、
菊紋と同じ権威ある皇室の紋章でもあるのだが、
豊臣秀吉がバラ撒いて、かなり馴染み深く、
親しみやすくなった代表的家紋の1つである。

次に、中央上部に「壹两」の刻みがある。
これは「壱両(一両)」という額面を表わしている。

その下、小判の下部にあるのは
光次という人の名前と、その人の花押である。

光次とは、小判を鋳造した
後藤庄三郎光次という金座の当主、長官のことである。

金座の長官は、代々後藤家の世襲であり、
徳川家康が初代の後藤庄三郎光次を任じて、
後藤以外に、この職になった者はいない特権である。

ちなみにこの初代、
京都本家の後藤家の手代から婿養子になって
家康の信を得て、のし上った。

負い目もあってか
本家に対して証文を残している。
1、大判には手を出さない。
2、桐紋(扇面)は子孫まで守り使う。
3、後藤の苗字は変えることなく子孫まで使う。
4、子孫代々、黄金3枚を毎年、本家に贈る。
5、以上背けば、収入残らず本家に差し出し、役儀も返上する。

この約定を守り続け、誓いの証が
その後もずっと小判の中に刻まれ続けている。

時代が変わり、小判が替り、人物が代わっても
刻まれる人名は変わらない。
全て同じ後藤「光次」なのである。

ところで、このお役目には役得がある。
年二千数百両の役料と四百俵の扶持米とは別に、
「分一両」という印税のような権利収益もあるのだ。

すなわち、貨幣鋳造のたびに、
出来高千両につき金十両、
つまり百分の一を
鋳造の手数料として貰える決まりがあったのだ。

手代に10両、
金座人に10両2分、
吹所棟梁に4両3分、
出来立ての小判が分け与えられる
といった具合であろうか。

各配下の職工らの人件費その他経費諸々かかろうが、
お金がお金をそのまま生む、
とんでもなく羨ましく美味しそうな利権である。

では、気を取り直して、裏面を見てみよう。

裏の面は刻印が少ないほど値打ちがある?

中央にあるのは分限者・後藤光次の花押である。

裏面

裏面

この裏面の右上にも極印がある。
この印を見れば、小判の鋳造時期が分かる。

各年代ごとの小判

各年代ごとの小判

※ネット上で見つけたこの画像には間違いがある。
お気づきだろうか?

「元」の極印があれば元禄小判。
「乾」の極印があれば宝永小判(乾字小判)。

「文」の真書体の極印があれば元文小判(真文小判)。
「文」の草書体の極印があれば文政小判(草文小判)。

「保」の極印が打たれてあれば天保小判。
「正」の極印が打たれてあれば安政小判(正字小判)である。

慶長小判には、裏面にこのような手がかりは残されていない。
表面の茣蓙目や桐極印などで判別する。

享保小判、正徳小判にも、
このような判別に役立つ手がかりの極印はない。
なので、表の「光次」文字の書体や花押で判別するのだ。

万延小判は、別名「雛小判」と呼ばれ、
他の小判と比べてかなり小さい。
一目瞭然、すぐに区別は出来るのである。

右下の上下に並ぶ極印は験極印である。
金座人と吹屋棟梁の首席が、それぞれ打刻した。

これにて初めて
お墨付きの貨幣として認められるのである。

もっとも「お墨付き」の語源となっている
花押は、小判の中では刻印になっているのではあるが。

小判は傷だらけの人生

こうして金座で生まれた小判は
世の中を渡り歩いて行く。

疵付き、擦り切れ、刻印も掠れていく
自らも傷付きながら、傷だらけの人生のお供である。

中には有力大名家や豪商らの下で
収蔵印を押され、秘蔵される小判もあれば、
巷で揉まれ、修復手当を受けた両替商の元で
新たな刻印も増やす小判もある。

人の一生と少しだけ触れ合いながら
長い長い旅を続け、人から人へと渡るのである。

様々な刻印の刻まれた小判

様々な刻印の刻まれた小判

コインについて

元文小判

元文小判

今回ご紹介するコインは
元文小判(文字小判)である。

80年以上の長期間に渡り流通し
発行枚数は約12,204,998両(枚)。
入手も楽な初心者向け小判である。

それでありながら、
コレクター向けの珍品、希少品も数多く
人気が高い小判である。

例えば
金座人と吹屋棟梁の験極印の組み合わせが
「大」「吉」になった元文小判が存在する。
「偶然大吉」と呼ばれ珍重されている。

「筋」「神」
「筋」「当」
の組み合わせは佐渡小判の証であり、
オークションに登場すれば、
とんでもない高値を呼ぶ希少価値高い珍品なのである。

 

文章:蔵元三四郎

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